国分平野の地形

 現在、南海トラフ連動型地震や桜島大噴火に伴う火山性地震などが心配されています。不幸にしてこのような事態が発生した場合には、鹿児島湾奥部に位置する霧島市・姶良市・鹿児島市などの沿岸低地部が家屋倒壊・地盤沈下・液状化・津波などの被害を受けるでしょう。3.11東日本大震災で千葉県浦安市などが甚大な液状化被害を受けたのが良い例です。
 とくに霧島市の中心市街地は、寛文2(1662)~6(1666)年に行われた「天降川川筋直し」により現河道へ付け替えられるまでは、旧天降川(当時の名称は広瀬川)は市街地周辺で蛇行を繰り返していたからです。また、江戸時代から現在に至るまで埋立が行われているからです。実際、1993年の水害では国分市街地は浸水しましたし、1914年の桜島地震では、江戸時代の埋立地「小村新田」は地盤沈下により水没しまた。一刻も早い地盤図作成が求められていると思います。
 さて、旧天降川はどこを流れていたのでしょうか。末尾の1948年米軍空中写真を見ると、おぼろげながら分かりますが、現在は人工改変され、復元はなかなか難しいのが実情です。国分高校の地学班は、古絵図を参照すると共に、実際に測量を行いました。川筋を盛土しても、圧密の差により、僅かながら旧地形をなぞる窪みができるからです。徒歩では気づかない僅かな傾斜でも自転車で調査すると気づくこともあります。こうしてできたのが右図です。見事に旧河道が復元されています。古絵図ともよく一致しているそうです。
5mメッシュDEMより作成した等高線
(緑:5m,黄:3m,赤:1m)
土地分類基本調査地形分類図(国分・加治木)
凡例
永迫ほか(2012)による地形分類図
旧天降川の流路(国分高,2019)
1993年8・1水害浸水図(文献5付録)霧島市洪水ハザードマップ(2010年3月版)
0-0.5m0.5-1.0m1.0-2.0m2.0-5.0m
2012年国交省浸水想定区域(背景:1965年空中写真)

三角州性低地砂礫台地(下位)シラス台地(中位)シラス台地(上位)小起伏丘陵地中・小起伏火山地小起伏山地・山麓地
20万分の1土地分類基本調査:地形分類図(鹿児島)
参考
 下は1948年米軍撮影の空中写真です。ステレオビューワ等で立体視してみてください。旧河道がおわかりでしょうか。

文献:
  1. 天降川の川筋直し研究会(2001), 天降川の川筋直し:江戸初期の大工事. 天降川の川筋直し研究会, 116pp.
  2. 鹿児島県企画部開発課(1973), 土地分類基本調査「国分」「加治木」. 鹿児島県.
  3. 霧島市(2010), 霧島市洪水ハザードマップ
  4. 国分高校理数科地学班・若松斉昭(2019), 旧天降川はどこを流れていたか~洪水ハザードマップの高精度化を目指して」~. 鹿児島県地学会誌, No.112, p.3-10.
  5. 文部省科学研究費突発災害調査研究成果自然災害総合研究班(研究代表者 岩松 暉)(1994), 平成5年8月豪雨による鹿児島災害の調査研究研究成果報告書. 文部省自然災害総合研究班, 190pp. 付浸水図A0判1葉.
  6. 森脇 広・町田 洋・初見祐一・松島義章(1986), 鹿児島湾北岸におけるマグマ水蒸気噴火とこれに影響を与えた縄文海進.地学雑誌,95 (2),94-113.
  7. 森脇 広・松島義章・町田 洋・岩井雅夫・新井房夫・藤原 治(2002), 鹿児島湾北西岸平野における縄文海進最盛期以降の地形発達.第四紀研究,41 (4),253-268.
  8. 永迫俊郎・石塚孔信・森脇 広(2012), 霧島市における中心市街地の変容と地形環境. 鹿大法文学部紀要, Vol.1204, p.1-22.

参考サイト:



初出日:2015/04/30
更新日:2020/04/23