防災士

 防災士とは

都道府県別防災士認定数カルトグラム(2019/10/31現在)
防災士会ロゴ
 日本列島は若い変動帯に位置し、災害列島でもあります。従来は100年降水確率に基づき、100年に1度の大災害にも耐えるようなハードを構築し、発災時には、本来は消火が任務である消防力で対応してきました。しかし、地球温暖化に伴い極端気象が常態化し、昭和以前の気象データに基づく100年降水確率は見直しを迫られています。高度成長期に各地で建設されたハードもコンクリートの寿命が尽きつつあり、経年劣化が問題になっています。また、ソフト面でも問題が出てきました。1995年の阪神淡路大震災では都市型災害がクローズアップされましたし、2011年の東日本大震災や2019年台風19号災害のように同時多発広域災害といった従来にないタイプの災害も経験しました。災害は御上任せ、ハード依存の脱却を迫られたのです。そこで、「防災から減災へ」「地域防災力の向上」といったことが言われるようになりました。一般に災害被害の軽減には「自助」「共助」「公助」の効果的な組み合わせが重要と言われていますが、この「自助」「共助」の部分を担うのが「防災士」です。防災士とは認定特定非営利活動法人日本防災士機構が認定している民間資格です。同機構は、次のように定義しています。
 防災士とは“自助”・“共助”・“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、 そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人です。
 ここで“自助”とは、「自分の命は自分で守る」こと、“共助”とは「地域・職場で助け合い、被害拡大を防ぐ」ことで、“協働”とは「市民、企業、自治体、防災機関等が協力して活動する」ことです。
 さて、この資格は阪神淡路大震災をきっかけに誕生し、2003年第1号が認定されてから、2019年10月末現在、180,649名が認定されています。取得者の分布に地域的偏りがあり、それを示したのが、右図のカルトグラムです。カルトグラムに着色した都府県が5,000名以上いるところです。当然ながら、関東・中部・関西の人口集中地域には多数の取得者がいますが、愛媛県・大分県が突出して10,000名を超えているのが目を引きます。鹿児島県はやせ細っていますから、少ないほうの部類です。この防災士の資格を取得した人たちの集まりが日本防災士会です。

 防災士資格取得の流れ

防災士資格取得の流れ(防災士機構)
防災士教本(防災士機構)
 防災士資格を取得するには、日本防災士機構が認証した防災士養成研修実施機関が実施する研修講座を受講しなくてはなりません。鹿児島大学は2014年に防災士養成研修実施機関として認定されています。ここで実施する防災士教本などに基づく研修講座を受講し、「研修履修証明」を取得します。次に日本防災士機構が実施する「防災士資格取得試験」を受験し、合格することが必要です。さらに、自治体・消防署・日本赤十字社等の公的機関、またはそれに準ずる団体が主催する「救急救命講習」(心肺蘇生法やAEDを含む3時間以上の内容)を受け、その修了証を取得しなければなりません。以上の課程を修了したら、日本防災士機構へ「防災士認証登録申請」を行い、晴れて防災士となることが出来ます。

 鹿児島大学における資格取得コース

 前述のように鹿児島大学でも「防災士」資格取得の道が開かれています。共通教育プログラムにおいて、「いのちと地域を守る防災学Ⅰ」「いのちと地域を守る防災学Ⅱ」「防災フィールドワーク」などの科目が設けられています(岩船ほか,2018)。また、日本赤十字社や消防とのタイアップによる「救急救命講習」も行われているようです。担当教員の関係もあり変動しますので、詳しくはシラバスを参照してください。既に数十人有資格者を輩出しているそうです。2015年にはその人達を中心に「防災ネットワーク」も立ち上がりました。在学生の皆さんはぜひチャレンジしてみてください。

文献:
  1. 二神 透・羽鳥剛史(2016),大学における防災士資格希望者の防災意向分析. 土木学会論文集F6(安全問題), Vol.72, No.2, p..I_15-I_20
  2. 岩船昌起・森 博一・黒光貴峰・柿沼 太郎(2018),鹿児島大学での防災教育の取り組み : 鹿児島地方気象台との連携授業の分析を通じた論考. 鹿児島大学総合教育機構紀要, Vol.1, No., p.52-75.
  3. 岩原廣彦・白木 渡・長谷川修一・井面仁志・高橋亨輔(2017),防災士養成における課題と対応策及び学生の防災意識の醸成と実践対応能力育成の取り組み事例. 土木学会論文集F6(安全問題), Vol.73, No.2, p.I_7-I_15.
  4. 国立大学法人鹿児島大学(2015),防災基本マニュアル. 国立大学法人鹿児島大学, 26pp.
  5. 日本防災士機構(2019),防災士教本. 日本防災士機構, 368pp.
  6. (),. , Vol., No., p..
  7. (),. , Vol., No., p..

参考サイト:


初出日:2019/11/29
更新日:2019/12/01