口永良部島新岳2015年噴火
産総研火山地質図と2015年火砕流流下方向(矢印) | 産総研口永良部島火山地質図 |
口永良部島火山形成史
活動開始期の詳細は不明ですが、50万年前頃には海上に姿を現していたようです。それが、2014年噴火
2015年全島避難につながった噴火の前に2014年にも小規模な噴火がありました。2014年8月3日12時52分頃、34年ぶりに噴火し、小規模な火砕流も発生しました。島民は直ちに古期火山体である番屋ヶ峰に避難します。気象庁は噴火警報レベルを3に引き上げました。折から台風が接近中であったため、一部島民は台風による孤立を恐れて、自主的に島外避難を行いました。こうした経験が翌年の大噴火に生かされたのだそうです。2015年の活動
5月29日の噴火(気象庁) | 火砕流堆積物などの分布(産総研) |
実は、年が明けてから、二酸化硫黄放出量の増加、山体膨張、地震数の増加、高温化を示す火映現象が段階的に進行していました。5月23日にはM2.3の有感地震も発生します。この時点で、京大火山活動研究センターの井口センター長は警報レベルを5へ上げるように助言したそうですが、受け入れられず29日を迎えたのだそうです(井口,2016)。
全島避難
屋久町では、29日当日、次の3個所の避難所を開設しました。- 屋久島福祉センター「縄文の苑」(21世帯29名)→8月1日閉鎖
- 宮之浦公民館(11世帯16名)→6月24日閉鎖
- 宮之浦老人憩いの家(15世帯26名)→8月1日閉鎖
火山災害は避難が長期化するのが通例ですから、屋久町は仮設住宅の建設や見なし仮設などの施策を進めます。11月14日現在85世帯136名が避難していましたが、内訳は次の通りです。
- 公営住宅…21世帯33名
- 民間住宅…17世帯32名
- 仮設住宅…27世帯47名
- IDK…13戸、2DK…12戸、3K…2戸、集会場…402、6月24日着工、8月1日入居
- 自主避難…20世帯24名
帰島と復興
屋久町では12月25日午前10時、前田・向江浜・寝待地区を除く地区について、避難指示を解除し、島民は帰島しつつあります。次の緊急事態に備えて、番屋ヶ峰の旧NTT中継所に施設の完備した避難所も落成しました。気象庁も2016年6月14日18時00分、火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)に切り替えました。今後は主たる産業である農業や観光業の復興が課題となります。2016年6月25日、前田・向江浜等も含めて、全島の避難指示が解除されました。
文献:
- 下司信夫・小林哲夫(2007), 口永良部島火山地質図, 産総研地質調査総合センター, 1葉.
- 下司信夫(2016), 口永良部島2014 年・2015 年噴火の特徴:地質調査によって明らかにされた過去の噴火特性との比較. 地質と調査, No.145, p.18-25.
- 佐藤宏之(2016), 歴史災害を防災に活かす―口永良部島新岳の噴火を事例に―. 「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書, 鹿児島大学地域防災教育研究センター, p.119-126.
- 福満博隆・長岡良治・川畑和也(2016), 口永良部島新岳噴火避難者への運動及びレクリエーション活動による健康づくり支援の効果についての研究. 「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書, 鹿児島大学地域防災教育研究センター, p.203-209.
- 岩船昌起(2016), 口永良部島新岳噴火災害の応急対策・復旧策にかかわる実践的総合研究. 「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書, 鹿児島大学地域防災教育研究センター, p.237-243.
- 丸谷美紀・兒玉慎平・日隈利香・森 隆子・稲留直子(2016), 口永良部島新岳噴火の被災者支援における保健師の役割. 「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書, 鹿児島大学地域防災教育研究センター, p.263-270.
- 井口正人(2016), 口永良部島2014年および2015年噴火に至る火山活動過程と意思決定. 西部地区自然災害資料センターニュース, No.54, p.13-17.
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参考サイト:
初出日:2016/06/26
更新日:2018/11/17