南海トラフ地震・津波
トラフ・海溝・プレート
CCOP地質図と500m間隔等深線(UCSDより作成)(プレート境界はUSGSによる) |
大洋プレートが大陸プレートに沈み込む活動的大陸縁辺部には、沈み込みに引きずられて細長い深い海溝trenchが形成されます。プレートの収束境界です。太平洋プレートが北米プレートに沈み込む位置にできた日本海溝がその好例です。フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込むところが南海トラフなのです。地形的に言えば海溝は水深6,000m以上あり、急斜面をもつV字型をしていますが、トラフtrough(舟状海盆)はそれより浅いのです。南海トラフは、隆起の激しい、つまり浸食の激しい中部山岳地帯から大量の土砂が駿河湾に供給され、そこから順次南方に埋め立てられて浅くなったと考えられています。地質図にScripps InstitutionのDEMから作成した500m間隔の等深線を加筆してみました。少し拡大移動してみてください。南海トラフと日本海溝の地形がかなり違うことがおわかりいただけると思います。
南海トラフの歴史地震
南海トラフの歴史地震(地震本部) | 津波堆積物(地震本部) |
南海トラフ地震の長期評価
震度の最大値(内閣府WG) | 最大の津波高(内閣府WG) |
30年 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(防災科研,2019) |
このような長期評価を受け、2013年内閣府では被害想定(第二次報告)を行いました。これは「想定外」をなくし、事前の防災・減災対策を講じることの重要性に鑑み、最大限の被害を想定したものですから、上図のような強い震度、30mを超す高い津波高が打ち出され、国の1年分の予算に相当する規模の巨大な経済的損失が生じるとのショッキングなものでした。
右図は防災科学技術研究所が発表した確率論的地震動予測地図2019年版です。ただし、震度6弱以上のケースです。他のケースや詳細についてはJ-SHIS地震ハザードステーションをご覧ください。
南海トラフ津波の確率論的評価
今後30年以内に津波高3m以上になる超過確率(防災科研,2020) |
鹿児島県は幸いにして津波高3mでも確率は6%未満ですが、安心して良いわけではありません。津波高が膝下でも、津波の激流では転倒しますし、ひとたび水に飲み込まれると、漂流物に頭を打たれて脳震とうを起こし、水泳の達人でも溺死します。「逃げるが勝ち」です。
右図は、3m以上のケースについて、地震本部と同じものをweb-GISで公開した防災科研J-THIS津波ハザードステーションを引用しました。他のケースや詳細については、そちらをご覧ください。
謝辞: 地震ハザードステーションおよび津波ハザードステーションの使用をご許可いただいた防災科学技術研究所に謝意を表します。
強震波形4ケースと経験的手法の震度の最大値の分布
強震断層モデル(1)データセットA工学的基盤以浅の表層地盤モデル (内閣府南海トラフの巨大地震モデル検討会) |
文献
- 藤原 治・谷川晃一朗(2017), 南海トラフ沿岸の古津波堆積物の研究. 地質学雑誌, Vol.123, No.10, p.831-842.
- 岡村 眞・松岡裕美(2012), 津波堆積物からわかる南海地震の繰り返し. 科学, Vol.82, No., p.182-194.
- 吉田康宏(2013), 新しい南海トラフの地震活動の長期評価について. GSJ地質ニュース, Vol.2, No.7, p.193-196.
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参考サイト:
- 政府地震調査研究推進本部(地震本部)
- 南海トラフ広域地震情報プラットフォームver.2(地震本部)
- 防災情報のページ>南海トラフ地震対策(内閣府)
- J-SHIS地震ハザードステーション(防災科学技術研究所)
- J-THIS津波ハザードステーション(防災科学技術研究所)
- 南海トラフ巨大地震の被害想定マップ(震度/最大クラス)(ESRI Japan)
- EXTRACT XYZ GRID - TOPOGRAPHY OR GRAVITY(Scripps Institution of Oceanography, University of California San Diego)
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初出日:2020/01/27
更新日:2020/10/29