ジオパークとは霧島ジオパーク桜島・錦江湾ジオパーク三島村・鬼界カルデラジオパークUNESCO Global Geoparks

 鹿児島のジオパーク

 ジオパークとは

 ジオパークとは、日本ジオパーク委員会によれば、ジオパークは地球活動の遺産を主な見所とする自然の中の公園です。ジオパークは、ユネスコの支援により2004年に設立された世界ジオパークネットワークにより、世界各国で推進されています。ユネスコのガイドラインでは、次のような条件が満たされていることが求められています。 余談:
 鹿児島におけるジオパーク運動は、岩松が2007年8月に県観光交流局長を訪ね、霧島市長を紹介していただいたことに始まります。霧島は国立公園第1号で条件が整っていること、当時の世界ジオパークでは火山がなかったので容易に認定されるだろうと考えたからです。桜島を筆頭に考えなかったのは立ち入り禁止区域が広すぎて、アプローチできるところが少ないと思ったためでした。翌週、井村鹿大准教授と共に霧島市長を訪問し、賛同いただきました。

速報:
 2015年11月17日第38回ユネスコ総会はジオパークのユネスコ正式事業化を決定しました。それに伴い、正式名称は国際地質科学ジオパーク計画(International Geoscience and Geoparks Program:IGGP)となりました。ロゴも多少変わったようです。

 霧島ジオパーク

テーマ:自然の多様性とそれを育む火山活動
公式ホームページ

 霧島山は新旧20あまりの火山から成り立っています。火口湖もたくさんあるのが特徴です。古い火山には氷河時代に南九州まで進出してきたブナやツガなどが生き残っているのに対し、韓国岳や高千穂峰など新しい火山にはススキやミヤマキリシマの群生が見られます。火山の麓には温泉と清冽な地下水が湧き出し、恵みをもたらしています。一方、霧島は天孫降臨の神話の里でもあります。
 霧島は国立公園第1号ですから、昔から自然ガイドさんなどの活動が活発なところでした。多くのジオサイトを巡る13のモデルコースが設定されています。
 また、右のような子供向け副読本も作られました。

余談:
 昔、アポロが月へ行く頃には、宇宙飛行士は軍人と決まっていました。軍人にクレーターなど火山学を教えて欲しいと久野久東大教授が頼まれました。上空からクレーターを観察するのなら、霧島山が1個所にたくさんあって良いのでは、と久野先生に提案しましたが、緑豊かすぎて、月とは違いすぎると却下され、ハワイになりました。しかし、軍人に地質学を教えるよりも地質学者にロケットの操縦を教えるほうが早いということになり、シュミット(Harrison Hagan "Jack" Schmitt)さんが月へ行きました。

祝 霧島ジオパーク10周年
 2020年9月14日、霧島ジオパークは日本ジオパークに認定されてから10周年になります。それを記念して巡回パネル展がえびのエコミュージアムセンターや鹿児島空港などで開催されています。

10周年記念10周年記念巡回パネル展

 桜島・錦江湾ジオパーク

テーマ:火山と人と自然のつながり~海まで広がる活火山の営みと都市の共生~
公式ホームページ

 桜島は言わずと知れた鹿児島のシンボルです。この半世紀以上、毎日のように噴煙を上げ続けている火山は世界的に珍しいと言えます。しかもそのすぐ近くに60万都市があるところは稀です。まさに「活火山と共生」してきたのです。総合防災訓練が毎年1月12日前後に行われています。
 また、桜島は姶良カルデラ(錦江湾奥部)の後カルデラ火山でもあります。姶良カルデラの中の若尊カルデラでは、今も噴気が出ており、海上に「たぎり」が見られます。錦江湾にはイルカが棲みつくなど、生物の宝庫でもあります。 20個所の主要なジオサイトがあり、いろいろなストーリーの見学コースが用意されています。なお、NPO法人桜島ミュージアムが活発な活動を行っており、修学旅行生や観光客を案内しています。

 三島村・鬼界カルデラジオパーク

テーマ:過去から未来へ、火山と社会の関係性を考える
公式ホームページ

 三島村は薩摩硫黄島・竹島・黒島からなっています。地学的には鬼界カルデラの外輪山に位置しているので有名です。この鬼界カルデラの一番新しい活動である約7,300年前の噴火では、アカホヤ火山灰を全国に降らせ、幸屋火砕流が南九州に達して、一時、南九州の縄文文化は途絶えたそうです。

東温泉
 薩摩硫黄島は硫黄岳が今も噴煙を上げています。竹島は文字通りの竹の島、リュウキュウチクが繁茂しています。黒島にはアカガシやシイなどの照葉樹林が発達しています。
 戦前までは硫黄岳で硫黄を採掘していたそうです。それで、硫黄を使って線香花火を作るイベントが行われており、人気です。
 なお、薩摩硫黄島は俊寛僧都が流されたところとして有名です。
 交通は、村営の大型カーフェリー「みしま」(1,196トン)が週4回鹿児島港と結んでいます。

 UNESCO Global Geoparks

UNESCO Global Geoparks(BRGMによる)…多少古いデータです。
UGGp(Troodos Geoparkホームページによる:2019年現在)
 ジオパークはヨーロッパと中国を中心に発展してきました。最近、各国に広まりつつありますが、そうした歴史的経緯もあってまだ遍在しています。日本はその次に名乗り出ましたので、現在9個所、結構健闘しています。

Austria3*Belgium1Brazil3Canada3
Chile1China39Croatia2Cyprus1
Czechia1Denmark1Ecuador1Finland1
France7Germany6*Greece5Hungary2*
Iceland2Indonesia4Iran1Ireland3*
Italy10Japan9Malaysia1Mexico2
Morocco1Netherlands1Norway3Peru1
Poland1*Portugal4Republic of Korea3Romania1
Slovakia1*Slovenia2*Spain13Tanzania1
Thailand1Turkey1UK of Great Britain7*Uruguay1
Viet Nam2*印は2ヶ国に跨がるものをダブルカウントしています。

 中には国境を越えて一つのジオパークになったところもあります。地質に国民国家の国境はなく連続していますから当然ですが、偏狭なナショナリズムを克服して世界平和をめざす、国連の理念にふさわしいことが現実化してきた象徴として、大変喜ばしいことです。

* List of transnational UNESCO Global Geoparks

文献:
  1. 深見 聡・大久保守(2014), ジオパーク構想の推進過程における住民意識-鹿児島県三島村を事例に-. 九州地区国立大学教育系・文系研究論文集, Vol.2, No.1, 13pp.
  2. 岩松 暉・星野一男(2005), ジオパークと地質遺産の保全・活用. 地球環境, Vol.10, No.2, p.185-196.
  3. 岩松 暉(2006), 地質多様性とジオパーク. (財)環境地質科学研究所 研究年報, No.17, p.1-5.
  4. 岩松 暉(2007), 今なぜジオパークか. 地質ニュース, No.635, p.8-14.
  5. 岩松 暉(2009), ジオパークとは何か. 月刊地球, Vol.31, No.2, p.108-113
  6. 岩松 暉(2013), ジオパーク事始め. 日本ジオパーク隠岐大会報告書, p.12.
  7. 岩松 暉(2014), 私のジオパーク像. Geopark Magazine, 創刊号, p.8-9.
  8. 岩松 暉(2015), ジオパークと地域おこし. 経営倫理, No.77, p.30-31.
  9. 大木公彦(2014), 大地を活かすジオパークの取り組みと大学の役割. 鹿児島国際大学考古学ミュージアム調査研究報告, No.11, p.33-37.
参考サイト


初出日:2015/11/17
更新日:2020/12/24