大淀川の河川争奪

大淀川水系(青色)と安楽川水系(水色)
(背景はシームレス地質図:クリックで地質解説表示)
高岡口付近地質図(末吉図幅)
(凡例は右下の[i]マーク)
 宮崎を流れる大河「大淀川」は九州で4番目に大きい一級河川ですが、その源流は鹿児島県曽於市にあります。中岳に端を発し、南東に流れた後、高岡口でUターン、「の」の字を描いて都城方面に流れ、最終的には宮崎市に至ります。なお、中岳ダム上流の林道折れ曲がり地点に案内標識があり、そこから約300mの地点に源流を示す石柱が建っています。
 曽於市・串間市など志布志湾岸の河川はほとんど志布志湾に注いでいますし、基盤の四万十層群の示す谷筋も志布志湾を向いています。なぜ大淀川だけUターンして北流したのでしょうか。都城盆地には都城層という入戸火砕流噴出以前の湖成層ないし河成層が分布していますが、その上面標高は南方に傾斜しています(木野・太田,1977)。その頃大淀川は志布志湾に注いでいたのでしょう。しかし、約3万年前入戸火砕流が堆積し、高岡口付近で流路を遮ったため、北流せざるを得なくなったと考えられています。齋藤ほか(1994)は、高岡口周辺の入戸火砕流堆積物上に段丘があることなどから、現安楽川上流の鍋谷・御所谷は現大淀川最上部と合流して末吉方向に流下していたが、その後の河川争奪により安楽川になったとしました。安楽川は広い集水領域を獲得した結果下刻が進み、高岡口では、大淀川とかなりの標高差がつきました。

建設中の中岳ダム(1998/10/30)完成後の中岳ダム
余談:
 中岳ダムは農水省の建設した農業用水利ダムです。四万十層群を基盤としたロックフィルダムでしたが、四万十層群が深部まで風化していて建設に苦労しました。普通、頁岩は真っ黒なのですが、ここでは写真のように、どこまで深く掘っても茶褐色でした。なお、高岡口に頭首工(とうしゅこう)を設け、安楽川の水も揚水して使っています。
余談2:
 中岳ダムにはダムについての解説放送があります。標準語バージョンと鹿児島弁バージョンのボタンがあり、スピーカーから大音量で流れます。鹿児島弁バージョンは秀逸なので、一度お試しあれ。

文献:
  1. 木野義人・太田良平(1977),地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「都城」. 地質調査所, 45pp.
  2. 町田洋他編(2001), 『日本の地形7 九州・南西諸島』. 東大出版会, 355pp.
  3. 斎藤 眞・佐藤喜男・横山勝三(1994),地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「末吉」. 地質調査所, 111pp.
  4. 米谷静二(1976), 九州南部における河川争奪とその関連地形,鹿児島大学法文学部紀要,第22巻,第2号.
  5. 横山勝三(2003), シラス学. 古今書院, 196pp.
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参考サイト:



初出日:2016/05/03
更新日:2020/11/28