鹿児島の地震
鹿児島における被害地震
地震調査推進本部の確率論的地震動予測地図では、日本海側(東シナ海側)は、地震が比較的起こりにくいとされていますが、2019年6月18日深夜、山形沖でM6.8の地震が発生しました。新潟県村上市で震度6強でした。同地方は豪雪地帯ですから、家屋が頑丈に造られているため、被害が少なかったそうです。鹿児島も地震が少ないところと言われていますが、果たしてそうでしょうか。家屋耐震基準の地域係数が小さなところですから、ひとたび地震に見舞われたら、被害が大きくなります(地域係数については「ハザードマップ」をご覧ください)。下図は地震調査推進本部の被害地震の図と、鹿児島県内で震度5以上を観測した地震をプロットした図(気象庁による)です。鹿児島県本土に被害を及ぼす地震は、北西部の内陸地震と日向灘~南海トラフの巨大地震です。前者は活断層型地震で、後者はプレートの沈み込みに伴う地震です。島嶼部では、種子島や奄美大島周辺で発生しています。やはりプレート型です。
マーカーをクリックすると、発生年とマグニチュードおよび県内での最大震度が表示されます。 <注> 1914年の桜島地震M7.1や1923年の種子島東方沖地震M7.1は含まれていません。 | ||||||||||
鹿児島県に被害を及ぼした主な地震(地震本部) | 1925年以降鹿児島県で震度5以上を観測した地震(気象庁データより作成) |
鹿児島の地震テクトニクス
フィリピン海プレートの沈み込み(鹿大博物館news letter No.20より) | |
左横ずれ内陸地震(角田・後藤,2002) | フィリピン海プレート(齋藤,2017による10km等深線) |
M7.0以上の地震(長宗,1988) |
また、角田・後藤(2002)は内陸の浅発地震も検討しています。結論として、ここではNNE-SSW走向のリフティング(鹿児島地溝など)とWNW-ESE走向の左ずれを示す地震(1968えびの地震・1997鹿児島県北西部地震など)が卓越しているとしています。
一方、長宗(1988)は、フィリピン海プレートは齋藤(2017)のようにスムーズにつながっているのではなく、断裂して日向灘・九州南方海域・奄美大島近海とブロック化していると述べています(右図)。日向灘ではM7クラスの地震がしばしば発生しているのに対し、九州南方海域は比較的小さい地震活動が活発であり、奄美大島近海では1911年喜界島沖地震のようにM8クラスの地震が発生しているとしています。確かに冒頭の図でも、この100年間九州南方海域ではM4以上の地震は見られません。
文献:
- 角田寿喜・宮町宏樹・高木章雄(1991), 九州―琉球弧北部域の稍深発地震. 地震2輯, Vol.44, No.2, p.63-74.
- 角田寿喜・後藤和彦・宮町宏樹・平野舟一郞・石原和彦(1995), 地震活動からみた九州南部―南西諸島域のテクトニクス. 月刊地球, Vol.17, No., p.414-417.
- 角田寿喜・後藤和彦(2002), 九州-南西諸島北部域の地震活動とテクトニクス. 地震2輯, Vol.55, No.3, p.317-336.
- 長宗留男(1988), 日向灘から奄美大島近海にかけての海域における地震活動. 鹿大理紀要(地・生), Vol.21, p.23-33.
- 長宗留男・田代秀樹(1989), 九州下における和達―ベニオフゾーンの形状. 地震2輯, Vol.42, No.1, p.13-19.
- 岡本 響・大倉敬宏・瀬野徹三(2008), 九州地方中南部におけるフィリピン海スラブ内地震活動. 地震2輯, Vol.61, No.2, p.77-90.
- 斎藤英二(2017), 日本列島下の海洋プレートのGISデータ作成. 地質調査総合センター研究資料集, No. 647, p..
- 茂野 博(2009), 九州の火山・地熱活動の時空変化とフィリピン海プレート-スラブの沈み込みの関係-電子地球科学情報を利用した簡易モデル化-シミュレーションによる検討-. 地質ニュース, Vol., No.656, p.10-28.
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参考サイト:
- 地震調査研究推進本部
- 気象庁地震情報(震源・震度に関する情報)
- 東京大学地震研究所
- 京都大学防災研究所地震予知研究センター
- 九州地方の地震活動(毎時0,15,30,45分に更新)(九州大学)
- 産総研地質調査総合センター活断層・火山研究部門
- 防災科学技術研究所地震ハザードステーション
- 防災科学技術研究所防災地震Web
- 日本地震学会
- 鹿児島県防災Web 地震情報
- 鹿児島大学総合研究博物館ニュースレターNo.20
初出日:2019/06/18
更新日:2019/12/18