遺跡にみる地震の痕跡
地震考古学
新潟地震地盤災害図(新潟大・深田研,1964) |
その後、地質学・第四紀学の分野でも液状化の研究が盛んになり、地質調査所(現産総研)の寒川旭氏を中心に地震考古学の分野が開拓されていきました。
ところで、本間(1927)は砂岩脈は地震の化石と述べていますが、必ずしもそう言い切れない場合もあります。開いた割れ目に上から砕屑物が充填することもあるでしょう。火砕流の場合には、ガスの吹き抜けパイプも、露頭の断面では似たような見かけをしますから、要注意です。脈の中の物質が下位層起源であること、表土層など上位層を切っていること、パイプ状ではなく板状で割れ目充填型であること、など綿密な観察が必要です。
鹿児島県内の遺跡
地震痕跡のある主な遺跡(:主として縄文時代,:主として平安時代) |
地質図をクリックすると、その地点の地質解説がポップアップします。 |
- 中島ノ下遺跡(指宿市)
- 奥木場遺跡(枕崎市)
- 松崎遺跡・下堂見遺跡・内門堀遺跡(日置市)
- 後藤迫遺跡(鹿屋市)
- 小倉畑遺跡(姶良市)
- 原口岡遺跡(鹿屋市)
- 広牧遺跡(鹿屋市)
下図は池田火山灰層(5,500~5,700年前)を貫く噴砂脈です。噴砂は下位の細粒火山灰砂(火山灰の中で砂質の部分)から噴き出し、上位のピンク火山灰層(P-B火山灰)を引き裂いて止まっており、さらに上位の火山灰に覆われています。寒川(1990)は、恐らくP-B火山灰降下直後の地震の痕跡で、液状化現象を伴ったとしています。
噴砂脈(指宿市,1990) | 砂脈と液状化層(寒川,1990) |
原口岡遺跡模式柱状図(成尾,1996) |
文献:
- 埋文関係救援連絡会議埋蔵文化財研究会(1996), 発掘された地震痕跡. 埋文関係救援連絡会議埋蔵文化財研究会, 826pp.
- 西田彰一ほか(1964), 新潟地震地盤災害図(3000分の1). 新潟大学, 地図6葉.
- 新潟大学社会連携推進機構積雪地域災害研究センター・新潟大学理学部地質科学科(2005), 復刻「新潟地震地盤災害図」(1万分の1). 新潟大学, 図1葉.
- 寒川 旭(2011), 地震の日本史―大地は何を語るのか. 中公新書, 276pp.
- 寒川 旭(1992), 地震考古学―遺跡が語る地震の歴史. 中公新書, 251pp.
- 寒川 旭(1990), 中島ノ下遺跡において認められた地震跡. 中島ノ下遺跡発掘調査報告書, p.110-114.
- 安田 進(1988), 液状化の調査から対策工まで. 鹿島出版会, 243pp.
- 全国地質調査業協会連合会、 関東地質調査業協会 液状化研究会(2012), 絵とき 地震による液状化とその対策. オーム社, 228pp.
- 石原研而(2017), 地盤の液状化: ─発生原理と予測・影響・対策─. 朝倉書店, 120pp.
- レジナルド・エ・デール著,本間不二男譯(1927), 構造地質學講話. 古今書院, 344pp.
- 成尾英仁(2003), 姶良町小倉畑遺跡の液状化跡. 鹿児島県地学会誌, No.87, p.13-27.
- 成尾英仁(2002), 吾平町と金峰町で見いだされたアカホヤ噴火時の液状化跡. 鹿児島県立博物館研究報告, No.21, p.47-58.
- 指宿市教育委員会(1990), 中島ノ下遺跡発掘調査報告書, 指宿市教育委員会, 128pp.
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参考サイト:
- 埋蔵文化財情報データベース(鹿児島県立埋蔵文化財センター)
- 新潟地震地盤災害図(アーバンクボタ No.17, p.32-33.)
初出日:2017/03/10
更新日:2019/01/05