教育・研究(工事中)

教育 

名古屋大学

1)生理学実験(分担) 2)基礎医学セミナー

 

米田中部柔整専門学校

1)生理学

 

鹿児島大学

 共通教育  
①生命科学(分担) ②生物とリズム ③生命化学への招待(分担) ④生命科学実験A(分担)生命科学実験B(分担)

 学部教育  
①内分泌学 ②感覚情報学 ③生命化学演習1-4 ④情報生理学実験(分担) ⑤動物生理学  ⑥生命化学特別研究  ⑦生命化学論文講読

 大学院
①生命情報学特論 ②生命化学論文講読  ③生命化学特別研究

 

 

(最近の研究テーマ)


1)生物リズムの研究(腹時計のメカニズム解明):ゴンズイの遊泳活動、摂餌活動に約1日の概日リズムが存在し(Kasai et al., 2009a; Kasai et al., 2009b)、それぞれのリズムは光同調性時計と摂餌同調性時計のいずれにも支配されている(Kasai, et al., 2010)。この摂餌同調性時計は制限給餌が同調因子となっているが、制限給餌のどの因子(餌中の化学物など)がトリガーとなっているかは未だ不明である。このトリガーとなる因子が味覚•嗅覚を介する化学物質なのか、胃腸への取り込みなのかを明らかにするための研究を行っている

2)感覚受容機構の研究:痛覚および温度感覚における情報受容・変換機構の解明を調べている.現在は特に、魚に侵害受容器が存在するかどうかに注目して研究を行っている.

3)慢性関節リウマチの病態発生のメカニズム解明とその予防法の研究:リウマチモデルラットを用いて研究している.

4)慢性関節リウマチモデル動物における不安様行動の測定と安価な抗不安薬の検索

5)小型魚類(メダカ,金魚,等)を用いて、メントールの冷侵害受容機序および麻酔作用機序の解明を行っている。

6)魚類の不安様行動の測定。

7)卵殻の有効利用:家庭ゴミの卵殻を、ラインマーカーなどへの有効利用に活用できる技術の開発を行っている。

 

A)山口大学 学部生 院生(修士)

1) 卒論研究:蚊の脳の構造と神経分泌細胞について

2)修論研究:蚊の体内時計の存在場所の検索

要旨:昆虫の活動リズムを支配する光同調性の生物時計は、ゴキブリやコオロギでは視葉に存在するといわれているが、マイマイガでは脳葉に存在すると報告された。本研究ではアカイエカの飛翔活動の基本的性質を調べ、さらに脳の外科的手術を行い、飛翔活動に対する視神経切断、視葉除去、神経分泌細胞を含む脳葉の一部の除去の影響を調べた。その結果、アカイエカにおいて概日時計は視葉には存在せず、脳葉に存在する可能性があることがわかった。この研究により昆虫においても種による違いで生物時計の場所が異なることがわかった。

 

B)産業医科大学大学院医学研究科 第一生理学 院生(博士課程)および日本学術振興会 特別研究員

1)学位論文:視床下部室傍核ニューロンに対するコルチゾールの効果

要旨:ストレスホルモンの代表として、CRH-ACTH-Cortisol系とバソプレッシン系がよく知られている。CRH-ACTH-Cortisol系のCortisolによるCRHへのネガティブフィードバック機構は教科書に記載されていたが、実験では明らかになっていなかった。麻酔ラットやラット視床下部スライス標本を用いて、組織学的にCRH産生細胞が存在する部位の視床下部室傍核単一細胞からの電気活動記録を行い、Cortisolを投与すると抑制効果はみられないが、内因性Cortisolの影響がないと考えられる副腎除去ラットの脳スライス標本を用いた研究で、Cortisolの単独での抑制効果を見いだした。また、単独投与では影響のない濃度のコルチゾルノルは、ノルアドレナリンによる興奮効果を抑制することを見いだした。これらの結果はCortisolによるCRHへのネガティブフィードバックを証明する初めてのものとなった。

