『シラス災害―災害に強い鹿児島をめざして―

岩松 暉


おわりに

 繰り返しになるが、災害は自然と社会との交錯したところに発生する社会現象である。したがって、これに対処するためには総合的に当たらなければならない。近代土木技術を駆使するのは当然であるが、全てハード的に対抗するのは財政的側面だけでなく、自然の摂理といった面からも無理がある。自然の特性をわきまえたきめ細かな総合的防災対策が求められている。そのためにも行政に専門家を養成しておく必要がある。諸外国の例のように、防災担当者は防災関係学科の大学院で修士号取得を義務づけるのも一法であろう。部署を転々と替わらないと昇格しない制度を改め、ラインとは別の専門官として厚遇するのである。東京都のような防災センターも必要である。県立の防災研究所ないし土木技術研究所も欲しい。
 また、防災は行政だけで実現できるものではない。研究者やコンサルタントなど専門家と行政当局が協力して学問的成果を行政施策に生かすのは当然であるが、なかんずく地域住民との連携が重要である。先にも述べたように、自分の命は自分で守るのが基本だからである。しばしば見られるように住民団体と行政が相互不信に基づいていがみ合うなどは愚の骨頂である。お互いに結論が先にあって、己が主張をぶつけ合うだけでは何も生み出さない。DisputeではなくDiscussionが必要である。国分寺市の例のようによりよい協力共同の関係を築いてこそ災害は防止できる。住民参加型の防災施策が求められていると言えよう。


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更新日:1996年10月13日