2010年船石川土石流災害

 降雨と被害状況

南大隅町船石川土石流災害
全景(鹿児島県土木部2010/7/6撮影)(下川ほか,2010による)
南大隅町雨量観測所における降雨状況(小山内・武澤,2010)
 
 南大隅町根占山本地区で、2010年7月4日から8日にかけて、7波に及ぶ土石流が発生、国道269号と河口両側の住宅地に土砂が氾濫しました。幸い人的被害はありませんでした。
 ここは2007年にも土石流が発生し、1号堰堤が被災しました。そこで、上流部に2号堰堤を建設、災害時には3号堰堤を施工中でした。
 2017年6月1日~28日の累計雨量は785mmと、かなりの先行降雨があったためか、7月4・5日は無降雨だったのにもかかわらず、土石流が発生しました。ここは全景写真にみるように、典型的な溶結凝灰岩台地です。その末端部で崩壊が発生、それが引き金になったのです。土石流第1・2波により2号堰堤は満砂し、次の3波により越流、4~7波によって下流にまで達しました。最初の土石流を2号堰堤が食い止めたため、住民は避難をする余裕ができ、人的被害を出さずに済んだのです。
 船石川の北にある大浜川は1・2波の土砂が流入していますが、幸い堰堤で食い止められました。ここは礫が主体で流動性に乏しかったのも幸いしたようです。

 キャップロック型深層崩壊

船石川崩壊地(井村,2010)崩壊地模式断面図(下川ほか,2010)
 これらの土石流は、下川ほか(2010)の模式断面図にあるように、源頭部における溶結凝灰岩の倒壊(転倒崩壊toppling)が土石流の引き金になりました。「深層崩壊」で述べたように、典型的なキャップロック型の深層崩壊です。図では簡略化されていますが、井村(2010)によれば、基盤の花崗岩を非整合に覆って、下位から阿多鳥浜軽石・阿多鳥浜火砕流・円レキ層・ローム層・阿多軽石・阿多火砕流の順に重なっています。台地上には新期の火山灰・ローム層も載っています。溶結凝灰岩は冷却節理が発達していますから、割れ目孔隙率が高く、良好な帯水層になります。ここが先月来の先行降雨により満水状態になり、非溶結部との境界付近からケービングcavingを起こしたものと思われます。

文献:

  1. 水野秀明・小山内信智(2011), 2010年7月鹿児島県船石川土石流災害の流下実態. 土木技術資料, Vol.53, No.7, p.24-27.
  2. 森田俊彦(2011), 平成22年7月4日の深層崩壊による「船石川土石流災害」について. 砂防と治水, No.202, p..
  3. 小山内信智(2011), 鹿児島県南大隅町船石川で発生した土石流災害, 国総研レポート 2011, p.60-61.
  4. 下川悦郎・小山内信智・武澤永純・地頭薗 隆・寺本行芳・権田 豊(2010), 2010年(平成22年)7月鹿児島県南大隅町発生した連続土石流災害. 砂防学会誌, Vol.63, No.3, p.50-53. 口絵
  5. 下川悦郎(2011), 鹿児島県南大隅町の深層崩壊について. 消防防災の科学, No.105, p.36-39.
  6. 末永浩二(2015), 平成22年7月豪雨による根占山本地区土石流災害について. 九州技報, No.56, p..
  7. 武澤永純・内田太郎・鈴木隆司・田村圭司(2009), 鹿児島県船石川で発生した深層崩壊に起因する土石流の推定. 砂防学会誌,Vol.62,No.2, p.21-28.
  8. 鳥田英司・古閑美津久・前川哲志・堀川毅信・伊藤仁志・小川和久・北薗哲也・門前信一(2011), 時系列航空写真による深層崩壊の発生状況に関する一考察-船石川土石流災害より-. 平成23年度砂防学会研究発表会概要集, Vol.60, No.P-026, p.378-379.
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  15. 砂防・地すべり技術センター(2011), 土砂災害の実態(平成22年), pp.

参考サイト:



初出日:2017/07/08
更新日:2020/02/13