2)圧受容器から視床下部室傍核ニューロンへの抑制性入力におけるγーアミノ酪酸(GABA)の関与

要旨:視床下部室傍核には視床下部ホルモン産生細胞、下垂体後葉ホルモン産生細胞および自律神経系に関与する細胞など多機能にわたる細胞群が存在し、これらのことより視床下部室傍核は自律神経および内分泌の中枢といわれている。室傍核への入力系として血圧調節に重要な循環系圧受容器から延髄を介する抑制性の入力があることを電気生理学的に明らかにし、この抑制性の入力にはγ-アミノ酪酸(GABA)が神経伝達物質として働いていることを多連微小電極法を用いて明らかにした。また視床下部室傍核の電気刺激およびグルタミン酸微量注入により血圧低下を引き起こすことなどから、視床下部室傍核は内分泌系のみならず自律神経系による血圧調節に重要部位であることを初めて明らかにした。

3)その他

要旨:CRHを室傍核細胞に投与すると、室傍核細胞は興奮することより、CRHのCRH細胞へのポジティブフィードバックが局所的に存在する可能性を見いだした。この局所性のポジティブフィードバックは視床下部でのオキシトシン細胞でも同様であることを明らかにした。
 視床下部室傍核細胞に浸透圧物質を投与すると興奮性反応を示すことから、この室傍核は中枢性浸透圧受容部位であり、摂食抑制物質(2-DTA)の投与で抑制されることよりから摂食にも関与する部位あることを見いだした。さらに、室傍核細胞からの細胞内記録と記録部位の同定により、室傍核での細胞の分布や大きさを調べ、細胞の存在部位と細胞の大きさの違いで電気生理学的性質が異なり、この研究は室傍核細胞がどのような種類の細胞であるかの同定法研究の先駆けとなった。

 

C)University of California at Los Angels, MRRC ポスドク研究員

1)視床下部室傍核ニューロンに対するオピオイドの効果

 

D)名古屋大学 環境医学研究所 助手

1)ラット脊髄後根神経説細胞を用いての痛覚受容・変換機構の解析

要旨:痛覚受容器は自由神経終末で、電子顕微鏡レベルで観察される微小な構造である ために自由神経終末の細胞膜での痛覚情報受容・変換機構の解明は困難であった。従来の研究法は、末梢痛覚受容器に熱や化学の侵害刺激を与え、神経線維の活動電位の放電頻度を指標として行われたが、やはり痛覚情報受容・変換機構の詳細については不明のままであった。 痛覚受容器の細胞体は脊髄後根神経節にあり、その細胞体は直径約30 μmの小型細胞であることから、この細胞体からの細胞内記録等は可能である。脊髄後根神経節のスライス標本や急性分離細胞、培養細胞などを用いて細胞内記録を行い、小型細胞の電気生理学的性質が他の大型細胞と異なり、小型細胞はカプサイシンやプロトンなどの発痛物質に対して反応性を示すことを明らかにした。これらの反応が末梢痛覚受容器の化学物質に対する反応とよく似ており、痛覚受容器の細胞体を用いて、その末梢でのメカニズム解明が可能であることを世界に先駆けて解明した。さらに神経成長因子(Nerve growth factor, NGF)が発痛物質であるブラジキニンなどの反応性に維持に重要であることを見いだし、このNGFの研究結果は、慢性病態時における痛覚過敏発症メカニズムの解明に寄与した。

2)慢性病態時における痛覚過敏発生メカニズムの解明

要旨:慢性病態時において痛覚過敏などが発生することはよく知られていたが、その発症メカニズムについては明らかではなかった。慢性関節リウマチのモデル動物であるアジュバント関節炎動物を作成し、関節炎発症過程を体重の増減などを指標に観察した。これらの基礎的データーをもとに、アジュバント関節炎ラット脊髄後根神経節培養細胞においては、慢性炎症により増加した内因性NGFがブラジキニン反応を引き起こすことを、電気生理学的手法を用いて明らかにした。さらに、このモデル動物の培養細胞で、通常みられない自発放電やノルアドレナリンに対する反応性などが発現することから、慢性病態時での痛覚過敏や異常痛の発症メカニズムを末梢レベルでおこることを明らかにした。

