鹿児島の鉱物
鉱物と造岩鉱物・鉱石鉱物
鉱物mineral | 結晶系 | 存在割合(%) | |
---|---|---|---|
長石feldspar | 斜長石plagioclase | 三斜晶系 | 42 |
正長石orthoclase | 単斜晶系 | 22 | |
石英quartz | 三方晶系(低温)・六方晶系(高温) | 18 | |
角閃石amphibole | 単斜晶系または斜方晶系 | 5 | |
輝石pyroxene | 斜方晶系または単斜晶系 | 4 | |
雲母mica | 単斜晶系または斜方晶系 | 4 | |
カンラン石olivine | 斜方晶系 | 1.5 | |
その他 | 3.5 |
鉱物mineralとは地球や地球外物質をつくる天然の均一な無機質の固体のことで、地質過程において生成された、ほぼ一定の化学組成で結晶構造を持つものを指します。岩石rockはこの鉱物や岩片の集合体です。ごく普通に存在する岩石の構成鉱物を造岩鉱物rock-forming mineralと言います。右表に主要造岩鉱物を挙げておきます。その他、有用な資源となる鉱石を構成するものを鉱石鉱物ore mineralと言います。
造岩鉱物はあまりにありふれていますので、鹿児島で見られる比較的珍しい鉱物を紹介しましょう。地図の位置は乱掘・盗掘を防ぐために、正確な位置ではありません。
鹿児島の鉱物
大隅石Osumilite(産地:霧島市隼人町野久美田) 鹿児島の鉱物というと真っ先に挙げなければならないのが大隅石です。桜島口の早崎台地(咲花平)の牛根流紋岩中から都城秋穂(1953)が新鉱物として報告し、大隅半島の名前が付けられました。六方晶系です。それまでは菫青石cordierite(斜方晶系)と思われていました。六角短柱状結晶で、濃青色~黒色をしています。化学組成は(K,Na,Ca)(Fe,Mg)2(Al,Fe3+)3Si10Al2O30・H2Oです。現在、標識地は法面工事により、露頭はなくなりましたが、隼人町野久美田の黒酢工場敷地内で採取することは可能です(許可が必要)。標本は鹿児島県立博物館所蔵。 |
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原田石Haradaite(産地:大和鉱山) 1982年渡辺武男により原田準平北大名誉教授の業績を称えて命名された新鉱物です。奄美大島大和鉱山および岩手県野田玉川鉱山産のマンガン鉱石の中か発見されました。斜方晶系で、化学組成はSrV4+Si2O7です。写真のように鮮やかな緑色をしており、劈開がよく発達しています。標本は鹿児島県立博物館所蔵。 |
1500万年前古第三紀の熊毛層群に貫入した屋久島花崗岩は正長石の巨晶を産するので有名です。大きいものでは7~8cmもあります。正長石は白色~無色の厚板状をしており、花崗岩には普通に見られますが、このような大きな結晶は稀です。単斜晶系で、化学組成は(K,Na)AlSi3O8です。
カンラン石Olivine(産地:指宿市開聞町)
開聞岳の玄武岩溶岩中にカンラン石が含まれています(内村・浦島,2013)。Mg2SiO4(苦土カンラン石forsterite)と Fe2SiO4(鉄カンラン石fayalite)との間の連続固溶体をなしています。とくに苦土カンラン石は美しいオリーブ色をしています。MgやFeの代わりにMnの入ったテフロ石tephroiteなどもあります。カンラン石を主要構成鉱物とする岩石をカンラン岩peridotiteと言い、超塩基性岩で、マントル上部を構成しています。北海道日高山脈アポイ岳のように、地殻変動に伴ってマントル物質が地表に現れたものもありますが、開聞岳の場合は、マグマが捕獲してきたのでしょう。ここから洗い出されて川尻海岸の海岸砂にも多く含まれています。写真は内村・浦島(2013)からの引用。
オパール(蛋白石)Opal(産地:鹿児島市郡山町茄子田)
鮮新世
文献:
- 川辺禎久・阪口圭一(2005),開聞岳地域の地質 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).産総研地質調査総合センター,82pp.
- 小林哲夫(1978), 北海道利尻島および鹿児島県隼人町産の大隈石について. 鹿大理紀要(地学・生物学), Vol.11, p.61-69.
- 丸野伊勢夫(1988), 鹿児島県産鉱物について. 鹿児島県地学会誌, No.60, p.15-35.
- Miyashiro, Akiho(1953), Osumilite, a New Mineral, and Cordierite in Volcanic Rocks. Proc. Japan Academy, Vol.29, No.7, p.321-323.
- Miyashiro, Akiho(1956), Osumilite, a new silicate mineral and its crystal structure. American Mineralogist, Vol.41, Nos.1-2, p.104-116.
- 大迫陽一(9992), 〈私の推薦する天然記念物〉隼人町の大隈石(オースミライト). 地質ニュース, No.454, p.45.
- 竹内 誠(1993), 湯湾地域の地質 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅). 地質調査所, 70pp..
- 多久島徹(2018), 鹿児島県で発見された鉱物「大隅石」, 鹿児島県地学会誌, No.111, p.
- 多久島徹(2018), 鹿児島県で発見された鉱物. 鹿児島県立博物館報研究告, No.37, p.71-72.
- 多久島徹(2019), 鹿児島県で発見された鉱物(その2), 鹿児島県地学会誌, No.112, p.1-2.
- 内村公大・大木公彦・古澤 明(2007), 鹿児島県八重山地域の地質と鮮新統郡山層の層位学的研究. 地質学雑誌, Vol.113, No.3, p.95-112.
- 内村公大・浦嶋幸世(2013), 開聞岳のかんらん石. Nature of Kagoshima, No.39, p.191-202.
- Watanabe, T., Kato, A., Ito, J., Yoshimura, T., Momoi, H. and Fukuda, K. (1982): Haradaite, Sr2V24+[O2Si4O12], from the Noda Tamagawa mine, Iwate Prefecture and the Yamato mine, Kagoshima Prefecture, Japan. Proc. Japan Academy, Vol.58 Ser.B, p.21-24.
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参考書(抄):
- Deer, W. A., Howie, R. A. & Zussman, J.(2013), An Introduction to the Rock-Forming Minerals (3rd ed.). Mineralogical Society, 375pp.
- 藤野清志(2015), 結晶学・鉱物学. 共立出版, 180pp.
- Mackenzie, W. S. & Guilford, C. (1980), Atlas of the Rock-Forming Minerals in Thin Section. Routledge, 104pp.
- 都城秋穂・久城育夫(1972), 岩石学 I 偏光顕微鏡と造岩鉱物. 共立全書, 248pp.
- 森本信男(1989), 造岩鉱物学. 東大出版会, 239pp.
参考サイト:
- オンライン・フィールドガイド 鹿児島(鹿児島大学総合研究博物館)
- 鹿児島県地学会
- 鉱物データベース(TrekGEO)
- 鉱物図鑑(Weblio辞書)
- 鉱物図鑑一覧(慶應義塾湘南藤沢高等部コンピューター部)
- THE 鉱物図鑑(iStone)
初出日:2016/11/17
更新日:2020/11/27