ハブハブ類の分布琉球列島の地史

 ハブの分布と琉球列島の地史

 ハブ

ハブ(沖縄県ホームページより引用)
 ハブは、クサリヘビ科ハブ属に分類されるヘビです。わが国では琉球列島に、ハブ(ホンハブ)・ヒメハブ・サキシマハブ・タイワンハブ・トカラハブなどが棲息しています。いずれも毒蛇ですが、ヒメハブやトカラハブは毒性が弱く、あまり被害が出ていません。サキシマハブは人為的に持ち込まれたとされ、毒性はハブよりやや弱いそうです。タイワンハブも沖縄本島に人為的に持ち込まれたもので、ハブより毒性が強いと言われています。つまり、毒性からすれば、
 タイワンハブ>ハブ(ホンハブ)>サキシマハブ>ヒメハブ>トカラハブ
の順になります。
 ハブ毒は、マムシ同様出血毒で、細胞を破壊して強い疼痛を与えます。毒素そのものの強さはマムシよりも弱いのですが、注入量が多いため、深刻な症状になります。症状としては、痛み、患部の壊死、腫れ、嘔吐、腹痛、下痢、血圧低下、意識障害などが現れます。場合によっては死に到ることもあります。なるべく早く医療機関に行き、血清を打ってもらうことが肝心です。

 ハブ類の分布

凡 例


  ホンハブ

  サキシマハブ

  ヒメハブ・トカラハブ

  ハブいない


 マーカーをクリックすると、島の名前と棲息するハブの名前がポップアップします。

 右図はハブ類の分布域を示しています。昔は一つおきの島々にいるなどと言われましたが、必ずしもそうではありません。しかし、遍在していることは事実です。この分布を説明するのに、しばしば海水準変動説が用いられます。すなわち、「氷期、大陸とつながっていたときに南方からハブが進出してきたが、間氷期に標高の低いところは水没し、そこにいた陸棲動物は死滅した。その後、若干海退に転じて、標高の低い山も島として現出したが、ハブは泳げないので、そうした低標高の島々にはハブはいない」と言うものです。しかし、例外もたくさんあり、この説だけでは説明できません。琉球石灰岩のアルカリ性土壌をハブは好まないとの説もあるようです。もちろん、海水準変動だけでなく、地殻変動も考慮する必要があります。

 琉球列島の地史

更新世初期における琉球列島の古地理(東北大HPより)
 琉球列島の地質についてはさまざまな研究がなされています。ハブの分布と関わりの深い古地理についても、木崎・大城(1977)・氏家(1990)・木村(1996)など、多くの説が提唱されています。ここでは、大塚(2002)の陸棲脊椎動物の研究に基づいた説を紹介しましょう。次のように、鮮新世後期(1.9Ma)以降少なくとも3回の陸繋期(大陸とつながっていた時期)があったとしています。
 太田(2002)は、爬虫類・両生類の種・亜種組成についてクラスター分析を行った結果、両者とも同じ傾向を示し、トカラ列島北部以北の北琉球グループ、トカラ諸島南部・奄美諸島・沖縄諸島の中琉球グループ、八重山諸島・宮古諸島の南琉球グループと3大別されるとしています。北琉球グループは九州に近縁で、南琉球グループは台湾・中国大陸と極めて高い類似性を示すそうです。ハブの分子系統学的解析によれば、中琉球グループのハブ・トカラハブと南琉球グループのサキシマハブ・タイワンハブとではクレードclade(単系統群)が姉妹群関係になく、前者は、中国の内陸部にしか見られないジェルドンハブと最も近縁だそうです。つまり、ハブ・トカラハブ・ジェルドンハブの共通祖先が陸橋を伝って中琉球に到達したが、その時にはトカラギャップがあって北琉球までは行けなかった。その後、慶良間ギャップが成立した後、サキシマハブ・タイワンハブの共通祖先が南琉球に侵入して来た。それと前後して、南琉球・台湾・大陸東岸からハブ・トカラハブ・ジェルドンハブの系統が消滅した、と考えられるそうです。

文献
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参考サイト:



初出日:2018/06/15
更新日:2019/05/23