鹿児島のテフラカタログ

 テフラ

 テフラtephraとはギリシア語の灰というという意味ですが、アイスランドの火山学者Thorarinsson(1944)によって、火砕物一般を指す包括的用語として提唱されました。火山灰volcanic ashは火山の噴火によって生じた粒径2mm以下の細粒物に対して用いる粒径に基づく分類法に既に使われていたからです(「大量軽石降下と陸上交通」の注参照)。しかし、降下火砕堆積物pyroclastic fall depositsだけに限る人、非溶結火砕流堆積物non-welded pyroclastic flow depositsや火砕サージ堆積物pyroclastic surge depositsも含める人、さらには溶結凝灰岩welded tuff,ignimbriteまで含める人とさまざまです。
 これらは短時間の火山活動の産物ですから、良い時間指標time markerとなりますので、層序学や考古学に大いに貢献しています。火山灰編年学tephrochronologyという学問分野も生まれました。
 なお、火山灰に由来する土壌には、ロームloamや黒ボクなどがあります。

 鹿児島のテフラ

 以下、町田・新井(2003)『新編火山灰アトラス』から、鹿児島県に分布する主要なテフラを抜き出してみましょう。詳しくは同書をご覧ください。なお、テフラは人により時代により、同一のものに別名称やローカルネームが与えられている場合があります。記号も同様です。たとえば、桜島の火山灰についてP1~P17の記号がしばしば使われています。また、地質年代も測定法の進歩により、時代によって変わってきます。文献を読む際には注意してください。
年代(Ka)名称記号給源火山備考(別名称)
AD1914桜島1(大正)Sz-1桜島 
AD1813諏訪瀬Sw諏訪之瀬島 
AD1779桜島2(安永)Sz-2桜島 
AD1717霧島新燃享保Kr-SmK霧島山 
AD1471桜島3(文明)Sz-3桜島 
AD1235霧島御鉢高原Kr-Th霧島山 
AD874開聞岳(群)Km開聞岳 
AD788霧島御鉢延暦Kr-OhE霧島山 
AD764桜島4(天平宝字)Sz-4桜島 
4.6霧島御池Kr-M霧島山 
4.8鍋島岳(群)Nbs鍋島岳 
5.6桜島5Sz-5桜島 
5桜島7Sz-7桜島 
6.4池田湖Ik池田カルデラ 
7.3±牛のすねKr-US古高千穂間にアカホヤを挟む
7.3鬼界アカホヤK-Ah鬼界カルデラ 
7.3鬼界幸屋K-Ky鬼界カルデラ 
8桜島11Sz-11桜島 
9桜島12Sz-12桜島 
 鬼界籠港鬼界カルデラ 
10.4霧島瀬田尾Kr-St霧島山 
10.6桜島13Sz-13桜島 
鬼界種子ⅡK-Tn2鬼界カルデラ 
12.8桜島薩摩Sz-S桜島 
<16.7霧島小林Kr-Kb霧島山 
 霧島アワオコシKr-Aw霧島山 
19.1燃島Mj桜島 
26桜島17Sz-17桜島 
29姶良TnAT姶良カルデラ 
29姶良入戸A-Ito姶良カルデラ 
29姶良妻屋A-Tm姶良カルデラ 
29姶良大隅A-Os姶良カルデラ 
31姶良深港A-Fm姶良カルデラ 
32.5姶良大塚A-Ot姶良カルデラ 
40-45霧島イワオコシKr-Iw霧島山 
45-50姶良岩戸A-Iw姶良カルデラ 
90姶良福山A-Fk姶良カルデラ 
95鬼界葛原K-Tz鬼界カルデラ 
95鬼界長瀬K-Ns鬼界カルデラ 
田代Ts阿多カルデラ 
105阿多Ata阿多カルデラ 
 阿多丸峰Ata-Mr阿多カルデラ 
140小アビ山Kob鬼界カルデラ 
240阿多鳥浜Ata-Th阿多カルデラ 
328加久藤Kkt加久藤カルデラ 
420小田Oda姶良カルデラ 
ca.500吉野Ysn姶良カルデラ鍋倉(Nbk)
 Is姶良カルデラ 
520-530小林笠森Kb-Ks小林カルデラ 
570-580樋脇Hwk加久藤より南のカルデラ下部加久藤・下門・三船
580小瀬田Ksd鬼界? 
780安房Amb 
ca.1.7Ma川内Snd 
ca.1.9-2.3 Ma阿久根1Akn1 
1.88 Ma花野Ⅰ,ⅡKno姶良? 
 河頭Kgs姶良? 
 溶岩Ygn 
ca.1.8MaFmt姶良? 
ca.2.2Ma脇登Wkn姶良? 
2.78Ma大野原Onh姶良? 
2.9-3.1Ma伊作Izk姶良? 
3万年前以降の主要テフラ等層厚線図(町田・新井,2003)
3万~5万年前の主要テフラ等層厚線図(町田・新井,2003)
約5万年前以前の主要テフラ等層厚線図(町田・新井,2003)
阿多鳥浜テフラ(町田・新井,2003)加久藤テフラ(町田・新井,2003)
 
<注> 左表の地質年代に挙げた値は、測定法がさまざまですので、一概には比べられません。大まかな数字と考えてください。
 
文献
  1. 青木かおり・町田 洋(2006), 日本に分布する第四紀後期広域テフラの主元素組成 - K2O-TiO2図によるテフラの識別. 地質調査所研究報告, Vol.57, No.7/8, p.239-258.
  2. 町田 洋・新井房夫(2003), 新編 火山灰アトラス―日本列島とその周辺. 東大出版会, 336pp.
  3. Þórarinsson, S.(1944), Tefrokronologiska studier på Island. Geografiska Annaler, Vol.XXVI, p.1-217.
  4. (), . , Vol., No., p..
  5. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



更新日:2017/12/10
更新日:2019/04/04