仙台防災枠組 SFDRR 2015-2030

 前史

人的被害の推移(ADRCによる)
 地球温暖化などによる地球環境の変化と急激な人口増によって、世界中で自然災害が頻発しています。1970年のサイクロンによりバングラで30万人が犠牲になり、1976年唐山地震では22万人、1984年・85年の大干ばつではアフリカ東部でそれぞれ30万人・22万人の犠牲者を出しました。被害はアジア・アフリカの途上国に集中しています。そこで、1987年の第42回国連総会において、1990年代を「国際防災の10年」(IDNDR:International Decade for Natural Disaster Reduction)とすることに決まりました。1994年その第1回国連防災世界会議WCDRRが横浜で開かれ、「より安全な世界に向けての横浜戦略Yokohama Strategy and Plan of Action for a Safer World」が採択されました。なお、前年の1993年には犠牲者121名を出す鹿児島豪雨災害がありましたので、横浜会議の後半は鹿児島に場所移して行われました。
 しかし、その後も1997年には阪神大震災がありましたし、世界的に見ても都市化(スラム化)が進行して災害に対する脆弱性が高まっています。ミレニアム以降も防災に取り組む必要があるとして、1999年国連総会で国際防災戦略(ISDR)が打ち出されました。これを受けて阪神大震災のあった神戸で2005年第2回国連防災世界会議が開かれ、「兵庫行動枠組The Hyogo Framework for Action(HFA)2005-2015」が採択されました。

 第3回国連防災世界会議と仙台防災枠組

仙台防災協力イニシアティブ(内閣府)
 2011年、1000年に1度といわれる未曾有の大災害・東日本大震災がありました。そのため、国連防災世界会議は3回目も日本で開かれることになり、2015年仙台で開催、仙台宣言・「仙台防災枠組Sendai Framework for Disaster Risk Reduction(SFDRR)2015-2030」・仙台防災協力イニシアティブが採択されました。
 前文で、HFAが防災の重要な指針を提供したこと、Millennium Development Goals(MDGs)に貢献したことを認めつつ、災害リスクを減らすためには、「より良い復興(Build Back Better)」が必要であり、より広範かつ人間中心の予防的アプローチpeople-centred preventive approachを取らなければならない、と訴えています。
 指導原則(基本的考え方)として次のような項目を挙げています。
 また、優先すべき行動として、
などを挙げています。
 国連ですから、国際協力を訴えるのは当然ですが、ステークホルダー(防災関係者)の役割について強調していることも特徴です。このステークホルダーは狭い意味での防災関連行政機関のみを意味しません。市民社会、ボランティア、地域団体等、学術界、企業・業界団体、メディアなども含みます。女性の役割も強調しています。

 地球科学の役割

 「Future Earth」でも、これからの学術はステークホルダーと共に、co-designしco-produceしなければならない、と述べましたが、SFDRRでもステークホルダーのことが強調されています。学術界に関して、次のように指摘しています。
 学術機関及び科学研究機関及びネットワークは、中長期的に、新規災害リスクも含む災害リスク要因とシナリオに焦点を当てて、地域、国家、地方での適用のための研究を増やし、地域コミュニティ及び地方行政機関による行動を支援し、意思決定のための政策と科学との連携を支援する。
 今までの地球科学はグローバルなことを論じるのが地球科学だとの風潮が支配的でした。しかし、地域の地質地形的成り立ちは災害と密接不可分に関わっています。もっと地域の地質地形にも目を向けると共に、象牙の塔から一歩出て、地域コミュニティや地方行政機関との連携を強めましょう。
 また、日本の災害科学は地震予知を前面に出してきた歴史があり、予知予測の研究に偏りがちでした。SFDRRはリスクガバナンスの観点を強調しています。より実践的な文理融合の災害科学が求められていると言えましょう。

文献

  1. 小野裕一(2016), 仙台防災枠組における目標設定までの 道のり、用語・指標設定の現状、および 災害統計グローバルセンターについて. 学術の動向, Vol.21, No.3, p.94-102.
  2. 依田照彦(2016), 東日本大震災後の学会連携と防災学術連携体の設立. 学術の動向, Vol.26, No.11, p.16-19.
  3. 廣瀬典昭(2016), 防災学術連携体のめざすもの. 学術の動向, Vol.26, No.11, p.20-23.
  4. 米田雅子(2016), 日本学術会議と学協会の新たな連携. 学術の動向, Vol.26, No.11, p.24-27.
  5. (), . , Vol., No., p..
  6. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



更新日:2018/03/25
更新日:2018/07/21