2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

1997年第2鹿児島県北西部地震


またまた強い地震|第2鹿児島県北西部地震|日科講演会|宮之城で902ガル|地下は安全?|集団避難|横ずれ8センチ|これから要注意心の病|地震ゴボウ|震災地質図|強い余震|第2北西部地震被害統計|報告書・論文|地震豆知識―ガル

◆またまた強い地震

 5月13日14時38分M6.1の強い地震がありました。震源は出水市定之段付近で深さ20kmとのことです。震度は川内で6弱、宮之城5強・阿久根5弱、鹿児島・八代・都城は4でした。鹿大の建物も激しく揺れましたが、被害はありませんでしたのでご安心ください。机の上の書類も崩れませんでした。(5/13昼)
 上述の震源は昨日午後のラジオ発表でしたが、実際の震源は前回の余震域より若干南で、余震分布も東西だけでなく南北にも並ぶようです(九大島原観測所)。3月26日の地震とは別物との見方も出ています(5/14付け朝日新聞)。
 この地震により、重軽傷者34人、住家半壊5棟、がけ崩れ57個所の被害が出ました(県警23時30分まとめ)。(5/14朝)

◆第2鹿児島県北西部地震

 気象庁は「今回の地震は前回3月の地震とは違う別の断層活動による地震と推定される」との見解を発表しました。岩石に圧縮力を加えると、岩石はその方向と30~45度の方向に割れます。それ故、北東―南西方向から力が加わった場合、力学的には等価ですから東西方向でも南北方向でもどちらが割れてもいいのです。こうした一対の断層を共役断層と言います。最初の地震で応力が開放され切れず、今回、共役な方向も動いたのでしょうか。
 地震調査委員会の見解は鹿大震災調査団のホームページをご覧ください。
 また、この5月13日の地震に関してアンケートによる詳しい震度がまとまりました。鹿大震災調査団のページをご覧ください。

月日時刻 M
K-NETの地震波形から計算された震度
5/1314:386.15強(川内,出水,串木野),5弱(阿久根,日吉,水俣,国分,大口)
5/1408:324.74(宮之城),3(国分,阿久根,横川,大口,串木野,蒲生,出水,都城)
5/1417:153.83(宮之城),2(川内,阿久根,大口,蒲生)
5/1817:493.52(宮之城,川内)
5/2506:114.44(宮之城,川内),3(出水,阿久根)
6/2714:124.13(宮之城),2(大口,川内,蒲生,喜入,上甑,串木野,横川,出水)
7/2618:364.34(宮之城),3(水俣,大口)
(東京大学地震研究所大学院生の自主活動による)

◆科学者会議「科学のひろば」緊急講演会

日時:5月17日(土)午後2時~4時
場所:鹿大教育学部103号教室
主催:日本科学者会議鹿児島支部
講師:角田寿喜氏(鹿大理学部地球環境科学科)
演題:鹿児島県北西部地震はなぜ起きたのか―そしてこれからは?

◆宮之城で902ガル

 科技庁強震ネット(K-NET)によれば、宮之城町で最大加速度南北902gal、東西901gal、上下288galを記録しました。これは阪神大震災の記録818galを上回っています。今回の地震が短周期成分が卓越していたことと局地的な地盤の影響が考えられます。

◆地下は安全?

 鹿児島県北西部地震の震源のごく近くで新幹線紫尾山トンネル工事が行われています(一番近いところで気象庁発表の震央から約300m)。3月26日の地震では、平常通り作業を続けていたとか。5月13日の時は停電になって気が付いたそうです。十勝沖地震の時も、釧路炭坑で地上の家族や会社関係者が大騒ぎしていたのに、地下で働いていた炭坑マンは全く気づかす、交代で上がってきて、何を騒いでいるのか怪訝な顔で聞いたという話が伝わっています。ジオフロント計画(大規模地下空間の利用)の売りの一つが地震でも安全ということなのです。

◆集団避難

 東郷町本俣地区では梅雨に入り二次災害が心配されるため、仮設住宅に集団移転することになりました。左は小鷹地区に建設された仮設住宅です(南日本新聞)。
 大雨の際の山崩れ・崖崩れに対する注意は災害地質学のページをご覧ください。要は、早め早めの避難と、亀裂など異常現象の早期発見が大切です。

◆横ずれ8センチ

 宇宙開発事業団NASDAでは、合成開口レーダーによる観測を行い、紫尾山付近の地面が左へ最大8cmずれたことを見出したそうです。黄色―赤色の部分が西方向への移動、青色が東方向への移動を示しています(南日本新聞)。詳しくは宇宙開発事業団のホームページをご覧ください。鮮明な画像も見られます。
 なお、国土地理院でもGPSの連続観測により、大口市が西南西へ2cm動いたことを見出しています。

◆これから要注意心の病

 大災害から3ヶ月たった頃から心の病が発症しやすいとのことで、宮之城町では鹿大教育学部久留教授を招いて、心のケアについて研修会を行いました。「頑張れ」「大丈夫」など善意の励ましがかえって心の傷を広げかねないと、久留先生から指摘があったそうです。

◆地震ゴボウ?

