横井処分場

横井処分場1工区図面に2工区計画図を重ねたもの(鹿児島市環境局)国土地理院空中写真(北西側が埋立完了した1工区、南東側が使用中の2工区)
 ゴミ処分場は都市にとってなくてはならない施設ですが、立地地域の住民にとっては迷惑施設でもあります。そのため、なるべく人里から離れた山間部に造られることが多いようです。鹿児島市の横井埋立処分場も当時の市域の境界部に造られました(現在では松元町も合併しましたから、市のど真ん中ですが)。しかし、ここは新川の支流西之谷川の源流部です。源流部は堆積学的に言えば浸食域ですし、水源涵養域でもあります。土砂崩れや水質汚染の防止策を採ることが求められます。
 横井埋立処分場は一極集中する人口によって、細田口処分場が僅か10年で満杯になったため、1986年供用開始になりました。埋立容量は1工区2,220,000m3、2工区2,788,000m3、計5,008,0003で30年持つと言われていました。しかし、1工区は既に満杯になり、現在2工区を使っています。1工区の跡地はメガソーラーになるとの噂があります。
 さて、どのような工法が採られているのでしょうか。何より問題になるのは処分場と外界との遮断です。汚水が漏れ出しては困るからです。1.5mmの遮水ゴムシート2枚を3枚の厚さ1cmのフェルトで挟み込んだ保護シートを底面に張り巡らします。写真のグリーンのシートがそれです。さらにその上にベントナイトなどの粘土を数10cm盛って、シートの破損防止と汚染物質の吸着を兼ねる仕組みにするのが一般です。処分場内ではどうするのでしょうか。下の工事中の写真で明瞭にわかります。ゴミから染み出す汚水は集水井によって集められ濾過されます。ゴミから出てくるメタンガスなどは所々建てられたパイプにより曝気されます。こうした装置が完成すると、いよいよ供用開始です。ゴミだけを埋め立てると、1工区左の写真のように、腐敗物が悪臭を放ちますし、カラスが群れたりします。そこで、ゴミと土壌を交互に重ね盛りするサンドイッチ工法が採られます。
 ところで、東京都は夢の島や中央埠頭など海岸部の埋立にゴミを使っています。堆積学的には沿岸部は堆積の場ですから、理にかなっていますが、海洋汚染が起きないようにする細心の配慮が必要です。造成終了後の利用にも問題があります。街区にしたりすると、地震時の液状化などが心配です。夢の島は公園や運動場に、若洲はゴルフ場として使われています。よく見ると、夢の島公園の芝生がところどころ茶色に変色しているところがありますが、メタンガスが出てきたところです。若洲ゴルフ場の曝気パイプからはメタンガスが火を噴いているのがわかります。
1工区の光景(左:カラスの群れ集うゴミ層、中:それを土壌で覆うサンドイッチ工法、右:供用終了)
2工区断面図5層からなる保護シート保護シートを巻いたパイプ
工事中の2工区(2001年1月撮影)

<参考> 細田口処分場閉鎖後の状況  (横井処分場は最新型なので、こんなことはないのでしょう)

埋立面上の曝気塔
(当初はメタンが燃えていました)
排水口全景七色の水左は田圃の水、右は排水口からの水

文献:

  1. 樋口壯太郎(1996), 最終処分場の計画と建設―構想から許可取得まで―. 日報, 262pp.
  2. 石田高清(1991), 鹿児島市横井埋立処分場浸出液処理施設. 都市清掃. Vol.44, No.180, p.81-84.
  3. 最終処分場技術システム研究協会 (2012), クローズドシステム処分場技術ハンドブック. オーム社, 160pp.
  4. 田中信寿(2000), 環境安全な廃棄物埋立処分場の建設と管理. 技報堂出版, 242pp.
  5. (), . . Vol. No., p..
参考サイト


初出日:2015/09/17
更新日:2020/12/01