鹿児島の埋立地2
高度成長期のウオーターフロント造成
七ツ島メガソーラー発電所 (重工業誘致の夢の跡) | マリンポートの埋立工事 |
水搬工管路系統図(平松.1968) | 埋め立て中の与次郎ヶ浜(鹿児島県,2013) |
造成順に列挙すると下記の通りです(鹿児島市史による)。
• 昭和40年(1965年):四号用地・東開町工業用地
• 昭和46年(1971年):二号用地
• 昭和47年(1972年):三号用地・与次郎ヶ浜
• 昭和52年(1977年):一号用地B区・祇園之洲
• 昭和54年(1979年):一号用地A区
埋立方法はいろいろありましたが、一番有名なものは与次郎地区を造成した水搬送工法です。城山団地を造成する際に出た13,000,000m3の土砂を利用して与次郎ヶ浜660,000m2の埋め立てを行う一石二鳥を狙ったものでした。本港区から海水をポップアップして、冷水地区(現城山団地)に送り、掘削土とこの海水を混合して懸濁液とし、3連のサンドポンプで与次郎ヶ浜まで水搬送を行いました。管路の延長は6,500~7,600mにも達しました。水搬路線には排水溝や甲突川河川敷を用いました。騒音・砂塵・交通妨害などの公害が全くない最新工法としてもてはやされました。
その後も昭和61年(1986)~平成3年(1991)のバブル景気などもありましたが、計画通りに重工業はやって来ませんでした。しかし、埋立地だけは残りました。東日本大震災の時の千葉県浦安市のように、地震時の液状化が心配です。
以下、国土地理院の旧版2万5千分の1地形図で海岸線の変遷をたどってみましょう。とくに高度成長期とそれ以降に埋立が急速に進んだことが分かります。
<注1> 旧版地形図は紙の伸縮などで多少ゆがんでいます。ジオレファレンスの際、誤差が出ていますが、ご容赦ください。
<注2> 海岸線の変遷を示すKMLファイルは鹿児島大学地域防災教育研究センターのサイトからダウンロードできるようにしてあります。
赤:1918年、茶:1935年、橙:1970年、緑:1983年、青:1998年、紫:2004年 塗りつぶした部分はその前の地図との差分、つまり、その間の埋立地。 (:江戸期の跡地,:戦後の構造物 クリックすると写真がポップアップします。) |
旧版1:25,000地形図
1918年 | 1935年 | 1970年 | |||
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鹿兒島北部 | 大正5年測図、大正7年発行 | 鹿兒島北部 | 大正4年測図、昭和7年修正測図、昭和10年発行 | 鹿児島北部 | 大正4年測量、昭和41年改測、昭和45年発行 |
鹿兒島南部 | 大正5年測図、大正7年発行 | 鹿兒島南部 | 大正4年測図、昭和7年修正測図、昭和10年発行 | 鹿児島南部 | 大正4年測量、昭和41年改測、昭和44年発行 |
瀬々串 | 瀬々串 | 瀬々串 | 昭和41年測量、昭和44年発行 | ||
阪神大震災におけるウォータフロントの液状化災害
神戸港の液状化被害(谷本,1998) | 地盤改良工法と液状化被害(谷本,1998) |
被害の大きかったポートアイランドを見ると、更に興味深いことが分かります。ここでは部分的ではありますが、各種の地盤改良工事も行われていたのです。非改良の地区に被害が集中していることが一目瞭然ですが、改良工事が行われたところでは、プレロード工法(PL)のところに部分的に見られるものの、サンドドレン工法(SD)、サンドコンパクションパイル工法(SCP)およびロッドコンパクション工法(RC)などが実施されたところでは、ほとんど被害が出なかったそうです。
なお、ポートアイランドと本土を結ぶ唯一の橋神戸大橋の三之宮側取り付け部が地震で損壊、全面復旧に1年半を要しました。こうした人工島では取付橋梁もリスク要因となります。
鹿児島の場合もいろいろな時期にいろいろな工法で埋立が行われましたから、その資料を収集し、液状化危険度判定を行い、問題のあるところには補強を行うことが喫緊の課題だと思います。
千葉県浦安市の3.11液状化災害
工学的基盤上面標高と液状化(安田,2012) | 地下水位面下FS層層厚と液状化(安田,2012) |
浦安市液状化対策技術検討調査委員会(2012)によれば、とくに被害が大きかったところは、工学的基盤(洪積層上面)の図が示すように埋没谷の部分に当たり、そこはまた、埋立造成に用いた細粒分を多く含む埋立砂層(Fs層)が厚いところでもあります。また、地下水位が浅いほど被害が大きくなる傾向があるそうです。
しかし、神戸と同様、SCP工法やPL工法などにより地盤改良されたところでは被害がないか軽微だったそうです。やはり、事前の対策が重要です。
文献:
- 平松頼夫(1968), 水搬送工法 鹿児島市中部地区宅地造成工事および与次郎ヶ浜公有水面埋立工事. 土木技術, Vol.23, No.2, p.87-94.
- 本間 勝(2013), 浦安市における液状化被害・復旧状況と不動産取引における地質情報の活用策. GSJ地質ニュース, Vol.2, No.12, p.357-360.
- 鹿児島県広報課(2013), 与次郎ヶ浜埋め立て~水搬送工法~. グラフかごしま, No.494, p.27-28.
- 鹿児島市地盤図編集委員会(1995), 鹿児島市地盤図. 鹿児島大学地域共同センター・(社)鹿児島県地質調査業協会, 132pp.
- 南日本新聞社編(1990), 鹿児島市史 第4巻. 鹿児島市, 1037pp.
- 谷本喜一(1998), 阪神大震災ウォータフロントの地盤災害. 建設工学研究所, 103pp.
- 山内豊聡・松田 滋・一瀬久光(1976), 沖積シラスの液状化について. 土木学会西部支部1976年研究発表会講演概要集, p.235-236.
- 浦安市液状化対策技術検討調査委員会(2012), 浦安市液状化対策技術検討調査報告書. 浦安市, pp.
- 安田 進(2012), 地盤WGの調査結果. 土木学会, Vol., No., p..
- (), . , Vol., No., p..
- (), . , Vol., No., p..
- (), . , Vol., No., p..
参考サイト:
- 鹿児島港(鹿児島県)
- マリンポートかごしま(鹿児島県)
- マリンポート鹿児島(Facebook)
- 鹿児島七ツ島メガソーラー発電所
- 地盤改良工法技術(土木学会)
初出日:2017/10/05
更新日:2020/12/01