沖永良部島の地下ダム

 沖永良部島の地質

産総研シームレス地質図(クリックで地質解説表示)
 沖永良部島は大部分琉球石灰岩からなる平坦な島です。島の中央部に小丘陵をなして基盤岩が露出しています。最高峰の大山(240m)は白亜紀付加体(根折層)の玄武岩ですし、越山(188m)南方には古第三紀花崗岩(沖永良部島花崗岩)が貫入しています。琉球層群はそれら基盤岩類を広く覆っており、下位の沖永良部層と上位の田無層に分けられます。沖永良部層は、珊瑚礁複合体堆積物とそれと同時異相関係にある陸生砂礫層からなる一連の堆積体が2ユニット重なっています(井龍・山田,1991;山田ほか,2003;斎藤ほか,2009)。中期更新世の田無層は層厚10m以下の砂礫層で沖永良部島北西部に分布します。完新世の隆起サンゴ礁は認められていません。
 なお、琉球石灰岩には鍾乳洞群が発達し、中でも鹿児島県天然記念物昇竜洞が有名です。

 地下ダム

地下ダムのイメージ(九州農政局)
止水壁工事状況(九州農政局)土地改良事業計画図(九州農政局)
 沖永良部島は温暖な気候と低平な地形を利用した畑作地帯です。基幹作物であるサトウキビ・バレイショの他にテッポウユリなど花卉栽培が盛んです。しかし、平坦な島で大きな河川はありませんし、琉球石灰岩は乏水地帯ですから、農業用水確保には苦労してきました。湧水やため池などに依存するしかなかったのです。そこで2007年度から国営畑かんがい事業がスタートし、地下ダム工事が始まりました。2021年完成を目指しています。
 地下ダムは大山の南東余多地区の海岸付近に平行に建設します。付加体を不透水層とし、その上を覆う琉球石灰岩を帯水層とするものです。ここから大山吐水槽へポンプアップし、全島に給水します。有効貯水量は596,000m3だそうです。
 なお、地下ダムはどこでもそうですが、普通の水力ダムと違って水没地がありませんから、土地は有効利用できますが、直上が農地ですので、農薬や肥料の多用は、即、水質の悪化に直結します。注意深い持続可能な使用が求められます。

文献:
  1. 井龍康文・山田 努(1991), 徳之島および沖永良部島の琉球層群に記録された更新世海面変動―予察―. 中川久夫教授退官記念地質学論文集, p.73-78.
  2. 九州農政局沖永良部農業水利事務所(2008),沖永良部 水どぅ宝. 農水省九州農政局, 5pp.
  3. 野間泰二(1992),琉球石灰岩地帯における地下水の開発と保全. 地下水学会誌, Vol.34, No.3, p.163-170.
  4. 斎藤 眞・尾崎正紀・中野 俊・小林哲夫・駒澤正夫(2009),20万分の1地質図幅「徳之島」. 産総研, 1葉.
  5. 冨田友幸(2009),地下ダム開発の現状と今後の展開. 地下水技術, Vol.51, No.1, p.29-39.
  6. 山田 努・藤田慶太・井龍康文(2003),鹿児島県徳之島の琉球層群(第四系サンゴ礁複合体堆積物). 地質学雑誌, Vol.109, No.9, p.495-517.
  7. (),. , Vol., No., p..
  8. (),. , Vol., No., p..

参考サイト:


初出日:2019/10/13
更新日:2020/12/01