E)鹿児島大学理学部生命化学科 助教授・准教授・教授

1)慢性病態モデル動物を用いた慢性病の予防・治療法の検討とストレス反応 

要旨:慢性関節リウマチの予防法、治療法いずれも未だ解決されていない。慢性関節リウマチのモデル動物を用いて、食物摂取などによる安価な予防法や治療法の検討を行ってきた。黒糖摂取による関節炎発症予防効果について検討し月刊誌に2編報告した。現在、亜鉛やメントール摂取による効果を検討している。

 慢性病態時では肉体的および精神的ストレスの負荷が推測されるが、ストレスの指標である血中のACTH、コルチゾルやバゾプレッシンの増加を明らかにした(共同研究)。  

2)ゴンズイの光同調性時計と摂餌同調性時計について

要旨:光同調性時計については多くの知見がありが、摂餌同調性時計に関する研究は少ない。本研究で、海水魚のゴンズイは光同調性夜行性のリズムを示し、制限給餌下では給餌前後に活動する摂餌予知活動がみられ、それぞれは別の体内時計により支配されていることを明らかにした。

3)メントールの小型魚類に対する麻酔効果

要旨:メダカ、金魚、ゼブラフィッシュはメントール水暴露により外科的麻酔と異常遊泳行動を示す。異常遊泳行動はTRPA1受容体のアゴニストであるアリールシソチオシエネイト投与でも見られ、冷侵害受容が魚類でも存在する可能性を示した。外科的麻酔効果はTRPM8受容体のアゴニストであるイチリンでも起こらず、GABAa-受容体のアンアゴニストで阻害されることより、メントールはGABAa-受容体に作用する可能性を示した。

 

 

 

論文要旨

【英語学術論文、査読付】
1.  Hiroshi Kannan, Toshimasa Osaka, Masanori Kasai, Shigeru Okuya and Hiroshi Yamashita, Electrophysiological properties of neurons in the caudal ventrolateral medulla projecting to the paraventricular nucleus of the hypothalamus in rats, Brain Research, 376 (1986) 342-350


  視床下部室傍核へ投射する延髄A1領域の細胞には2種類のグループが存在することを電気生理学的に確かめ、さらに延髄A1領域は循環系圧受容器から視床下部室傍核への中継核であることを明らかにした。


2.  Masanori Kasai and Yoshihiko Chiba, Effects of optic lobe ablation on circadian activity in the mosquito, Culex pipiens pallens, Physiological Entomology, 12 (1987) 59-65


 昆虫の活動リズムを支配する体内時計は、ゴキブリを用いた研究から視葉に存在すると言われていたが、チカイエカの脳に外科的手術を施しその活動リズムを調べ、その結果、蚊では視葉ではなく脳葉に存在することを見い出し、昆虫においても体内時計の存在場所が異なることを明らかにした。


3.  Masanori Kasai, Toshimasa Osaka, Kiyotoshi Inenaga, Hiroshi Kannan and Hiroshi Yamashita, γ-Aminobutyric acid antagonist blocks baroreceptor-activated inhibition of neurosecretory cells in the hypothalamic paraventricular nucleus of rats,  Neuroscience Letters, 81 (1987) 319-324


 視床下部室傍核には下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシンを産生・分泌する細胞が存在する。麻酔ラットを用いて、血圧上昇による循環系圧受容器からの抑制性の入力に神経伝達物質であるGABAが関与していることを電気生理学的手法を用いて明らかにした。


