友好都市萩の地質

 2016年1月21日、薩長同盟150年を記念して、山口県萩市と鹿児島市は友好交流の「盟約」を交わしました。盟約では、両市の遺構などが昨年7月、「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録された経緯などを踏まえ、「観光、教育、文化、経済の各分野で理解と親善を深め、両市の発展に資する」とうたっています。
 萩市周辺には主として白亜紀関門層群や阿武層群および白亜紀広島花崗岩類(102±4Ma)が広く分布しています。関門層群は下位の砕屑性堆積岩類と上位の安山岩質~デイサイト質火山岩類(107~103Ma)からなり、阿武層群は珪長質火山岩類からなります。井川・今岡(2001)は、この阿武層群を下位より、流紋岩質溶結凝灰岩や砂岩泥岩からなる阿東層、流紋岩質溶結凝灰岩や溶岩からなる生雲層および溶結凝灰岩・シルト岩・溶岩などからなる佐々並層に分けました。佐々並層は東西17km南北14kmの楕円形をしたコールドロン(シームレス地質図の環状岩脈で囲まれている部分)を形成しているそうです。
 特筆すべきことは、活火山阿武単成火山群がそれら基盤の上に分布していることです。阿武火山群の活動は2期に分けられ、前期は、約200万年前~150万年前の、溶岩台地を形成したアルカリ玄武岩の活動です。後期は約80万年前~8,800年前のカルクアルカリ安山岩~デイサイトの溶岩台地や溶岩流、スコリア丘などを形成しました。最も若い火山は笠山です。約1.1万年前に玄武岩質安山岩の溶岩台地ができ、8,800年前にストロンボリ式噴火でスコリア丘ができました。活火山を抱えている都市という意味でも、姉妹都市ナポリと同様の関係です。萩の火山については、詳しくは山口大学理学部のウェブサイトをご覧ください。 <注1> 永尾先生のご退職に伴い、山口大サイトは閉鎖され、リンク切れです。
祝 萩ジオパーク誕生!! 2018年9月20日、萩ジオパークが誕生しました。


「オープンエア・ミュージアム 山口の火山」による
 右の地質図は産総研シームレス地質図です。凡例はここ。地質図の任意の点をクリックすると、その点の地質情報がポップアップします。

文献:
  1. 井川 寿之・今岡 照喜(2001), 山口県中央部, 白亜紀阿武層群の火山層序・構造と佐々並コールドロンの発見. 地質学雑誌, Vol. 107, No.4, p.243-257.
  2. 角縁 進・永尾 隆志・長尾 敬介(2000), 阿武単成火山群のK-Ar年代とマグマ活動史.岩石鉱物科学,Vol.29,No.5, p.191-198.
  3. 松浦浩久・尾崎正紀・脇田浩二・牧本 博・水野清秀・亀高正男・須藤定久・森尻理恵・駒澤正(2007), 20万分の1地質図幅「山口及び見島」. 地質調査総合センター.
  4. 宇都浩三・小屋口剛博(1987), 西南日本,阿武単成火山群中のアルカリ玄武岩のK-Ar年代.火山第2集,Vol.32, No.3, p.263-267.
  5. 萩博物館, 萩の火山のふしぎ(DVD)
  6. 永尾 隆志(2011), 萩の火山のひみつ―阿武火山群―. (社)萩ものがたり, 54pp.
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参考サイト:



初出日:2016/1/22
更新日:2020/12/01