鹿児島の恐竜化石

 甑島で発見

甑島で発見された恐竜化石(2009年於川内まごころ文学館)
シームレス地質図(産総研)
クリックすると地質します。
 恐竜が生きていた中生代、日本列島は付加体でしたから、陸成層はほとんどなく、あまり恐竜化石の発見は期待できないだろうと、長い間考えられてきました。しかし、一部には陸棚堆積物や河川成堆積物もあります。ジュラ紀手取層群(福井竜)、白亜紀篠山層群(丹波竜)など各地で恐竜化石の発見が続いています。九州でも熊本や長崎で発見されています。鹿児島では、甑島と獅子島に白亜紀の姫浦層群が分布しています。獅子島で首長竜が発見されていますから、この姫浦層群が有力だと考えられてきました。
 2011年甑島の地質調査をしていた小松俊文熊本大学准教授が、下甑島鹿島でついに歯の化石を発見しました。それを国立科学博物館の真鍋 真研究主幹が鑑定したところ、角竜恐竜のケラトプス類と判明しました。地質図で黄緑色に塗られているところが白亜紀層です。露頭の位置も分かっていますが、盗掘防止のため伏せておきます。
速報: 2018年草食恐竜ハドサウルス類の大腿骨化石が発見されました。なお、2012年にも竜脚類が、2016年にはハドサウルス類の大腿骨化石が見つかっています。

蛇足:


 恐竜化石の復元像

国立科学博物館所蔵化石(2009年於川内)県立博物館所蔵化石(旧復元像)県立博物館所蔵化石(現復元像)
 左の写真は国立科学博物館所蔵アロサウルスの化石です。1964年アメリカ移民で成功した小川勇吉氏の寄贈です。当時岩松は大学院生でしたが、国内初の本物の恐竜全身骨格標本として有名になりましたので、早速見に行ったものです。尻尾を引きずっています。中の写真は鹿児島県立博物館分館(宝山ホール)にある肉食恐竜アロサウルスと草食恐竜カンプトサウルスの化石です。同じく小川氏の寄贈で、写真は寄贈当時のままです。右側の写真は現在展示されている同じ化石です。尻尾を引きずっていません。どうして復元像をわざわざ変更したのでしょうか。
 先ず第一に尻尾を引きずった痕跡の化石が見つからないことです。また、昔は、爬虫類の仲間だから当然変温動物で、動きが鈍いのだろうと漠然と考えられていました。ところが、鳥類の恐竜起源説が一般的に受け入れられるようになり、恐竜も恒温動物で活発に活動していたのではないか、と考えられるようになりました。そこで、コンピュータシミュレーションをしてみたところ、重い頭と長い尻尾をバランスさせながら歩いていたらしいということになったのです。
余談:
 宝山ホールにある恐竜化石の背景は、絵本『からすたろう』(偕成社1979刊)で有名な八島太郎画伯(本名岩松 淳)の絵です。八島氏が根占出身だったため、絵のお弟子さんだった小川氏を鹿児島県に紹介してくださったのです。小川氏は第二次大戦中ワイオミング州の日系人強制収容所に入れられていたときに、周辺の地層から化石を採集するようになったとのことです。
後日譚:
 2016年7月29日、国立科学博物館から『地球館ガイドブック』が刊行され、それを入手できました。その中に右のようなコラムがありました。尻尾を引きずったアロサウルスは長い間お蔵入りしていましたが、ついに最新学説に則った復元像に変更されたようです。

文献:
  1. 国立科学博物館(2016), 地球館ガイドブック 地球生命史と人類―自然との共存をめざして―. 国立科学博物館, 96pp.
  2. 小松俊文・三宅優佳・真鍋 真・平山 廉・籔本美孝・對比地孝亘(2014), 甑島列島に分布する上部白亜系姫浦層群の層序と化石および堆積環境. 地質学雑誌, Vol.120, No.Supplement, p.S19-S39.
  3. 真鍋 真・對比地孝亘・小松俊文・前川 匠・三宅優佳・大倉正敏・城山 勝・平山 廉・藪本美孝(2014), 鹿児島県薩摩川内市下甑島の姫浦層群(白亜紀後期)から産出した恐竜化石について. 日本古生物学会年会2014年年会講演予稿集, P06, p.44.
  4. Miyake, Y., Aramaki, M., Komatsu, T., Tsuihiji, T., Manabe, M. & Hirayama, R.(2011), Depositional facies containing non-marine vertebrate fossils in the Upper Cretaceous Himenoura Group on the Koshikijima Islands, Kagoshima, Japan. Jour. Sediment. Soc. Jap., Vol.70, No.2, p.62.
  5. 對比地孝亘・小松俊文(2014), 鹿児島県下甑島上部白亜系産出の恐竜化石. 日本地質学会第121年学術大会 セッションID: S1-O-1.
  6. 利光誠一・尾崎正紀・川辺禎久・川上俊介・駒沢正夫・山崎俊嗣(2004), 20万分の1地質図幅「甑島及び黒島」. 産総研地質調査総合センター, 8pp.
  7. Tsuihiji, T., Komatsu, T., Manabe, M., Miyake, Y., Aramaki, M. & Sekiguchi, H.(2013), Theropod Tooth from the Upper Cretaceous Himenoura Group in the Koshikijima Islands, Southwestern Japan. Paleontlogical Research, Vol.17, No.1, p.39-16.
  8. 桑水流 淳二(2020), 「恐竜博 2019」と甑島の恐竜化石. 鹿児島県地学会誌, Vol., No.114, p.9-16.
  9. (), . , Vol., No., p..
  10. (), . , Vol., No., p..
  11. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



初出日:2016/08/24
更新日:2020/11/27