2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

物理探査


物理探査とは|鹿大キャンパスの地下構造調査|ジオトモグラフィー

◆物理探査とは

 ハンマー・クリノメーター・ルーペは地質屋さんの三種の神器と言われています。地質調査になくてはならない道具として前世紀から使われてきました。大学などでは未だにこれしか使わない人もいますが、実社会では昔から物理探査の手法も大いに使われています。
 物理探査とは、あたかも医者が体の中をX線で調べるように、眼に見えない地下の状況を可視化しようとする地球物理学的地下探査法です。肉眼でものを見るということは可視光線という電磁波を使って見ているのですから、例えば地震波を使う地震探査も波長が違うだけで、電磁波で見ているという点では同じことだと言えましょう。
 使う手段によって、地震探査・重力探査・磁気探査・電気探査・電磁探査・放射能探査などいろいろあります。古くから石油・金属・地熱など資源探査に盛んに使われてきましたが、最近では土木建設方面でも多用されるようになりました。
 わが講座では一番簡便な電気探査を利用して、シラス斜面での降雨の浸透観測などを行っています。

◆鹿大キャンパスの地下構造調査

 鹿児島大学には玉利池という池があります。今では水道から水を供給していますが、昔はきれいな清水が湧き出していたそうです。実は鹿児島大学は旧田上川の扇状地に位置しています(現在大学付近を流れている新川は江戸時代に田上川をドッキングさせて作った運河です)。扇状地を伏流した水がこの池で湧き出したものと思われます。清水が得られて海にも近く、かつ乾燥した住み易いところですから、弥生人が住み着いていました。鹿大キャンパスは文化庁指定の荒田遺跡と言います。わが理学部の地下からも土器がざくざく出ましたし、竹網と粘土で作った井関のような立派な灌漑施設も出土しました。
鹿大植物園の地下断面

 上図は玉利池の海側にある鹿大植物園内で電探をかけた結果です。左がコープガイド側ですが、そこにはっきりと埋もれ谷が認められます(井上・他,1990)。玉利池からあふれ出た水が流れ出していた川の跡でしょう。古甲突川の支流です。

地下レーダーと鹿大情報センター横の地下断面[応用地質(株)提供]

 地下レーダーを使って遺跡の調査をした例です。竪穴住居遺跡が認められます。昨年からこのすぐ横を発掘していますが、実際に遺跡が出土しました。遺跡の有無に関わらず最初から竹べらと刷毛で発掘していたのでは、建物を建てる工期が半年は延び、莫大な発掘費用もかかります。地下レーダーによる事前調査で遺跡が無いことが確かめられたら、最初から重機を使って工事を開始すればよいのです。かなりの節約になると思います。

◆ジオトモグラフィー

斜面における比抵抗トモグラフィー

 CTスキャンで撮られた人体の輪切り断面をご覧になった方は多いと思います。CTとはComputed Tomography(コンピュータ断層撮影法)のことです。コンピュータの発達によりインバージョンなどのデータ処理法が飛躍的に発達したために可能になった手法です。
 医学用のCTにはX線を使いますが、X線では透過力が弱くて地下を見ることはできません。地下を見るジオトモグラフィーには弾性波トモグラフィーと比抵抗トモグラフィーがあります。上図は斜面上と水平・垂直ボーリング孔を用いた比抵抗トモグラフィーです(小島・他,1989)。斜面とほぼ平行な青い部分に水の通りやすい弱線(断層?)があるらしいことがわかります。まだ鮮明な画像とは言いかねますが、やがて地下の内部構造が手に取るように見える時代が来るでしょう。


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更新日:1996年3月27日