鹿児島市の地盤

鹿児島市地盤図(1995)鹿児島市の沖積地盤模式断面図(横田修一郞原図)
 3.11東日本大震災では、津波のほかに浦安市の液状化も注目を集めました。あそこは東京湾岸の埋立地でした。わが鹿児島はどうでしょうか。高度成長期以来、埋立地が急増しています。国道225号よりも海側はほとんど埋立地です。鹿大水産学部が本部のある郡元地区から離れて荒田地区にあるのも、実は昔、練習船が直接接岸できたからなのです。今では陸に上がった河童です。中心市街地も江戸時代にかなり大規模な埋立造成が行われました。俊寛堀などの地名が残っています(「鹿児島の埋立地1」参照)。僧俊寛が硫黄島に流される際、出港したところだそうです。桜島大正噴火時の桜島地震(M7.1)ではこうした江戸時代の人工埋立地が激震に見舞われました(今村,1920)(参照:鹿児島の特筆災害)。
 埋立地以外のところは大丈夫でしょうか。鹿児島市内の地盤状況を見てみましょう。鹿児島市の後背地はシラス地帯ですから、他の沿岸都市と違ってかなり特殊で、沖積層も一口に言えば二次的に堆積したシラスからなっています。山内ほか(1976)によれば、乱したシラスは新潟砂のような普通砂よりも液状化しやすいとのことですので心配です。そこで、岩松を委員長とする鹿児島市地盤図編集委員会をつくり、6年かけて鹿児島大学地域共同センターと(社)鹿児島県地質調査業協会より、1995年3月『鹿児島市地盤図』を刊行しました。1995年1月17日が阪神大震災でしたから、絶妙のタイミングでした。
市役所付近天文館付近県庁付近
表層地質図(文献4による)
Google earth用kmlはここ
沖積層層厚線図(右は中心市街地の拡大図)
 鹿児島市の基盤は上図の城山層(Sh)とシラス(Si)からなり、その上を沖積層が覆っています。沖積層の大部分は上述のようにシラス起源の粗粒火山性堆積物からなっています。また、台地が迫り小開析谷から砕屑物が供給されるため、層相変化も激しいのが特徴です。甲突川は何度も人工的に付け替えられているため、基盤の盛り上がった不自然なところを流れています。上の断面図では市役所のところが沖積層が薄く地盤のよいところですが、天文館ではかなり沖積層が厚くなり、県庁のところは最悪です。こうした断面図をたくさん作り、沖積層下底面を図示したのが右図です。沖積層を剥いだ時の地形図だと思ってください。左は谷山市街地まで入れてありますが、中心市街地を拡大したのが右です。破線が沖積層の谷筋、いわば1万年前の古甲突川です。県庁はこの真上に当たります。また、阪神大震災で六甲山地に平行な震度7の“震災の帯”が有名になりましたが、これは第四紀堆積盆の縁辺部、基盤近くの急傾斜帯に位置し、エッジ効果によると言われました(入倉,2000)。県庁付近はまさにこのエッジに当たります。
 まとめますと、建設基盤としても、また、地震のことを考えても、以下のところはあまり好ましくありません。

文献:

  1. 今村明恒(1920), 九州地震帯. 震災豫防調査會報告第九十二號, p.1-94.
  2. 入倉幸次郎(1996), 阪神大震災を引き起こした強震動. 京大防災研年報, No.39A, p.17-33.
  3. 入倉幸次郎(2000), 阪神・淡路大震災を起こしたものは何であったのか, 岩波科学, Vol.70, No.1, p.42-50.
  4. 鹿児島市地盤図編集委員会(1995), 鹿児島市地盤図. 鹿児島大学地域共同センター・(社)鹿児島県地質調査業協会, 132pp.
  5. 平 瑞樹(2016), 鹿児島市の沖積地盤における液状化危険度の評価手法に関する研究. 鹿大博物館News Letter, No.38, p.9-12.
  6. 山内豊聡・松田 滋・一瀬久光(1976), 沖積シラスの液状化について. 土木学会西部支部1976年研究発表会講演概要集, p.235-236.
  7. (), . , Vol., No., p..
  8. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



初出日:2015/04/14
更新日:2016/12/28