4. Hiroshi Kannan, Masanori Kasai, Toshimasa Osaka and Hiroshi Yamashita, Neurons in the paraventricular nucleus projecting to the median eminence: a study of their afferent connenctions from peripheral baroreceptors, and from the A1-catecholaminergic area in the ventrolateral medulla, Brain Research, 409 (1987) 358-363


 延髄A1領域は、循環系圧受容器反射に重要な部位として知られる。麻酔ラットを用いて、視床下部室傍核に存在する視床下部ニューロンへの延髄A1領域からの抑制性入力の存在を明らかにした。


5. Hiroshi Yamashita, Hiroshi Kannan, Masanori Kasai and Toshimasa Osaka, Decrease in blood pressure by stimulation of the rat hypothalamic paraventricular nucleus with L-glutamate or weak current, Journal of the Autonomic Nervous System, 19 (1987) 229-234


 視床下部室傍核の電気刺激およびグルタミン酸微量注入により血圧低下を引き起こすことを見い出し、視床下部室傍核は内分泌系のみならず自律神経系による血圧調節に重要であることを明らかにした。


6. Hiroshi Yamashita, Shigeru Okuya, Kiyotoshi Inenaga, Masanori Kasai, Sayuri Uesugi Hiroshi Kannan and Toshio Kaneko, Oxytocin predominantly excites putative oxytocin neurons in the rat supraoptic nucleus in vitro, Brain Research, 416 (1987) 364-368


 視床下部視索上核には下垂体後葉ホルモンであるオキシトシン産生細胞が存在する。ラット脳スライス標本を用いて、オキシトシンがオキシトシン産生細胞を興奮させることを見い出した。


7. Kiyotoshi Inenaga, Yutaka Oomura, Nobuyuki Shimizu, Masanori Kasai and Hiroshi Yamashita, Inhibitory effects of 2-deoxytetronic acid, a putative endogenous satiety factor, on paraventricular neurons of rats, in vitro, Neuroscience Letters, 79 (1987) 123-127


 摂食抑制物質である2-DTAの視床下部室傍核細胞に対する作用を視床下部スライス標本を用いて調べ、高濃度2-DTAが抑制作用をおよぼすことを見い出した。


8. Masanori Kasai, Hiroshi Kannan, Kiyotoshi Inenaga, Toshimasa Osaka, Youichi Ueta and Hiroshi Yamashita, Effects of iontophoretically applied cortisol on tuberoinfundibular neurons in hypothalamic paraventricular nucleus in anesthetized rats, Neuroscience Letters, 87 (1988) 35-40


   正常ラット視床下部室傍核に存在する視床下部ホルモン産生細胞はCortisolの電気泳動的投与により興奮することを明らかにした。


9. Yukio Hattori, Masanori Kasai, Sayuri Uesugi and Hiroshi Yamashita, Atrial natriuretic polypeptide depress angiotensin II induced excitation of neurons in the rat subfornical organ in vitro, Brain Research, 443 (1988) 355-359


   ラット脳弓下器官スライス標本を用いて、アンギオテンシンIIによって引き起こされる興奮反応を心房性利尿ペプチド(ANP)が抑制することを脳弓下器官の細胞で明らかにした。


10. Masanori Kasai and Hiroshi Yamashita, Inhibition by cortisol of neurons in the paraventricular nucleus of adrenalectomized rats; an in vitro study, Neuroscience Letters, 91 (1988) 59-64


   副腎摘出ラットの視床下部スライス標本を用いて、CortisolによるCRHニューロンの抑制を電気生理学的手法を用いて明らかにした。


11. Masanori Kasai and Hiroshi Yamashita, Cortisol suppresses noradrenaline-induced excitatory responses of neurons in hypothalamic paraventricular nucleus, Neuroscience Letters, 91 (1988) 65-70


正常ラット視床下部スライス標本を用いて、Cortisolは単独投与では効果が見られないが、ノルアドレナリンによる興奮反応を抑制することを見い出した。


12. Toshimasa Osaka, Hiroshi Kannan, Masanori Kasai, Kiyotoshi Inenaga & Hiroshi Yamashita, Osmotic responses of rat paraventricular neurons by pressure ejection method, Brain Research Bulltein, 24 (1990) 493-497


