鹿児島の重力構造

 重力異常

重力加速度・重力異常(東北大HPによる) Δg0"が重力異常
 私たちは地上で生活をしていますから、地球から引力で引っ張られています(正確には引っ張り合っています)。一方、地球は自転していますので、遠心力も働きます。この引力(万有引力)と遠心力の合力が重力gravityです。実際、地球は遠心力によって赤道方向に膨らみ、極方向にひしゃげた回転楕円体になっています。これを地球楕円体とも呼び、ほぼ海面に一致します。この面上の重力が標準重力です。したがって、重力は赤道で最小になり約978Gal、極で約983Galになります。また、標高が高ければ、それだけ地球の中心から遠いわけですから、引力が小さくなる分、重力は小さくなります。重力の実測値から高度補正した値と標準重力の差がフリーエア異常free air anomalyです。高度補正は、測定点と海面との間に物質が存在しないと仮定して行われます。測定点と海面の間にある物質の密度をある一定値(たとえば2.67g/cm3)と仮定する補正法もあります(厳密には高度補正・地形補正も行います)。ブーゲー異常Bouguer anomalyです。地球内部の密度分布を反映していると考えられます。地下に相対的に重いものがあるとブーゲー異常は正になり、軽いものがあると負になります。

 鹿児島の重力異常

重力異常から推定されるカルデラ群(小林ほか,1996)
 下図は産総研の重力図(ブーゲー異常)です。仮定密度2.30g/cm3の例です。一見して、鹿児島地溝に沿って負の重力異常帯が並んでいることがわかります。北から、加久藤・小林盆地、安楽地域、姶良カルデラ・阿多カルデラの順に並んでいます。鬼界カルデラも負の重力異常が認められます。これらの多くはカルデラですが、安楽では明白な火山との関連は認められません。しかし、小林ほか(1996)は、ここ安楽の負異常の内部構造は円柱状ではなく、倒立円錐(台)状で、多くの巨大カルデラと類似していると述べています。40mGalを超す高重力異常は出水山地(紫尾山地)、揖宿山地、高隈山地、大隅山地など四万十層群(含花崗岩)分布域に点在しています。坊津など南薩層群分布域にも高異常が認められます。鉱床地帯です。このように、重力からだけでも大まかな地質構造を読み解くことができます。実際、鉱床探査に重力探査は不可欠な手法の一つです。伊佐市菱刈の鉱山マークのあるところにH印があります。従来の鉱山は露頭に鉱徴があり、江戸時代に狸掘りをしていたところを再開発したところがほとんどでした。高重力異常部をターゲットに科学的な探鉱が行われ、鉱山が発見された最初の例です。この菱刈鉱山は大変高品位で世界的に有名です。
重力図(ブーゲー異常)(産総研,2004&2005) 仮定密度:2.30g/cm3 参考までにカルデラ位置を追加


文献:
  1. 小林茂樹・志知 龍一・西仲秀人・渡辺秀文・鬼澤真也(1996), 霧島火山および周辺カルデラにおける稠密重力測定. 地震研彙報, Vol.70, No.2, p.103-136.
  2. 町田 洋・河名俊男・長岡信治・太田陽子・森脇 広(2001), 日本の地形(7)九州・南西諸島. 東京大学出版会, 355pp.
  3. 村田泰章・名和一成・駒澤正夫・森尻理恵・広島俊男・牧野雅彦・山崎俊嗣・西村清和・大熊茂雄・志知龍一(2007), 鹿児島地域の重力異常について. 地質調査研究報告, Vol.58, No.11-12, p.351-370.
  4. 茂野 博(2009), 九州の火山・地熱活動の時空変化とフィリピン海プレート-スラブの沈み込みの関係-電子地球科学情報を利用した簡易モデル化-シミュレーションによる検討-. 地質ニュース, Vol., No.656, p.10-28.
  5. 山本明彦(1989), 西南日本におけるフィリピン海プレートの沈み込みと重力異常. 測地学会誌, Vol.35, No.2, p.215-225.
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参考サイト:



初出日:2017/09/17
更新日:2020/03/04