鹿児島の食とジオ

　農業県鹿児島

　鹿児島は農業県です。日本一を誇る農産物がたくさんあります。たとえば、甘藷・ソラマメ・エンドウ・オクラ・ラッキョウ・本葛の生産量は日本一です。あまり知られていないのが、喜界島のゴマが国産では日本一だということです。鹿児島茶も有名で静岡に次いで2位です。その他、花卉類の生産も盛んです。
　もちろん、その生産に努力された篤農家がおられたことが大きな理由でしょうが、温暖な気候とともに地質も預かって力があります。
　なお、畜産では、黒毛和牛・黒豚・薩摩鶏などが有名です。水産業も盛んで、ウナギやカンパチ・ブリの養殖が行われています。

　甘藷

　平成28年度収穫量は32万トンで2位の宮崎県9万トンを抜き、断然第1位です。甘藷は乏水地帯でもよく育ち、根菜類ですから、台風にも被害を受けにくいので、 鹿児島のようなシラス地帯には打ってつけの作物です。詳しくは「シラス文化」をご覧ください。

　ソラマメ・エンドウ

　ソラマメ（右写真）はマメ科の2年生草本、エンドウはマメ科の1・2年生草本です。両者とも原産地は古代オリエントや地中海地方と言われ、温暖な指宿地域の気候が適しています。それと南薩畑かん事業により得られた豊富な水という地の利を生かして大規模生産が行われています。温暖ゆえに他地区に先んじて出荷できるのも強みです。土壌条件としては、耕土が深く、保水力のある砂質土壌が適しています。他の豆類と同様酸性土壌に弱いので、開聞岳噴出物のコラ層が広く分布していたこの地域には本来不適だったはずですが、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法により1970年代までにコラ層の除去が行われ、農地となりました。

　オクラ

　オクラはアオイ科トロロアオイ属の植物で、アフリカなど原産地では多年草ですが、日本では冬越しが出来ないため1年草です。花はアオイの花によく似ています。アフリカ原産ですから、指宿の温暖な地方で栽培されています。やはり、ソラマメ同様、南薩畑かん事業の後、栽培が盛んになりました。

　ラッキョウ

　ラッキョウは鳥取の砂丘ラッキョウが有名ですが、鹿児島のほうが生産量が多いのです。国内生産量の約3分の1を占めています。1位鹿児島県3500t、2位鳥取県2900t、3位宮崎県2500ｔです。お茶と同様、ブランド力・マーケティング力が弱いのが致命的です。ラッキョウはネギ属の多年草で、砂丘砂など水はけの良い土地を好みます。したがって、鹿児島でも日本三大砂丘の吹上浜などで栽培されていますが、実は30%程度に過ぎず、あとは大隅半島などシラス地帯でもかなり広く栽培されている点が鳥取などと違います（藤井,1987）。乏水地帯という点では、砂丘地帯もシラス地帯もよく似ているからです。なお、生産量に比し、他の野菜と異なり、県内消費がかなりの部分を占めています。鹿児島県人にはラッキョウ好きが多いようです。甘酢漬けラッキョウだけでなく、塩漬けラッキョウがよく店頭に並ぶのも他地域と違う点です。

　大隅の本葛

　クズはマメ科クズ属のつる性多年草です。繁殖力が旺盛で、荒れ地や藪に生えます。大隅半島に多いシラス台地縁辺部の急崖などに繁茂したのでしょう。根は木質化し、肥大した長芋状の塊根となります。この根に含まれる澱粉を生成したのが本葛です。葛切りや葛湯など和菓子や和食に使われます。薬効もあり、風邪薬の葛根湯が有名です。
　なお、「吉野本葛」「吉野葛」が特許庁の地域団体商標に登録されています。平安の昔から有名なところですから、致し方ないのかも知れませんが、鹿児島はやはりブランド化の努力が足りないのではないでしょうか。

　喜界島のゴマ

　ゴマは99%輸入に頼っていますが、喜界島は知る人ぞ知るゴマの名産地、国産の7割を占めています。喜界島は奄美大島と違って、琉球石灰岩からなる島です。このミネラル豊富なアルカリ土壌がゴマ栽培に適しているのです。主として白ゴマが栽培されており、その芳醇な香りが絶品と持てはやされています。

　茶

　別項「鹿児島茶」を参照して下さい。

蛇足：郷土料理
　地学とはあまり関係ありませんが、ウェブサイト「郷土料理ものがたり」には、鹿児島の郷土料理として、次のようなものが挙げられています。
きびなご料理つけあげ（さつまあげ）さつま汁がねあくまき
けせん団子呉汁ヘチマとそうめんの味噌汁地鶏の煮つけ（きいこん）ふくれ菓子
からいもねったぼにがごりのつくだ煮鶏飯（けいはん）桜島大根の粕漬ヒルアギ

文献
  1. 藤井嘉儀（1987）, 鹿児島県のラッキョウ生産概況. 鳥大農報, Vol.40, No., p.101-107.
  2. （）, . , Vol., No., p..
  3. （）, . , Vol., No., p..

参考サイト：

初出日：2017/12/22
更新日：2019/04/08