統計地図鹿児島の一極集中再生可能エネルギーUNESCO Global Geoparks

 カルトグラム

 統計地図

時間距離図(東北大空間計画科学研究室HPより)人口増加率(同左HPより)
 九州新幹線ができて、福岡~鹿児島間が日帰り圏になったとか、東京一極集中が続いて地方は疲弊しているとか、実感している人も多いだろうと思います。こうした事柄をGISを用いて視覚的に表現する方法がカルトグラムcartogramです。統計地図の一種ですが、地域の統計データに基づいて地図をゆがめて表現する変形地図のことです。統計量を距離で表す距離カルトグラムdistance cartogramと面積で表す面積カルトグラムarea cartogramとあります。
 右図は福岡を起点とした時間距離図と日本の人口増加率を示しています。新幹線が開通して福岡~鹿児島間が極端に近くなりましたが、大隅半島が取り残されてしまったことを端的に表しています。人口では大都市圏への人口集中が進んでいますが、とくに関東圏が益々大きくなっています。人口の絶対値でも日本人の半数が関東圏に住んでいるとか。

 鹿児島の一極集中

市町村別人口(平成27年度国勢調査による)
鹿児島市599,814長島町10,431
鹿屋市103,608湧水町10,327
枕崎市22,046大崎町13,241
阿久根市21,198東串良町6,530
出水市53,758錦江町7,923
指宿市41,831南大隅町7,542
西之表市15,967肝付町15,664
垂水市15,520中種子町8,135
薩摩川内市96,076南種子町5,745
日置市49,249屋久島町12,913
曽於市36,557大和村1,530
霧島市125,857宇検村1,722
いちき串木野市29,282瀬戸内町9,042
南さつま市35,439龍郷町5,806
志布志市31,479喜界町7,212
奄美市43,156徳之島町11,160
南九州市36,352天城町5,975
伊佐市26,810伊仙町6,362
姶良市75,173和泊町6,783
三島村407知名町6,213
十島村756与論町5,186
さつま町22,400  
50万人以上10万人以上5万人以上2万人以上1万人以上1万人未満
 一極集中は東京だけではありません。九州では福岡一極集中ですし、鹿児島県では県民の1/3が鹿児島市民、鹿児島市へ一極集中しています。それでは人口の面積カルトグラムを作ってみましょう。
 カルトグラムを作成するフリーソフトにはScape Toadのようなものもありますが、ここではFOSS(Free Open Source Software)のQGIS ver.3のプラグインcartogram3を使います。
 まず政府統計の総合窓口e-Statから、国勢調査のデータをダウンロードします。この時、行政界のGISデータのshapeファイル付きでダウンロードします。e-StatのshapeファイルをQGIS 3の画面にドラグアンドドロップすれば、行政界が表示されます。次にカルトグラムを作成するためにはcartogram3というプラグインが必要です。「プラグイン」→「プラグインの管理とインストール」からcartogram3をインストールします。次いでこれを起動すると、新しいウィンドウがポップアップします。「Field(s)」で表示したいフィールド(ここでは人口)を選び、さらに「max. number of iterations:」と「max. average error:」を選びますが、これはデフォルトのままで良いでしょう。せっかちな人はiterationを小さくしてください。「OK」を押すと、しばらくしたら完成図が表示されます。鹿児島市とその周辺の肥大化が一目瞭然です。
 さまざまなデータベースを用いて、この「Field(s)」のところに、選択入力すれば、容易にさまざまな事項のカルトグラムを作ることができます。
8,000ha以上6,000ha以上4,000ha以上2,000ha以上2,000ha未満
2018年耕地面積カルトグラム(e-Stat)
 例えば、耕地面積を「Field(s)」に入れると右図のようになります。鹿児島市がやせ細り、鹿屋市・南九州市・曽於市が肥大化します。また、種子島・喜界島・沖永良部島など平坦な島々(比較的平坦地の多い徳之島も)が健闘しています。

 再生可能エネルギー

地熱発電供給量(佐藤,2014)風力発電ポテンシャル(GWh)(佐藤,2014)
 カルトグラムを用いた佐藤(2014)の研究を紹介しましょう。図の左は地熱発電供給量の現状を示しています。九州と東北で開発が進んでいることが分かります。北海道は火山がたくさんあるのに、地熱発電がほとんど行われていないことも一目瞭然です。右は風速 5.5m/s以上の風力発電ポテンシャルを示しています。鹿児島はかなり有望そうです。

 UNESCO Global Geoparks

Cartogram of the UNESCO Global Geoparks
 一応、カルトグラムにしてみましたが、国数に比してジオパークのある国が少ないためか、あまり変形しませんでした。
 ジオパークはヨーロッパと中国を中心に発展してきました。最近、各国に広まりつつありますが、そうした歴史的経緯もあってまだ遍在しています。日本はその次に名乗り出ましたので、現在9個所、結構健闘しています。
Austria3*Belgium1Brazil3Canada3
Chile1China39Croatia2Cyprus1
Czechia1Denmark1Ecuador1Finland1
France7Germany6*Greece5Hungary2*
Iceland2Indonesia4Iran1Ireland3*
Italy10Japan9Malaysia1Mexico2
Morocco1Netherlands1Norway3Peru1
Poland1*Portugal4Republic of Korea3Romania1
Slovakia1*Slovenia2*Spain13Tanzania1
Thailand1Turkey1UK of Great Britain7*Uruguay1
Viet Nam2*印は2ヶ国に跨がるものをダブルカウントしています。

* List of transnational UNESCO Global Geoparks

Austria & Slovenia
 •Karawanken / Karavanke UGGp
Germany & Poland
 •Muskauer Faltenbogen / Łuk Mużakowa UGGp
Hungary & Slovakia
 •Novohrad-Nógrád UGGp
Ireland & United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
 •Marble Arch Caves UGGp


文献:
  1. 井上 亮(2005), カルトグラムの作成手法に関する研究 -GISを用いた統計データの新たな表現に向けて-. 東北大学学位論文, 144pp.
  2. 井上 亮・清水英範(2005), 連続エリアカルトグラム作成の新手法―GIS時代の統計データの視覚化手法. 土木学会論文集, Vol.2005, No.779, p.147-156.
  3. 井上 亮・清水英範(), 三角網分割による連続エリアカルトグラムの作成手法. 土木学会論文集, Vol., No., 4pp.
  4. 井上 亮・清水英範(2004), ディスタンスカルトグラム作成ツールの開発 . 土木学会第59回年次学術講演会, Vol., No.4-088, p.176.
  5. 佐藤建吉(2014), 都道府県風力統計データのカルトグラムによる表示. 風力エネルギー利用シンポジウム, Vol.36, No., p.448-451.
  6. 清水英範・井上 亮(2008), カルトグラムの作成手法と応用可能性. 土木計画学研究・論文集, Vol.25, No.1, p.1-15.
  7. 清水英範・井上 亮(2004), 時間地図作成問題の汎用解法. 土木学会論文集, Vol., No.765/Ⅳ-64, p.105-114.
  8. 住谷優友・大澤義明(2005), 線形変換による時間地図作成方法 . GIS-理論と応用, Vol.13, No.2, p.1-10.
  9. (), . , Vol., No., p..
  10. (), . , Vol., No., p..
  11. (), . , Vol., No., p..
  12. (), . , Vol., No., p..
参考サイト:


初出日:2019/10/06
更新日:2019/10/16