  麻酔ラットで、視床下部室傍核細胞の30%が圧吐出による浸透圧物質投与で興奮性反応を示すことを見い出し、視床下部室傍核が中枢性浸透圧受容部位であることを明らかにした。


13. Hiroshi Yamashita, Masanori Kasai and Kiyotoshi Inenaga, Effects of corticotropin-releasing factor on neurons in the hypothalamic paraventricular nucleus in vitro, Brain Research Bulltein, 27 (1991) 321-325.


  ラット視床下部スライス標本を用いて、ストレスホルモンであるCRFが視床下部室傍核細胞を興奮させることを明らかにし、視床下部室傍核内におけるCRFのポジティブフィードバック機構の可能性を示した。


14. Masanori Kasai, Jeffrey G. Tasker, Jean-Pierre Wuarin, and F. Edward Dudek, Membrane properties of identified guinea-pig paraventricular neurons and their response to an opioid μ-receptor agonist: evidence for increase in K+ conductance, Journal of Neuroendocrinolory,  5 (1993) 233-240.


 ラット視床下部室傍核細胞の電気生理学的特性を明らかにし、またμオピオイド受容体による抑制効果はK+チャネルの促進によることを示した。


15. Kasai, M., Mizumura, K, and Kumazawa, T., Electrophysiological characteristics of dissociated dorsal root ganglion neurones in rat, Environmental Medicine, 37(1), 1993:59-62.


痛覚受容ニューロンの細胞体であるラット脊髄後根神経節小細胞の電気生理学的特性が他の感覚ニューロンと異なることを明らかにした。


16. Kasai, M., Mizumura, K, and Kumazawa, T., Characteristics of capsaicin-sensitive neurones freshly dissociated from rat dorsal root ganglion, Environmental Medicine, 39(1), 1995:45-48


ポリモーダル受容器の細胞体であるラット脊髄後根神経節カプサイシン感受性細胞の電気生理学的特性を、急性分離細胞からの細胞内記録により明らかにした。


17. Kasai, M., Mizumura, K, and Kumazawa, T., Nerve growth factor sustaine the response to capsaicin in cultured rat dorsal root ganglion, Pain Research, 11 (1996) 113-124.   


神経成長因子(NGF)がカプサイシン感受性の維持に重要であることを、ラット脊髄後根神経節小細胞の急性分離および培養細胞を用いて明らかにした。

18. Kasai, M., Mizumura, K, and Kumazawa, T., Effects of nerve growth factor on electrophysiological characteristics of rat dorsal root ganglion neurones, Environmental Medicine, 40 (2)1996:157-162 


ラット脊髄後根神経節小細胞の急性分離および培養細胞から細胞内記録を行い、神経成長因子(NGF)はそれら細胞の電気生理学的特性には影響しないことを明らかにした。


19. Kasai, M.,  Kumazawa, T. and Mizumura, K., Proton depolarizes small neurons freshly dissociated from adult rat dorsal root ganglia, Environmental Medicine, 41(1)1997:52-55


発痛物質である水素イオンが、脊髄後根神経節急性分離小細胞を特異的に興奮させることを明らかにした。


20.  Kasai, M., Kumazawa, T. and Mizumura, K., Nerve growth factor increases sensitivity to bradykinin, mediated through B2 receptors, in capsaicin-sensitive small neurons cultured from rat dorsal root ganglia, Neuroscience Research, 32 (1998) 231-239.


