地球温暖化と温室効果ガス/鹿児島における観測データ/鹿児島における気候変動の影響/大洋と雪氷圏への影響/UNEP Emissions Gap Report 2019/COP25/日本の年平均気温
地球温暖化と鹿児島
地球温暖化と温室効果ガス
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気象庁によるCO2観測記録(気象庁HPによる) |
1957~58年は国際地球観測年IGYでした。この一環として、スクリップス海洋研究所Scripps Institution of Oceanographyにより、1957年南極、1958年ハワイのマウナロア山でCO
2の観測が開始されました。ハワイのデータの経年変化が発表され、CO
2が年々増加していることが問題になりました。当時は現在の間氷期が終わりそろそろ氷河期になるのではないか、といった寒冷化説もありましたが、この科学的データを突きつけられて、地球温暖化問題がクローズアップされました。CO
2はメタンなどと並んで有力な温室効果ガスgreenhouse gas, GHGだったからです。その後、1983年、南極昭和基地の研究グループがオゾンホールOzone holeの発見を報じて衝撃を与えました。トランプ米大統領はデマだと言っているそうですが、さまざまな科学的事実から、地球温暖化の進行が認められ憂慮されています。影響も現れています。周知のように、氷河の後退・海水面の上昇・極端気象の出現・洪水の頻発・生態系の変化(珊瑚の白化・永久凍土の融解によるタイガ Тайгаの衰退)などが起きています。インドネシアの首都ジャカルタは湿地帯にあり、半分くらいが海抜ゼロメートル地帯です。今も年25cm程度の割合で沈下しているとか。この事態を受け、今年2019年8月26日、ジョコ・ウィドド大統領は首都をカリマンタン島の東部に移転する予定だと発表しました。
鹿児島における観測データ
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鹿児島年平均気温の経年変化(文献1による) | 鹿児島年降水量偏差の経年変化(文献1による) | 鹿児島日降水量100mm以上の日数の経年変化 (文献1による) |
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2019/6/28-7/5の雨量が7月平均月間降水量を超えた地点 |
鹿児島でも温暖化現象が観測されています。鹿児島市の年平均気温は100年当たり1.81℃上昇しています。ヒートアイランド現象のない、枕崎や奄美でも上昇していますし、熱帯夜の日数も増えています。降水量については変動が激しいものの、有意な変化傾向は認められません。今後、この揺らぎが大きくなり、極端な豪雨になったりしないことを願っています。
2019年7月はじめ、記録的な大雨が降り、鹿児島市では60万市民全員に避難指示が出されました(「2019鹿児島大雨」参照)。気象庁によれば、右表のように、この期間に降った雨量が7月の月降水量の平年値を超えた地点が続出しました。
鹿児島における気候変動の影響
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桜開花日の経年変化(文献1による) | 銀杏黄葉日の経年変化(文献1による) | 稲作への影響(文献1による) |
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平成5年8月豪雨(1993/8/6) | 平成29年7月九州北部豪雨(2017/7/5) |
こうした気候変動がどのような影響を与えているのでしょう。桜の開花日が早まっています。昔は入学式の頃が満開でしたが、今は散り始めて葉桜の頃になりつつあります。銀杏の黄葉日は遅くなっています。つまり、なかなか寒くならないのです。花の開花日が変わるくらいならまだしも、温暖化は農業に大きな影響を与えます。水稲は出穗後20日間の平均気温が27℃以上だと高温障害が発生します。既に九州地方で深刻な事態になっており、逆に、北海道が新潟を抜く稲作地帯になりつつあります。
右は気象庁が命名した平成5年8月豪雨と平成29年7月九州北部豪雨の天気図です。昔は、梅雨末期の集中豪雨前線が鹿児島付近に停滞し、大きな災害を起こしていました。「人が死なないと梅雨が明けない」という悲しい言葉があったくらいでした。ところが、最近は、梅雨末期の前線は北部九州~中国地方~紀伊半島方面に停滞するようになりました。福岡・大分・広島・和歌山・奈良・三重などでしばしば大災害が発生しています。
地球温暖化は海洋にも影響を与えています。海水温が上昇しているのです。高緯度まで暖かいので、台風が発達し、スーパー台風が発生しやすくなっています。台風は、マリアナ近海で誕生するのが通例でしたが、日本近海で突然生まれることもあります。まだまだ、どのような影響が出るか分かりません。
大洋と雪氷圏への影響
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IPCC特別報告書 | 海面水位の変化予測(世界平均:1986-2005年平均との差) |
