中之島地すべり

産総研シームレス地質図
20万分の1「中之島及び宝島」
北側の地すべりブロック(建物は学校)基盤(凝灰角礫岩)の粘土化帯階段の変状護岸堤防の変状
地すべりの末端隆起による珊瑚礁の陸側への傾動同左の拡大集水井道路の亀裂
地質断面図(文献2を一部改変、赤破線はすべり面)
 鹿児島県にはあまり大規模な地すべりはありません。防災科学技術研究所地すべり地形分布図を見ても、熊本県や宮崎県に比べて格段に少ないことが分かります。なお、地すべり地形分布図は本ウェブサイトの「災害記念碑分布図」でもご覧いただけます。
 しかし、学校まで乗せて動いた特異な例があります。トカラ列島中之島の地すべりです。ここ中之島には活火山の中之島御岳がありますが、基盤は更新世の安山岩類です。これらは溶岩や凝灰角礫岩からなりますが、中には変質しているところもあります。
 中之島地すべりは2000年代前半、かなり激しい動きをし、4年間で最大約30cmも動いたこともあります。素因は安山岩の変質で誘因は降雨です。伸縮計や移動杭による観測も行われましたが、降雨と良い相関が得られました。対策工として集水井が多数掘られ、水抜工が行われました。
文献:
  1. 大四雅弘(1987), 鹿児島県トカラ列島中之島の火山地質. 日本地質学会学術大会講演要旨, 94, p.406
  2. 独立行政法人土木研究所・国際航業株式会社・日本工営株式会社・基礎地盤コンサルタンツ株式会社・株式会社アイエステー・株式会社キタック・株式会社レイディック(2013), 地表面変位計測による地すべり規模推定システムに関する共同研究 共同研究報告書. 独立行政法人土木研究所, 200pp.
  3. 中野 俊・下司信夫・小林哲夫・斎藤 眞・駒澤正夫・大熊茂雄(2008), 20万分の1地質図幅「中之島及び宝島」. 産総研地質調査総合センター.


初出日:2015/05/15
更新日:2019/11/03