内因性発痛物質ブラジキニンによる脱分極反応はB2受容体を介すること、およびその発現に神経成長因子(NGF)が重要であることをラット脊髄後根神経節小細胞の急性分離および培養細胞を用いて明らかにした。


21.  Kasai, M., Takemoto, Y. and Mizumura, K., Induction of arthritis by complete Freund's adjuvant in young male Wistar rats, Environmental Medicine, 42(2)1998:103-104


慢性関節炎モデル動物であるアジュバント関節炎ラットの作成は幼若ラットで困難とされてきたが、投与量を増加させることにより幼若ラットでも作成できることをあきらかにした。


22. Andoh, T., Kasai, M., Kuraishi, Y. and Mizumura, K., Capsaicin-sensitivity of acutely dissociated dorsal root ganglion neurons of mice.,  Environmental Medicine, 42(2)1998:105-107


マウス脊髄後根神経節細胞の急性分離細胞から細胞内記録を行い、ラットと同様にカプサイシン感受性細胞は小細胞であることを明らかにした。


23. Tanaka, M., Mizumura, K., Sato, J., Kasai, M., Mohri, M. and Naraki, N., Psychological and physiological changes during isolation and confirnement: 1. Group dynamics and member interaction, Environmental Medicine, 42(1)1998:4-7


短期間での閉鎖環境下におけるグループ内での人の心理状態を調べ、閉鎖環境暴露で精神的不安定がみられるケースを明らかにした。


24. Yasui, H., Mizutani, Y., Kasai, M., Sato, J., Tanaka, M. and Mizumura, K., Psychological and physiological changes during isolation and confirnement: II pain and thermal sensation, Environmental Medicine, 42(2)1998:95-98


短期間閉鎖環境下におけるグループ内での人の痛覚テストを行い、短期間閉鎖環境では痛覚系に明白な影響をあたえないことを明らかにした。


25. Mizumura, K., Kasai, M., Sato, J., Tanaka, M. and Yasui, H., Psychological and physiological changes during isolation and confirnement: Tactile discrimination, Environmental Medicine, 42(2)1998:99-102


短期間閉鎖環境下におけるグループ内での人の触覚テストを行い、短期間閉鎖環境では触覚に明白な影響をあたえないことを明らかにした


26. Kasai, M. and Mizumura, K., Endogenous nerve growth factor increases the sensitivity to bradykinin in small dorsal root ganglion neurons of adjuvant inflamed rats, Neuroscience Letters, 272 (1999) 41-44.


「アジュバント関節炎ラットDRGニューロンで、内因性のNGFがブラジキニン反応を増大させることを明らかにした」


27.  Kasai, M., Kato, S., Kawase, M. and Mizumura, K., Change in hindpaw volume and body weight by adjuvant arthritis in young male Wistar rats, Environmental Medicine, 43(2) 1999, 88-90.


「従来、若いラットでは関節炎は発症しないと言われていたが、若いラットでも結核死菌の投与量を増やすことで発症することを明らかにした」

28. Tamura, R., Kasai, M., Muller-Esterl, W. and Mizumura, K., Localization of the bradykinin B2 receptor in rat dorsal root ganglion cells, Environmental Medicine, 43(1) 1999, 16-18.

ラットDRG small ニューロンの細胞質にブラジキニンB2受容体があり、細胞膜上には発現していないことを免疫組織化学的手法により明らかにした」

29. Yasui, H., Mizutani, Y., Kasai, M., Sato, J., Tanaka, M. and Mizumura, K., Psychological and physiological changes during isolation and confirnement: pain and thermal sensation (2nd experiment series), Environmental Medicine, 43(1) 1999:13-15

「閉鎖環境における肉体的変化を痛覚と温度感覚について調べ、差がみられないことが分かった」

30. Tanaka, T., Kasai, M. and Mizumura, K., Changes in body weight and hindpaw volume of rats after inoculation of various doses of complete Freund's adyuvant and effects of anti-NGF antibody on these changes, Environmental Medicine, 44 (2) 2000:72-74.

「アジュバント関節炎ラットにおける後肢の腫れと体重減少が抗NGF抗体の腹腔内投与では影響されなかった」

31. Banik, R.K., Kasai, M. and Mizumura, K., Strong susceptibility of Lewis rats to adjuvant arthritis in camparison with Sprague-Dawley and Wistar rats, Environmental Medicine, 44 (2) 2000:69-71.

