喜界島地下ダム

事業概要図(九州農政局)産総研シームレス地質図(赤線が止水壁)(クリックで地質解説表示)
 喜界島は新第三紀島尻層群を基盤とし、主として琉球石灰岩からなる島です。北西方向に傾動する地塊で、標高214mが最高点ですから、大きな河川がありません。島民は多孔質の琉球石灰岩に胚胎する地下水を使用していました。これでは不安定で干ばつ時に困りますし、大規模な農業は営めません。そこで農水省では国営かんがい排水事業として地下ダムを建設することにしました。1992年着工して2003年に完成しました。
 地下ダムとは聞き慣れない言葉ですが、どのようなものなのでしょうか。右図はその概念図です(九州農政局による)。前述のように北西に傾動していますから、琉球石灰岩に溜まった水は北西の海岸に流出してしまいます。それで、下流側の地中に止水壁を設けて、水を溜めようというわけです。地上のダムと違って、水没地がない、決壊の恐れがない、蒸発ロスがないといった長所がありますが、揚水するためのエネルギーが必要です。また、ダムの上は農地ですから、農薬や肥料を撒きすぎると、硝酸態窒素汚染を招く恐れがあります。
 地下ダムは沖縄の宮古島で大規模に造成されていますが、喜界島のような地下トンネルはありません。喜界島ではオオゴマダラの生息地があった部分は、地表を掘削することができなかったため、トンネルを掘り、トンネル内から止水壁の工事を行ったのです。
文献:
  1. 穴見春樹・中川原 茂・園田和記(1998), 喜界島における地下ダムの施工. ダム日本, No.650, p.5-21.
  2. 九州農政局喜界農業水利事業所(1997), 喜界島の地下ダム
  3. 九州農政局喜界農業水利事業所(1996), 喜界土地改良事業概要書一喜界島の地下ダムー
  4. 内藤禎二・井関英生(1992), 喜界島における地下ダムの試験施工一バケット式掘削機を用いた連続地中壁工法-,土と基礎,vol.40.No.12,47-51.
  5. 漆原和子(2012), 法政大学文学部地理学科2012年度現地研究喜界島現地研究報告書. 43pp.
  6. (), . . Vol. No., p..
  7. (), . . Vol. No., p..
  8. (), . . Vol. No., p..
参考サイト


初出日:2015/09/17
更新日:2020/12/01