Society 5.0

Society5.0の位置づけ(内閣府)
経済発展と社会的課題解決の両立(内閣府)Society5.0による人間中心の社会(内閣府)
 2018年6月、政府は未来投資戦略2018―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革― という新しい方針を打ち出しました。Future Earthの日本版かと思いましたが、どうも新規産業創出に軸足があるようです。図にあるように、society1.0(狩猟社会)→society2.0(農耕社会)→society3.0(工業社会)→society4.0(情報社会)→society5.0(超スマート社会)と位置づけています。一種の社会発展段階説です。実はこの原型は2016年の第5期科学技術基本計画にあります。ここで「超スマート社会」が打ち出されたのです。
 現在はSociety4.0の情報化社会であり、経済発展が進む中、人々の生活は便利で豊かになったが、その一方で、エネルギー需要の増加や国際的競争の激化、富の集中や地域間格差といった問題が生じていると分析しています。現在の社会システムでは経済発展と社会的課題の解決を両立することは困難として、その克服のためにsociety5.0の超スマート社会を目指すとしています。Society5.0のキーワードは、IoT, AI, Big Data, Robotだそうです。つまり、第4次産業革命により人間の能力を飛躍的に拡張する技術(頭脳としてのAI、筋肉としてのロボット、神経としてのIoT)を実現し、これを元に、豊富なリアルデータを活用して、従来の大量生産・大量消費型のモノ・サービスの提供ではない、個別化された製品やサービスを提供することによってさまざまな社会課題を解決し、大きな付加価値を生むもの、としています。目指すのは健康長寿の人間中心の豊かな社会だそうです。また、これは国連の提唱するSDGsの達成にも通じるとしています。バラ色の夢を描いているようですが、具体的にどう実現していくか、お手並み拝見です。

 Society 5.0と地球科学

 Society5.0の政府広報を見ると、ドローンで宅配したり、AI家電が実現したり、介護ロボットが活躍したりといった姿が前面に出されていて、地球科学とは無縁のように見えます。しかし、本質が「データ駆動型社会」と銘打っていますので、知的公共財としての膨大な地質地盤情報を保有する地質コンサルタントにとっては、無視して良い問題ではありません。実際、官邸の「未来投資戦略2018」という文書には、「デジタル新時代の価値の源泉である「データ」や、データと新しいアイデアを駆使して新たな付加価値を創出する「人材」を巡る国際的な争奪戦が 繰り広げられている。一方、一部の企業や国がデータの囲い込みや独占を図る 「データ覇権主義」、寡占化により、経済社会システムの健全な発展が阻害される懸念も指摘されている。 」「データを独占する一部の者が社会を支配するという「デジタル専制主義」への懸念が指摘される中、様々なデータを共有財産として社会課題の解決を担うビジネスに活用し、イノベーションを牽引する多様なプレーヤーを創出するという意味で、短期の利益第一主義では対応できない新たなモデルを世界に提示するもの。」といった文言が見られます。保有する地質地盤情報を有効活用して、新たな知財を生み出し、新ビジネスを開拓することが急務でしょう。
 古宇田(2018)は、戦略的イノベーション創造プログラムSIPにおいて、地球科学分野では「次世代海洋資源調査技術」「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」「レジリエントな防災・減災機能の強化」などが重要としています。
 一方、大学も対応を迫られます。文科省「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」では「学びの在り方の変革」を打ち出しています。その取り組むべき政策の方向性は、
  1. 公正に個別最適化された学びの実現
  2. 基盤的な学力や情報活用能力の習得
  3. 大学等における文理分断からの脱却
だそうです。高等教育ではSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)を満遍なく身につけた人材の養成に重点を置いているようです。地球科学は理学の中では社会とつながりの深い学問です。政府にとやかく言われなくても、これからの時代、マルチ人材を養成することは急務でしょう。少なくとも従来のような「地質屋は数学が苦手」とか「地質学は純粋理学」といった現状は克服すべきでしょう。

文献
  1. 舩橋誠壽(2017), Society 5.0 への横幹連合の取組み 科学技術イノベーション総合戦略2017への提言. 横幹, Vol.11, No.1, p.59-60.
  2. 飯村亜紀子(2017), Society5.0に向けた産学官連携による理工系人材育成. 工学教育, Vol.65, No.6, p.32-40.
  3. 飯村亜紀子(2017), 産業界の求める理工系人材ニーズと大学教育の現状について. 工学教育, Vol.65, No.2, p.2-8.
  4. 古宇田亮一(2018), Society5.0と地質調査・資源探査. 情報地質, Vol.29, No.1, p.27-28.
  5. 松永 明 (2017), 第4次産業革命(Society 5.0)を目指す我が国の成長戦略. 研究技術計画, Vol.32, No.1, p.7-20.
  6. 高橋桂子(2019), Society 5.0と「可視化情報」─科学技術からの貢献. 学術の動向, Vol.24, No.4, p.10-13.
  7. 寺野隆雄 (2017), Society 5.0時代の科学教育―我々は何を教わるべきか. 科学教育研究, Vol.41, No.1, p..
  8. 山西健一郎(2018), Society 5.0の実現─SDGsが達成された社会を目指して. 学術の動向, Vol.23, No.1, p.56-59.
  9. (), . , Vol., No., p..
  10. (), . , Vol., No., p..
  11. (), . , Vol., No., p..
  12. (), . , Vol., No., p..
  13. (), . , Vol., No., p..
  14. (), . , Vol., No., p..
  15. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



更新日:2018/07/18
更新日:2019/10/01