「Lewis系ラットのアジュバント関節炎発症率がWistar系、SD系よりも高いことをあきらかにした。

32. Kasai, M. and Mizumura, K., Increases in spontaneous action potentials and sensitivity in response to norepinephrine in dorsal root ganglion neurons of adjuvant inflamed rats, Neuroscience Research, 39 (2001) 109-113.

「アジュバント関節炎ラットDRGニューロンで、自発放電の増大をノルアドレナリンに対する反応が新たに発現することを明らかにした」

33. Kasai, M. and Mizumura, K., Effects of PGE2 on neurons from rat dorsal root ganglia in intact and adjuvant-inflamed rats: role of NGF on PGE2-induced depolarization, Neuroscience Research, 41 (2001) 345-353.

「アジュバント関節炎ラットDRGニューロンを用いて、PEG2反応が関節炎で大きくなることを明らかにし、この増大にはNGFは関与しないことを示した」

34. Banik, R.K., Kasai, M. and Mizumura, K., Reexamination of the diference in susceptibility to adjuvant-induced arthritis among LEW/Crj, Slc/Wistar/ST amd Slc/SD rats, Experimental Animals, 51 (2002) 197-201.

「アジュバント関節炎発症率がラットの系統により差が見られることを再検討し、Lewis系ラットが Wistar系、SD系よりも発症率が高いことをあきらかにした」

35. Sugiura,T., Kasai, M., Katsuya, H. and Mizumura,K., Thermal properties of あcid-いnduced depolarization in cultured rat small primary afferent neurons, Neuroscience Letters, 350 (2003) 109-112.

[Low pH反応は温度依存性でかつvaniloid receptor 1を介していることを、ラットDRGニューロンで明らかにした]

36.  Masanori KASAI, Tsukasa YAMAMOTO AND Sadao KIYOHRAR,Circadian locomotor activity in Japanese sea catfish, Plotosus lineatus, Fisheries Science, 75(2009)81-89


「ゴンズイ遊泳行動リズムが内因性の時計により支配されていることを見いだした」

37.Suzuki, H., Onaka, T., Kasai, M., Kawasaki, M., Ohnishi, H., Otsubo, H., Saito, T., Hashimoto, H., Toru Yokoyama, T., Fujihara, H., Dayanithi, G., Murphy, D.,  Nakamura, T. and Ueta, Y., Response of arginine vasopressin-enhanced green fluorescent protein fusion gene in the hypothalamus of adjuvant-induced arthritic rats, J. Neuroendocrinology, 21 (2009) 183-190

「アジュバント関節炎ラットを用いて、ストレスホルモンであるACTH, コルチゾルが、視床下部のバゾプレッシンによって引き起こされることを明らかにした」

38.  Masanori Kasai, Tsukasa Yamamoto, Koichiro Kitasako, Sadao Kiyohara, Feeding activity rhythm in Japanese sea catfish Plotosus japonicus, Fisheries Science, 75 (2009)1125-1132.

「ゴンズイ摂餌行動リズムが内因性の時計により支配されている可能性を見いだした」

39. Food- and light-entrainable oscillators control feeding and locomotor activity rhythms, respectively, in the Japanese catfish, Plotosus japonicus
Masanori Kasai and Sadao Kiyohara, Journal of comparative Physilogy A, 196(2010)901-912

「摂餌同調性時計と光同調性時計がそれぞれ別々に摂餌行動、遊泳行動を調節していることをゴンズイで明らかにした」

40. Masanori Kasai, Shoko Hososhima and Liang Yun-fei, Menthol Induces Surgical Anesthesia and Rapid Movement in Fishes、The Open Neuroscience Journal 8 (2014)1-8.

