福徳岡ノ場火山の漂着軽石

 漂着軽石

福徳岡ノ場火山起源軽石(産総研)沖縄県国頭村に漂着した軽石(産総研)
 2021年10月10日、喜界島の東海岸におびただしい軽石が漂着し話題になりました。18日には奄美大島の奄美市笠利町にも大量の軽石が到達、漁業にも影響が出て問題になりました。その後、沖縄にも到達、リゾートホテルのビーチが使えなくなったり、巡視艇が軽石を吸い込んで航行不能になる事態も起きました。
 これらの軽石は小笠原諸島南硫黄島北方にある福徳岡ノ場火山起源と言われています。産総研によれば、円磨度は亜円程度で表面はもこもことした凹凸のある弱いカリフラワー状の形状をなし、凹んだ部分に沿って網目状にクラックが発達する形状をなしており、気泡径は外側が細かく内側が大きいそうです。このような特徴は水底噴火の軽石の特徴と一致する由です。なお、こうした軽石の集合体を軽石いかだpumice raftと呼びます。

 福徳岡ノ場火山

福徳岡ノ場火山(海上保安庁)シームレス地質図
2021/8/15噴火(海保動画)
 福徳岡ノ場火山は、南硫黄島北方の海底火山で、北福徳カルデラの中央火口丘に当たります。1904年以来活発な活動を続けており、一時新島を形成したこともあります。今回の噴火は、2021年8月13日に始まりました。火山爆発指数VEI=4、噴火マグニチュード=4.5~5.1と推定され、明治以降に発生した日本列島における噴火の中では最大級の噴火であり、1914年の桜島火山大正噴火に次ぐ規模だそうです。ちなみに桜島大正噴火もVEI=4です。

 黒潮反流

軽石ラフト(NASA 2021/8/17)
黒潮反流(大日本百科全書)軽石漂流シミュレーション(JAMSTEC)
(YouTube)
衛星画像タイル(NASA 2021/8/17)
 では1000km以上離れた小笠原から南西諸島にまで、どのようにして流れてくるのでしょうか。日本近海では黒潮が南から北へ流れているはずと、不思議に思った方が多かったようです。実は「黒潮反流」という逆方向の海流もあるのです。恐らくこの流れに乗って、2ヶ月かかって南西諸島まで漂ってきたと考えられています。こうした軽石ラフトはやがて吸水して沈むでしょうが、一部は再び黒潮に乗って九州・四国方面へ北上するかも知れません。
 10月28日、海洋研究開発機構JAMSTECが海流予測モデルを利用した軽石漂流予測シミュレーションを公開しました。
 なお、9月23日に発生した台風16号の影響を指摘する研究もあるようです(東京海洋大学長井健容准教授)。

 漂着状況

漂着地点(:港湾,:海岸)
 鹿児島県は10月15日、軽石の漂着状況について第1報を発表しました。それによりますと、奄美市・瀬戸内町・喜界町・与論町の4市町に漂着したとことです。喜界島と奄美大島の太平洋側および飛んで与論島に被害が及んだことになります。それが10月25日の第5報では、奄美群島全市町村に波及しました。地図は、第6報のデータ(10月28日時点)をプロットしたものです。地名から推測しただけですし、本来面の情報を点で表現したものですから、GISの精度はありません。その後、沖縄県も漂着地点名を公表しましたので、大量のケースだけを追加します(11月9日時点)。
<その後の漂流状況>
JAMSTECシミュレーション・沖縄
(2021年11月22日更新)
JAMSTECシミュレーション・太平洋
(2021年11月22日更新)

文献
  1. 産総研(2021), 福徳岡ノ場,2021年8月噴火の軽石. 火山噴火予知連絡会, 2pp.
  2. 浅野敏之・長山昭夫・加古真一郎(2021), 桜島の大規模火山噴火を想定した海域内降下軽石群の漂流解析. 鹿大地震火山地域防災センター令和2年度報告書, p.25-30.
  3. 平峰玲緒奈・青木かおり・鈴木毅彦(2020), 日本列島の現世海岸における漂着軽石の分布とその給源. 2020年度日本地理学会春季学術大会講演要旨, 1p.
  4. 平峰玲緒奈・石村大輔・青木かおり・小林 淳・鈴木毅彦(2019), 現世海岸における漂流軽石の主成分化学組成からみた給源の推定. 2019年度日本地理学会春季学術大会講演要旨, 1p.
  5. (), . , Vol., No., p..
  6. (), . , Vol., No., p..

参考サイト:



更新日:2021/10/25
更新日:2021/12/15