鹿児島の大地形

 接峰面図

第四紀地殻変動図(防災科学技術研究所,1969)
 接峰面図summit level mapとは、地形図を適当な間隔のグリッドで区画し、各区画の最高標高点を通るように空中に仮想した曲面を等高線で現したものです(藤井,2002)。たとえて言えば、野山を大風呂敷で覆った状態を想像してみてください。地形の細かい変化を捨象し、山地地形・谷地形・断層・平坦面など、その地域を特徴付ける重要な地形的要素を浮き彫りにすることができます。当然のことながら、用いるグリッド間隔により、抽出される地形的特徴も異なります。一定の幅以下の谷を埋めて等高線を描いた谷埋め接峰面図(埋谷面図)もあります。これは浸食前の原地形を復元するのに適しており、火山地形の解析にしばしば用いられます。なお、各区画の最低標高点を用いたのが接谷面図river level mapです。
 一番有名なのが岡山俊雄(1969)による日本列島の接峰面図でしょう。岡山の用いたグリッドは5万分の1地形図を南北8等分、東西10等分したもの(約5.4km平方)です。山地がブロックとして表現され、境界の断層がはっきりと分かります。右図を拡大して見てください。糸魚川-静岡構造線・中央構造線・阿寺断層などが見事に表現されています。

 鹿児島の大地形

大区分中区分小区分(地形型区分)
A 南部九州A1 南九州南東部山地A1-2 高隈山地
A1-3 肝属山地
A2 南九州東部平野A2-4 肝属平野
A2-5 鹿屋丘陵
A3 南九州火山群A3-1 霧島火山群
A3-2 姶良カルデラ・桜島
A3-3 阿多カルデラ・池田湖・開聞岳
A3-7 鹿児島湾北岸丘陵・低地
A3-8 鹿児島湾
A5 南九州西部山地A5-1 出水山地
A5-2 揖宿山地
A5-3 肥薩火山群
A5-4 北薩火山群
A5-5 南薩火山群
A5-7 大口盆地
A5-8 鹿児島湾西岸丘陵・低地
A5-9 出水平野
A6 南部九州大陸棚A6-2 大隅海峡大陸棚
 町田ほか(2001)は、九州の地形区分を行い、A 南部九州、B 中部九州、C 北部九州、D 奄美・沖縄帯と大区分しました。南部九州のうち、鹿児島県本土の部分を抜粋したものが、右表です。要するに、「鹿児島の重力構造」でも述べたように、県本土の中央部を鹿児島地溝が縦断していることが特徴です。これを境に東部山地と西部山地に分けています。
 鹿児島県本土の地質は「ご挨拶」の模式断面図で示したように、日南帯を含む広義の四万十帯を基盤としており、一番上をシラスが覆っています。薩摩半島には新第三紀火山岩類も分布します。下の接峰面図と傾斜量図を見てみましょう。県本土の6割を覆うのがシラスですから、平坦面が目立ちます。そこへ所々四万十層群からなる山々が残丘状に顔を出します。薩摩半島では、新第三紀火山岩類も丘陵を形成しています。最後に、活火山群の独立峰が、鹿児島地溝に沿って、吹き出物のようにそそり立っています。顕著な断層地形はありませんが、出水平野南縁と人吉盆地南縁に、小規模な断層地形が存在します。
謝辞: 傾斜量図は産総研西岡芳晴氏が試験公開しておられるものを使用しました。記して謝意を表します。
注 : 接峰面図は国土地理院の3次メッシュ(1kmメッシュ)の最高標高DEMを使用しました。作成法について、大阪市立大学根本達也氏にご教示いただきました。記して謝意を表します。

接峰面図傾斜量図(産総研西岡芳晴氏による)

文献:

  1. 第四紀地殼変動研究グループ(1968), 第四紀地殻変動図. 第四紀研究, Vol.7, No.4, p.182-187.
  2. 藤井紀之(2002), 解説 地形判読への接峰面図の活用. 応用地質, Vol.43, No.2, p.101-109.
  3. 藤田和夫(1983), 日本の山地形成論―地質学と地形学の間. 蒼樹書房, 466pp. pp.407-436.
  4. 貝塚爽平(1998), 発達史地形学. 東大出版会, 286pp.
  5. 貝塚爽平(1985), 写真と図でみる地形学. 東大出版会, 241pp.
  6. 町田 洋・河名俊男・長岡信治・太田陽子・森脇 広(2001), 日本の地形(7)九州・南西諸島. 東京大学出版会, 355pp.
  7. 中山正民・豊島吉則(1989), 西南日本外帯における平野の配列とその特性. 地理学評論, Vol.62, No.A-2, p.92-107.
  8. 岡山俊雄(1961), 日本の地形構造と地質構造の関係.『辻村太郎先生古稀記念地理学論文集 』, p.50-68.
  9. 岡山俊雄(1969), 第四紀地殻変動図, No.6 接峰面図. 国立防災科学技術センター.
  10. 岡山俊雄(1988), 百万分の1日本列島接峰面図(岡山俊雄先生を偲ぶ会). 古今書院, 図3葉・解説書71pp.
  11. 太田陽子・鎮西清高・野上道男・松田時彦・町田 洋・小池一之(2010), 日本列島の地形学. 東大出版会, 204pp.
  12. 鈴木隆介(1997), 建設技術者のための地形図読図入門 第1巻 読図の基礎. 古今書院, 200pp.
  13. Tanaka, M.(1982), A map of regional denudation rate in Japanese mountains. Trans. Japan. Geomorph. Union, Vol.3, p.159-167.
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参考サイト:



初出日:2017/09/17
更新日:2018/11/04