岩松 暉 著
第三紀層地すべりなどと表現されると、地すべりは非常に古い地質時代に発生したかのごとく誤解される恐れがあるが、実際に活動したのは第四紀のものがほとんどである。現在見られる地形は、第四紀以降の隆起浸食の過程で形成されたものであり、地すべりはもっとも大規模な浸食現象の一つである。最初に地すべり多発時代を提唱したのは津田(1970)であった。津田は新潟県芋川地すべりにおいて腐植土混じり地すべり粘土の花粉分析を行い、当時の気候は現在より平均気温にして3~4℃低いとした。現在では年代測定が容易に行えるようになったため、左図のようにまとめられている(大西・寺川,1983)。明らかに2回の多発期が認められる。まず更新世初期、山地丘陵の形成(魚沼変動)に伴う初生崩壊・地すべりがあった(後述)。次いで、更新世中~末期の氷河性海面低下による二次・三次移動が多発した時期があり、最後に完新世初期の日本海温暖化に伴う融雪地すべりの発生が顕著に見られた。現在新潟県の地すべりの約8割は崩積土の再活動であるという(青木,1976)。
左図は四国祖谷川における地すべり末端高度と段丘面の関係を示している(古谷,1977)。末端高度が段丘面高度と一致している例が多い。段丘形成期に地すべりが多発したのであろう。
高浜(1991)によれば、後期更新世に初生的な巨大地すべりが発生したという。面積106深度102mで頭部には103mにも及ぶ長大亀裂が見られる。この巨大地すべりの中には二次地すべりが分布し、現在の活地すべりは三次すべりに相当する。