シラスの浸食地形と中世山城

 シラスは大変雨滴の浸食に弱く、すぐガリーができます。シラス崖が鉛直に近くても安定しているのは、雨滴への暴露面積が最小になるからと言われています。しかし、普通の砂ならば安息角(30度前後)で安定するはずです。直立する原因については、弱いけれどやはり溶結しているからだという説と、火山ガラスがかみ合ってインターロッキングしているからだという説があり、はっきり分かりません。こうした切り立った崖は中世の山城には打ってつけでした。中世は山城に立て篭もり、高い位置を利用して矢を射かけたり、大石を落としたり、煮えたぎった油を注いだりする戦法だったからです。
 典型例が国指定史跡知覧城です。自然のガリ地形をそのまま空堀として利用したり、拡幅したりして防御としました。このような様式を群郭式城郭と言います。鹿児島・宮崎両県にしか見られないので、南九州型とも呼ばれているそうです。
知覧城全景(知覧町教育委員会,1994)
知覧城の縄張り(知覧町教育委員会,1994)
知覧城本丸の断面図(横田,1994)鹿児島県内の主な城郭(上田,2014)
志布志城遠望(シラス台地)志布志城縄張り志布志城空堀志布志城空堀

文献:

  1. 知覧町教育委員会(1992), 知覧城跡, 知覧町教育委員会, pp.
  2. 知覧町教育委員会(1994), 知覧城跡(二), 知覧町教育委員会, 93pp.
  3. 知覧町教育委員会(1996), 知覧城跡(保存管理計画策定報告書), 知覧町教育委員会, 72pp.
  4. 知覧町教育委員会(2006), 知覧城跡(三), 知覧町教育委員会, 236pp.
  5. 上田 耕(2014), 南九州の城郭―群郭式の曲輪配置と近世麓集落の連続性―. 萩原三雄・中井 均編「中世城館の考古学」, 高志書院, p.345-360.
  6. 横田修一郎(1994), 知覧城の地形・地質条件. 知覧城跡(二), p.71-82.


初出日:2016/06/30
更新日:2019/01/08