日本三大砂丘河畔砂丘

 吹上浜砂丘

吹上浜砂丘の地形分類(森脇,2001)産総研シームレス地質図ver.2
吹上浜から見た吹上浜砂丘吹上浜砂丘の地質断面図(角田,1973)
 いちき串木野市から南さつま市に至る全長30kmの吹上浜砂丘(吹上砂丘)は日本三大砂丘に数えられています。砂丘は北部で狭く、南部ほど広く発達しています。江口浜ではシラス台地が直接海に面していますし、中部の小野川では縄文海進時の泥炭層が浸食されて海岸に露出しています。南部では自然堤防上に縄文後期の遺跡があります。北からの沿岸流によって、北部では浸食が進み、南部では堆積の場になったのでしょう。
 砂丘砂層中にはクロスナ層と呼ばれる腐食層が介在し、これによって新旧の砂丘に区分することができます。旧期砂丘は縄文海進最盛期の縄文前期~中期に形成されたと考えられています。新期砂丘のうち内陸側の最古のものは弥生時代から平安時代にかけて形成されたのだそうで、もっとも大規模です。

余談:
 吹上浜の東南部に位置する南さつま市金峰町は早場米地帯として有名です。しかし、江戸時代には砂丘からの飛砂で農民達は苦労しました。そこで、宮内善左衛門が私財300貫を投じて松を植え、飛砂防止林としました。その徳を称え、大正14年(1925)東郷平八郎元帥の揮毫になる頌徳碑「沙防之碑」が建立されました(地質図の赤丸の位置)。
余談の余談:
 Saboはその分野では英語でそのまま使われているそうです。砂防工学は明治以来農学部の林学科で講じられています。このような「飛砂防止林」が原点だからでしょうか。薩長閥が明治政府を牛耳っていましたから、「砂防」という言葉の語源は、もしかしたらここ吹上浜にあるのかも知れません。定説では、明治4年(1871)の民部省通達で使った「土砂溢漏防止」という言葉に由来すると言われていますが、それならば農業土木工学科や工学部の土木工学科にあるべきです。どなたかご存知の方は教えていただけませんか。

文献:

  1. 遠藤邦彦・角田清美(1973),鹿児島県吹上浜砂丘地帯の縄文海進堆積物の14C年代. 地球科学, Vol.27, No.4, p.152-153.
  2. 福本 紘(1988),鹿児島県吹上浜における海浜地形の地域的特性. 梅花短期大学研究紀要, Vol., No.36, p.223-316.
  3. 井関弘太郎(1975),砂丘形成期分類のためのインデックス. 第四紀研究, V
  4. 角田清美(1973),鹿児島県・吹上浜砂丘の地形について. 駒沢地理, No.9, p.117-123.
  5. 角田清美(1975),日本海および東シナ海沿岸の主な海岸砂丘地帯の形成期と固定期について . 第四紀研究, Vol.14, No.4, p.251-276.
  6. 春日賢一(1911),薩摩國吹上濱砂丘につきて. 地学雑誌, Vol.5, No.1, p.32-33.
  7. 小牧実繁(1934),本邦海岸砂丘固定作業史の断片(第一報). 地理論叢, Vol., No.3, p.113-208.
  8. 栗島明康(2014),砂防」の語について-行政用語としての沿革. 砂防学会誌, Vol.67, No.1, p.35-40.
  9. 町田洋他編(2001), 『日本の地形7 九州・南西諸島』. 東大出版会, 355pp.
  10. 森脇 広・永迫俊郎(2002),吹上浜砂丘·万之瀬川低地における完新世後半の地形発達と遺跡立地. 日本地理学会発表要旨集, Vol.2002a
  11. 森脇 広・永迫俊郎(2002),吹上浜砂丘・万之瀬川低地における完新世後半の地形発達と遺跡立地. 日本地理学会発表要旨集, Vol., No., p.133.
  12. 成瀬敏郎(1969):鹿児島県吹上浜砂丘の地形(1).地理科学, 12, 48~57.
  13. 西隆一郎・宇多高明・佐藤道郎・西原幸男・井之上由人(1998),吹上浜海岸における汀線と海岸植生および砂丘林境界の長期変動特性. 海岸工学論文集, Vol.45, p.661-665.
  14. 西隆一郎・水川 隆太(2001),砂丘風食と飛砂に関する基礎的研究. 海岸工学論文集, Vol.48, p.591-595. ol.14, No.2, p.183-188.
  15. 西隆一郎(),吹上浜海岸における汀線と海岸植生および砂丘林境界の長期変動特性. 鹿大水産学部海岸環境工学研究室ホームページ.
  16. 竹部嘉一・成瀬敏郎(1998),近世以降のシラス台地開発に伴う鹿児島県の海岸砂丘形成 . 第四紀研究, Vol.37, No.2, p.107-115.
  17. (),. , Vol., No., p..
  18. (),. , Vol., No., p..

 日本三大砂丘

鳥取砂丘
中田島砂丘(遠州灘砂丘)

 河畔砂丘

 砂丘は海岸にあるとばかり思っている方が多いようですが、河床に乾燥した砂床があり、飛砂を起こす風が吹くような場所ではどこでも見られます。氾濫原上に形成されるものと、自然堤防を飛砂が覆うものとあるようです。日本では木曽川、最上川、利根川にあります。しかし、細骨材として採取されたり、人工改変されたりして残っているところは僅かです。旧利根川である会の川の砂が、平安~室町時代の寒冷期に強い季節風(赤城おろし)によって吹き上げられ、東側ないし南側の自然堤防を被覆した会いの川砂丘が有名です。その一部で最大の志多見(しだみ)砂丘(埼玉県加須(かぞ)市志多見および馬内(もうち)地内:地質図の赤丸)が埼玉県指定天然記念物「中川低地の河畔砂丘群」として指定されています。

文献:

  1. 赤木三郎(1991), 砂丘のひみつ. 青木書店, 170pp.
  2. 堀口萬吉(2012), 埼玉の自然をたずねて(改訂版). 築地書館, 234pp.
  3. 多田文男(1947), 利根川中流部の河畔砂丘. 地理学評論, Vol.21, No.1, p.1-5.

参考サイト:



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初出日:2016/1/14
更新日:2021/06/11