 5月の地震の影響か、川内産のゴボウの半数がタコの足のように分岐してしまったそうです。JA鹿児島県経済連では「地震ゴボウ」と名付けて売り出しました。本当に振動を与えると根が分岐するものなのかどうか、農業生物学の方にお聞きしたいものです。(10/2)

◆震災地質図

 本講座と鹿児島県地質調査業協会では、北薩地方の5万分の1地質図に家屋損壊・斜面崩壊・落石・液状化などの被災地点をプロットした「1997年鹿児島県北西部地震震災地質図」を刊行しました。左図は宮之城町泊野地区の部分です。鹿大南西島弧地震火山観測所の余震観測結果とわれわれの実施したアンケート震度も収録されています。頒価3,500円です。下記で取り扱っています。
<申込先>
鹿児島地図センター(徳田屋書店) TEL. 099-222-3264 FAX. 099-224-2663

◆強い余震

 年が明けたこの1998年1月10日14時02分頃、川内で震度4、鹿児島・枕崎で震度2を記録する地震がありました。M4.3で震央は第2北西部地震の南北性余震域の末端付近です(南日本新聞1998.1.11)。被害はありませんでした。

◆第2北西部地震被害統計

 鹿児島県総務部消防防災課の資料(6月13日13時現在)によると、被害は次の通りです。

人的被害
重傷軽傷
1人42人43人

建物被害
区分住家被害非住家被害
全壊4棟11棟
半壊29棟23棟
一部破損4,944棟674棟
4,977棟708棟

被害額(単位:千円)
区分金額区分金額
環境生活33,740保健福祉88,667
商工労働994,224農政1,390,674
林務水産737,411土木3,979,868
庁舎12,013学校7,139,619
総額14,376,216千円

◆報告書・論文等


地震豆知識―ガル

 この頃新聞でガルという言葉が出てくるけどガルってな~に、との質問が寄せられています。高校物理で加速度というものを教わったことを憶えていますか。そう、時刻t1のとき速度v1だったものが時刻t2のときv2に変化したとすると、加速度aはa=(v2-v1)/(t2-t1)で表されます。この加速度のCGS単位がgalなのです。cm/sec2に当たります。ピサの斜塔から鉄の球を落とした実験で有名なガリレイの名に由来します。重力加速度gは980galです。もっとも今のお子さんの時代は国際単位系(SI単位系,MKSA単位系)で教わっていますから、お子さんに聞くと、10-2m/s2のことだよと教えてくれるかも知れません。
 これだけなら単なる単位の名称の問題ですが、震度との関係となると複雑です。震度は加速度だけでなく、地震動の周期・変位・速度・継続時間などを考慮して決められるからです。加速度が大きいからといって震度が大きい訳ではありません。詳しくは気象庁の計測震度の求め方をご覧ください。


★ 関連サイト ★

 地震波形や地震活動の消長など、地震自体に関する詳細は下記のホームページをご参照ください。

地震調査研究推進本部地震調査委員会…記者発表の詳細があります。
最新有感地震情報…1日に2度自動的に計測震度を発表。テロップは常時更新。
地震加速度情報…地震予知総合研究振興会の速報です。
防災科学技術研究所強震ネット(K-NET)…強震記録や観測点の地質データが得られます。
鹿児島県北西部の地震活動(地震予知連絡会)
平成9年3月及び5月の鹿児島県北西部の地震活動(国土地理院)
九州大学島原地震火山観測所…3月26日および5月13日の地震の総括が見られます。
1997年鹿児島県北西部地震鹿大震災調査団…多少学問的に詳しい話はこちらをどうぞ。
第2鹿児島県北西部地震(西日本技術開発(株)地盤調査部)
岡山理科大学地震危険予知プロジェクト(PISCO)…宏観異常情報はこちらへお知らせください。

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更新日:1998年1月11日