鹿児島の橋梁
上野賞を受賞した伊唐大橋 |
ここではデザインの話はさておき、地質との関連で橋梁を見てみましょう。一例として、垂水市の早咲大橋と牛根大橋を取り上げてみます。桜島口の
1976年災害(小林ほか,1977) | 1976年災害 | 早咲大橋 |
牛根大橋橋脚部施工時の亀裂 | |
国交省の橋梁通過案(大隅河川国道事務所パンフより) | 牛根大橋 |
そこで、国道は放棄し、橋でつなぐ案が浮上しました。新潟県糸魚川市の親不知海岸の難所(安寿と厨子王の話で有名なところ)を海に張り出した橋で通過した実例があるからです。
先ず、南側は親不知のように海岸に張り出した全長888mの早咲大橋で通過することにしました。崩壊土砂は橋の下をくぐって海へ出す計画です。北側は大正溶岩で閉塞される前の瀬戸海峡、海が深いので、一旦、桜島に渡り、牛根大橋で牛根のほうに渡ることにしました。旧国道は崩壊土砂を溜めるポケットに使おうというわけです。早咲大橋が先にに完成し、牛根大橋施工中に問題が発生しました。桜島側の橋脚施工中に亀裂が発生したのです。地質的には、ヘドロのような海底堆積物の上に大正溶岩の先端部が載っただけですので、恐らく荷重に耐えられなかったのが基本でしょうが、鋼管矢板締切工による振動で、溶岩の自破砕部が緩んだことなどが考えられました。アンカー工や杭打ち工などで凌ぎ、完成しました。バランスドアーチという構造形式で、中央径間が九州で一番だそうです。唯一つ残念な点は、桜島口のところだけ現状維持になったことです。ここがネックですから、この点で崩壊が起きたら、アウトです。もう少し桜島側に大回りして、旧国道をポケットに出来なかったものでしょうか。桜島は国立公園なので、現状変更が難しかったのでしょう。なお、橋桁建設に際して、陸上で組み立てた完成品をクレーン船で運んだとして話題になりました(動画参照)。
文献:
- 濱元 勲・平元勇記(2004), 牛根大橋P1橋脚工事における地山変状について―桜島溶岩流における施工例―. 平成16年度九州国土交通研究会講演論文集, p.1-4.
- 鹿児島県出水耕地事務所(1997), 伊唐大橋工事誌. 鹿児島県出水耕地事務所, pp.
- 小林哲夫・岩松 暉・露木利貞(1977), 姶良カルデラ壁の火山地質と山くずれ災害. 鹿大理学部紀要(地学・生物学), Vol.10, p.53-73.
- Miyashiro, A.(1953), Osumilite, a New Mineral, and Cordierite in Volcanic Rocks. Proceedings of the Japan Academy, Vol.29, No.7, p.321-323.
- Miyashiro, A.(1956), Osumilite, a new silicate mineral and its crystal structure. American Mineralogist, Vol.41, Nos.1-2, p.104-116.
- (), . , Vol., No., p.
- (), . , Vol., No., p.
- 国道220号 早崎防災 ~完成までの道のり~
- 牛根大橋工事1(動画)
- 牛根大橋工事2(動画)
- 牛根大橋(土木学会土木写真部)
- 早咲大橋(土木学会土木写真部)
初出日:2015/8/12
更新日:2019/03/30