国連気候変動に関する政府間パネルIPCCは、地球温暖化に関する最新知見の評価を行い、数年おきに評価報告書(Assessment Report)を発表しています。第6次評価報告書AR6は2022年発表の予定です。中間期間にはワーキンググループなどが特別報告を発表します。今年2019年9月25日、変化する気候下での海洋・雪氷圏に関する特別報告書 "Special Report on the Ocean and Cryosphere in a Changing Climate"が公表されました。いろいろな観測事実を列挙したあと、今世紀末に予想される地球温暖化の影響を次のように挙げています。
- 世界平均系面水位が最大1.1m上昇
- 海面水位が年最大2cmのペースで上昇
- 100年に1度程度だった高潮が各地で毎年発生
- 漁獲可能な資源量が20.5~24.1%減少
- 沿岸湿地が最大で9割消失
実際、今年はサンマが歴史的不漁で、大船渡や目黒のサンマ祭が冷凍サンマでやらざるを得なかったとか。
UNEP Emissions Gap Report 2019
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UNEP報告書 | CO2換算温室効果ガス排出量(左:合計,右:1人当たり) |
国連環境計画UNEPでは、今年2019年11月26日、Emissions Gap Report 2019を発表しました。地球温暖化防止のためにパリ協定では温室効果ガス排出量の努力目標を掲げましたが、現実はほど遠いものがあります。この差をemissions gapと言います。右グラフは国別CO
2換算温室効果ガス排出量ですが、中国が近年著しく排出量を増やしています。1人当たりにすると、アメリカとロシアが突出していますが、日本もそれに次いでいますのであまり威張れません。この報告書では、2018年の総排出量は553億トンで過去最高であり、今のペースでは今世紀末の気温が産業革命前に比し、3.4~3.9℃上昇し、破壊的な影響が出ると警告しています。また、パリ協定の努力目標を達成するためには、毎年7.6%の排出削減が必要としています。社会・経済そのもののあり方の転換が求められています。
COP25
今年2019年気候変動枠組条約第25回締約国会議COP25がマドリードで開かれています。アメリカのパリ協定離脱の状況をどう乗り越えていくのか、真剣な議論が行われているようです。12月7日現在、日本に関わるエピソードが2つありました。
◎ Global Climate Risk
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表紙 | Climate Risk Index (worst 3 countries) |
ドイツの環境シンクタンク
German WatchがCOP25に当たって発表した"
Global Climate Risk Index 2020"によると、昨2018年、気象災害による影響が大きかった国の第1位は日本だったとのことです。西日本豪雨や猛暑を挙げています。2位はフィリピンで3位がドイツです。異常気象は地球温暖化により深刻さを増すので「対策強化が不可欠だ」と強調しています。
◎ 化石賞
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Fossil of the Day Award(CAN: YouTube) |
化石賞fossil awardとは、環境NGOの
Climate Action Network(CAN)がCOPの会期中、温暖化対策に消極的だと判断した国や地域を毎日選び、皮肉をこめて贈っている賞です。COP25の冒頭、オーストラリア・ブラジルと共に日本が選ばれました。グテーレス(Antonio Guterres)国連事務総長が、COP開会演説で、「人類は文明を脅かす気候危機に直面し、希望か降伏のいずれかを選択しなければならない」と呼びかけ、温暖化対策の強化と石炭火力発電の利用をやめるよう各国に求めましたが、その翌日、日本の梶山経産相が石炭火力発電所は選択肢として残したい、と発言しました。このことを石炭依存症と指摘し、化石賞に選んだ理由に挙げています。2回連続受賞です。11日小泉環境相が演説を行いましたが、脱石炭に言及しなかったとして、日本が度目の化石賞を受賞しました。
日本の年平均気温最高値記録
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日本の年平均気温偏差の経年変化(気象庁) |
2019年12月23日気象庁は、2019年の天候と台風のまとめ(速報)を発表しました。年平均気温が1898年の統計開始以降で最も高くなる見込みで、その要因としては、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響と自然変動の影響が考えられます、としています。台風の年間発生数も日本への接近数も共に平年よりも多く、日本への年間の上陸数は昨年と同じ5個となりました。なお、11月の台風発生数は過去最多と並びました。
文献
- 鹿児島地方気象台(2015), 地球温暖化による鹿児島県への影響. 鹿児島地方気象台, 21pp.
- 福岡管区気象台(2014), 九州・山口県の気候変動監視レポート. 福岡管区気象台, 116pp.
- (), . , Vol., No., p..
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参考サイト:
初出日:2017/12/23
更新日:2020/01/12