文字通りの天災―薩摩隕石

隕鉄(鹿児島県立博物館蔵)石質隕石(鹿児島県立博物館蔵)
薩摩隕石(国立科学博物館蔵)薩摩隕石(大英自然史博物館蔵)
隕石落下地点(写真および地点データは成尾英仁氏提供)
 「天災」と「人災」という語があります。前者は、行政が不可抗力だったと手落ちを弁解するためにしばしば使われますし、後者は、住民が行政の怠慢を責め、何らかの賠償を要求するためによく使われます。どちらも一面的であまり生産的ではありません。前者は宿命論とあきらめに結びつき、後者は自然的要因の軽視につながるからです。無人島で土砂崩れがあっても災害と言いません。人命や財貨が失われて、初めて災害となるのですから、自然現象に何らかの人為的要因が絡んで災害となります。つまり、災害は社会現象なのです。
 しかし、本当の天災もあります。記憶に新しいものでは、2013年2月15日ロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下、衝撃波によりガラスが割れたり、それによる重軽傷者も多数出ました。まさに文字通り「天からの災い」でした。チェバルクリ湖の湖底からは径50~90cm、約600kgの隕石も回収されたそうです。
 鹿児島でも隕石落下がありました。明治19年(1886)10月26日現伊佐市に落下したのが「薩摩隕石」(国際登録名は「九州隕石」)です。菱刈郡前目村付近から伊佐郡大口村にかけて南東から北西方向へ無数の隕石を降らせました。隕石雨と言います。これらの隕石は鹿児島県立博物館(上写真)はじめ、国立科学博物館大英自然史博物館などに所蔵されています。散在する隕石の重量は合計46.5kgだそうです。
 これによる被害があったかどうかは、当時の新聞が欠号のため不明ですが、神保(1905)に、鹿兒島縣師範學校標品の附札が引用されています。
 十月二十六日天氣晴朗にして天に白雲散在せり、午後三時頃、忽ちにして大砲の如き響天の一方に聞え、尚ほ一二秒を過ぎて第二の響をきく、次で尚ほ二個を聞き續くに雷の如き響あり、此時に於て前目、花北、重留等の塲所に鳴響と共に石が落ちたるが其の根源は皆一點より來りたるが如し。
謝辞:
 隕石落下地点の写真およびデータは元武岡台高校成尾英仁氏にご提供いただきました。記して謝意を表します。

文献:
  1. 鈴木 敏(1892),日本の鑛物産地.地學雜誌,Vol.4, No.11, 515-521.
  2. 神保小虎(1905), 本邦天隕石の硏究(第壹四貳の續き). 地質學雜誌, Vol.12, No.145, 309-317.
参考サイト:

 チェリャビンスク州に隕石落下

参考動画サイト:
ロシアにチェリャビンスク州に隕石が落下 空中爆発 負傷者500人
2013/02/15 YouTubeに公開
【映像まとめ】ロシア・チェリャビンスク州の隕石落下映像 まとめ
2013/02/17 YouTubeに公開

 2014年にも九州に落下?

参考動画サイト:
隕石落下!九州、西日本の各地で目撃情報相次ぐ!緑からオレンジ色に変化しながら落下
2014/11/03 YouTubeに公開
【UFO?隕石?火球?】謎の光る物体、目撃相次ぐ【九州・福岡・佐賀】水トク!世界がビビる夜
2014/11/03 YouTubeに公開


初出日:2014/12/26
更新日:2019/01/07