鹿児島の温泉と地質
地域地下水
故露木利貞先生 | 鹿児島市内温泉の蒸発残量分布 | 鹿児島市内温泉の構造概念図 |
鹿児島市内の温泉を例にとってみましょう。基盤の四万十層群に貫入した岩脈や断層などの割れ目が地下深部の熱水をもたらします。これを直接深部ボーリングで採取すれば、高温の単純泉が得られます。熱水が四万十層群を不整合に覆う花倉層などの堆積岩中に二次貯留されると、温度が多少下がり、塩分の多い温泉となります。残留塩分を調べると、海岸部では5g/kg以上、沖積低地で1~5g/kg、城山台地では1g/kg以下となっています。この塩分は花倉層中の化石海水とする説と、現在の海水が浸み込んだのではないかとする説があるようです。
霧島はどうでしょうか。霧島には地熱発電所があり、地下1,000~1,500mから熱水や蒸気を得ています。このデータを見ると、深部熱水はアルカリ性食塩を主とする塩化物泉のようです。これらが地表に出てくる際、周辺の岩石と反応して、さまざまな温泉となります。一番標高の高いえびの高原では塩酸酸性泉ですが、そこから標高500~600mくらいまでは噴気を伴う湧出温度80℃以上の高温の硫酸酸性泉・硫化水素泉となります。それらが新川渓谷に沿って流下するにつれ、土類炭酸泉・炭酸鉄泉・炭酸水素泉から単純泉と規則的に変化します。日当山のような低地では温泉は国分層群に胚胎します。沖積砂礫層や下位の安山岩中に存在するものもあります。泉質は中性~弱アルカリ性の炭酸水素泉(いわゆる重曹泉)ないし単純泉で、泉温は50℃前後です。海岸部では海塩の影響を受けるためか塩化物泉(食塩泉)もあります。
文献:
- 露木利貞(1975), 鹿児島市内温泉の賦存状態-地域地下水の研究(1)-. 鹿大理学部紀要(地学・生物学), No.8, p.63-77.
- 露木利貞(1976), トリチウム含有量よりみた人吉・霧島・指宿の諸温泉. 鹿大理学部紀要(地学・生物学), No.9 p.75-86.
- 露木利貞(1992), 九州における温泉と地質, 露木利貞教授退官記念会, 105pp.
- 学習研究社(2005), 日本天才列伝―科学立国ニッポンの立役者―, 学習研究社, 188pp.(露木先生の項は「郷土に貢献した科学者・開発者たち」p.167)
鹿児島県の公共温泉
凡 例(大分類)
<掲示用泉質名による>
単純泉
•温泉マークをクリックすると名称が表示されます。
•地質図は産総研シームレス地質図ver.2。地質図をクリックすると、その地点の地質解説がポップアップします。 余談:ピクトグラム 温泉マークは日本人に馴染んでおり、JIS規格になっています。しかし、外国人に分かりにくいとして、上のISOマークに統一しようとの動きがあります。アンケート調査ではJIS派のほうが多いようですが、皆さんはどちら? |
<関連サイト>
初出日:2015/04/11
更新日:2020/11/26