協定都市ストラスブールの地質

ヨーロッパ地質図(OneGeologyによる)
フランス地質図(BRGMによる)
 鹿児島市の友好都市には、姉妹・友好・兄弟・協定都市といろいろあります。フランスのストラスブールStrasbourg市とは2019年11月25日パートナーシップ協定を締結しています。路面電車を活用したまちづくりなどが共通しているそうです。
 ストラスブールはフランス北東部ライン川の左岸に位置し、アルザス地方の中心都市です。対岸にはドイツのケールKehlがあります。古くはローマ帝国の版図にあり、ゲルマニアと対置しました。以来、このアルザス(エルザス)=ロレーヌ(ロートリンゲン)地方は、独仏が取ったり取られたり、争いの場でした。そうした経緯があるので、現在では、欧州評議会や欧州人権裁判所、さらには欧州議会本会議場を擁し、ベルギーのブリュッセルと並んでEU統合の象徴的な都市の一つとなっています。
ライン地溝の形成(Stober,2013)
 紛争の元になったのは、単にライン川を距てた国境の町というだけではありません。鉄鉱石と石炭を産出する鉱産地帯だからという地質的な理由がありました。石油や地熱資源もあるようです。東のドイツ側にはSchwarzwald、西のフランス側にはヴォージュVosges山脈があり、ここは有名なライン地溝帯Rhine Graben(正確にはUpper Rhine Graben)の真ん中なのです。中生代後期から新生代にかけて、アフリカプレートとユーラシアプレートとの衝突によりアルプス造山運動が起きます。ライン地溝帯はこれと連動して形成されました。漸新世にはアルカリ性マグマ活動もありました。両側の片麻岩や花崗岩などからなる山地が激しく隆起し、その砕屑物が地溝内に厚く堆積します。ライン川も堆積物を供給し、厚い新第三紀層や第四紀層もたまりました。堆積物の厚さは数千mにも及びます。このように先カンブリア紀から第四紀まで、時代の異なる多種多様な岩石や地層が分布するため、ワインにとって絶好のテロワール<注>を形成しました。ワイン産地でもあるのです。
 一方、わが鹿児島も鹿児島地溝に位置しています。同じ地溝帯の都市という意味でも仲間なのです。
<注> テロワールTerroirはフランス語ですが、ラテン語のterra(地球・土地)が語源です。土壌とイコールでもなく、ブドウや茶などの生育地の地理、地勢、気候による特徴、つまり「生育環境」を指す語だそうで、日本では、そのままカナ書きで使われます。

文献
  1. Stober, I.(2013), Geothermal fluid and reservoir properties in the upper rhine Graben, Europe. Sustainable Earth Sciences, SES 2013: Technologies for Sustainable Use of the Deep Sub-Surface, 2013会議録, p..
  2. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



更新日:2020/12/22
更新日:2021/02/05