はじめに／水害／土砂災害

　2006年7月鹿児島県北部豪雨災害

　はじめに

川内川流域総雨量図（川内川河川事務所）大口市雨量経過図（気象庁）
　2006年7月18～23日にかけて、鹿児島県北部では梅雨前線に伴う豪雨により、水害や土砂災害が多数発生しました。北薩地方の総雨量は、多いところで1,000mmを超える記録的なもので、阿久根・大口および紫尾山のアメダスでは、総雨量が7月降水量の平年値の2倍以上を記録しました。
　これによる鹿児島県の人的被害は死者5名負傷者11名、住家被害は全壊242棟半壊1,225 棟一部損壊74棟、床上浸水376棟床下浸水1,265棟、被害総額は約290億円にも達しました。

　水害

川内川浸水被害状況図（川内川河川事務所）
さつま町虎居の状況（鹿児島県）さつま町虎居浸水実績図（疋田,2007）
　このような豪雨により、川内川とその支流および米ノ津川で甚大な水害を引き起こしました。「川内川の水害」で述べたように、狭窄部で隔てられた袋谷（山間盆地）に被害が集中しました。
　一番浸水被害の大きかったさつま町虎居の浸水実績図（疋田,2007）を見ると、ここは1972年にも水害が発生しています（図の黄色の部分）が、今回（青線）はそれを上回っています。さつま町のハザードマップ（赤破線）は過小評価です。これは昭和時代の雨量データを元に、100年確率などを用いて算出したのでしょうが、平成になってからは、極端気象が多くなってきましたので、再考が必要でしょう。
　このような大水害に対して、河川激甚災害対策特別緊急事業（いわゆる激特事業）が採択され、5ヶ年計画で河川改修・分水路建設などの事業が行われました。

　土砂災害

菱刈町下手のがけ崩れ（鹿児島県）大口市曽木のがけ崩れ（鹿児島県）
　土砂災害も多発しました。県の統計によれば、道路に影響を与えたがけ崩れが1,141個所、その他が855個所とのことです。被害はやはり雨量の多かったさつま町～菱刈町付近に集中していました。
　土砂災害の多くはシラス崖に関係するもので、寺本ほか（2007）によれば、風化シラスのパイピング崩壊やシラス表土の表層崩壊が多く、浸食によるものもあったようです。
　なお、死者5人のうち、土砂災害によるものが3人、溺死が2人で、人的被害の多くは土砂災害によるものでした。

文献：

  1. 疋田　誠（2007）, 計画規模を超えた川内川の豪雨災害と河川整備に関する研究. 九州地方計画協会・研究支援事業実績報告書, 4pp.
  2. 人と防災未来センター （2006）, 2006（平成18）年7月豪雨による 鹿児島県北部豪雨災害現地調査報告（速報） . DRI調査レポート, No.17, 2006, p.1-4.
  3. 鹿児島県（2007）, 「平成 18年 7月鹿児島県北部豪雨災害」被害の概要と対応の記錄. 鹿児島県, 287pp.
  4. 上江川良治（2012）, 多様な洪水防御と地域合意形成で進めた川内川激特事業. 九州技報, No.50, p..
  5. 神園勝喜（2007）, 被災地報告 [平成]18年7月鹿児島県北部豪雨災害--菱刈町からの報告. Year's防災, No.118, p.14-23.
  6. 河川整備基金助成事業（2008）, 「平成１８年７月豪雨による災害の調査と今後 の河川整備のあり方に関する調査研究」 報告書. 河川環境管理財団, 44pp.
  7. 小林優一・上井基彰・疋田　誠・橋本晴行・高岡広樹（2008）, 平成 18 年鹿児島県北部豪雨における川内川の水位上昇とその考察. 土木学会西部支部研究発表会, Vol.Ⅱ-003, p.172-173.
  8. 南竹知己（2007）, 平成１８年７月鹿児島県北部豪雨災害対応について（情報通信施設の活用状況） . 平成19年度国土交通省国土技術研究会, 一般, No.2-05, p..
  9. 永山 透・関崎賢一・関口辰夫・内川講二・野口高弘・佐藤宗一郎 （2007）, 平成18年7月豪雨災害に関する地理調査部の取り組み . , Vol., No., p.75-87.
  10. 内閣府（2007）, 平成１８年度災害ボランティアセンター対象アンケート調査. , 21pp.
  11. さつま町災害復興誌編集委員会（2009）, 平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害復興記録誌（第1巻）. さつま町, pp.
  12. さつま町災害復興誌編集委員会（2014）, 平成18年7月鹿児島県北部豪雨災害復興記録誌（第2巻）. さつま町, pp.
  13. 自然災害研究協議会西部地区部会（2007）, 自然災害研究協議会西部地区部会報 No.31.
  14. 寺本行芳・下川 悦郎・地頭薗隆（2007）, 2006年7月の鹿児島県北部豪雨による土砂災害. 鹿児島大学農学部演習林研究報告, No.35, p.17-24.
  15. 徳田光弘・友清貴和（2007）, 2006年鹿児島県北部豪雨災害における商店街の被害と復旧状況(災害と防災,農村計画). 建築学会学術講演梗概集（九州）, 2007年8月, p.401-402.
  16. （）, . , Vol., No., p..
  17. （）, . , Vol., No., p..
  18. （）, . , Vol., No., p..
  19. （）, . , Vol., No., p..

参考サイト：

頁トップに戻る／はじめに／水害／土砂災害
初出日：2016/07/29
更新日：2018/10/12