「小型魚類に対してメントールは外科的麻酔効果を及ぼすことを明らかにした」

【日本語学術論文、査読付き】

1 坂田陽子、笠井聖仙、清原貞夫、ヒメジ科魚類の触鬚の運動制御機構の解析、日本味と匂学会誌、(2000) 7 (3):671-672.


 ヒメジ科魚類の触鬚の動きに関わる筋肉を神経の電気刺激による筋運動とと蛍光標識したトレーサーを用いた組織学的手法を用いて明らかにした。

2 桐野正人、坂田陽子、笠井聖仙、清原貞夫、ヒメジ科魚類の顔面様からの出力経路、日本味と匂学会誌、(2001) 8 (3):683-684.


 蛍光標識したトレーサーを用いた組織学的手法を用いて、顔面葉からの出力が延髄を下行し、脊髄まで投射していることを明らかにした。

3 山下恵美、笠井聖仙、塚原潤三、清原貞夫、魚類の第一次味覚ニューロンの形態と分離の試み、日本味と匂学会誌 (2003) 10 (3): 497-500.


 ゴンズイの第一次味覚ニューロンが存在する神経節を取り出し、分離細胞とすることを試みた。分離細胞からこれらの細胞は、直径20 μm前後で双極細胞である可能性を見いだした。

 

【日本語学術論文・大学紀要】


1 笠井聖仙,日比達也,水村和枝,熊澤孝朗:スライス標本の後根神経節細胞を用いた侵害受容機構の研究法、名古屋大学環境医学研究所年報43巻,1992年 142-143


侵害受容機構解析のため、脊髄後根神経節のスライス標本作製に成功し、その作製法について記述した。

2 笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗: ラット脊髄後根神経節分離細胞に対するCapsaicinの効果、名古屋大学環境医学研究所年報44巻,1993年 219-220


ラット脊髄後根神経節急性分離細胞に対するCapsaicinの効果を調べ、直径30 um以下の小細胞がCapsaicin感受性を示すことを明らかにした。

3 笠井聖仙,堀部秀樹,水村和枝,熊澤孝朗: 熱痛覚に対する低濃度カプサイシンの鎮痛作用の検討、名古屋大学環境医学研究所年報45巻,1994年129-131


低濃度カプサイシンのラットの腹腔内投与により、熱痛覚閾値が低下することが明らかにした。

4 笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗:脊髄後根神経節におけるCapsaicin感受性細胞の電気生理学的性質、名古屋大学環境医学研究所年報45巻,1994年 132-134


ラット脊髄後根神経節急性分離細胞に対するCapsaicinの効果を調べ、直径30 um以下の小細胞がCapsaicin感受性を示し、またそれら細胞の電気生理学的特徴を明らかにした。

5 笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗:ラット脊髄後根神経節分離細胞に対するCapsaicin効果における 細胞外Na+, Ca2+の関与、名古屋大学環境医学研究所年報45巻,1994年 135-137


ラット脊髄後根神経節急性分離細胞に対するCapsaicin効果には細胞外Naが重要であることを明らかにした。

6 笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗:ラット脊髄後根神経節分離細胞におけるBradykinin によるCapsaicin反応の修飾作用、名古屋大学環境医学研究所年報45巻,1994年 138-140


ラット脊髄後根神経節分離細胞を用いてBradykinin の効果を調べ、Bradykinin単独投与では膜電位・膜抵抗に効果が見られなかったが、Capsaicin反応を減弱することを明らかにした。

7笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗: ラット脊髄後根神経節分離細胞に対するpH低下の効果、名古屋大学環境医学研究所年報46巻,1995年 89-91
ラット脊髄後根神経節分離細胞に対するpH低下の効果を調べ、小細胞に特異的にpH反応が見られることを明らかにした。

8 笠井聖仙,水村和枝,熊澤孝朗: Y-tube法の基礎的研究、名古屋大学環境医学研究所年報47巻,1996年 80-82


in vitro標本における薬物投与法について検討し、Y-tube法が優れていることを明らかにした。

9 笠井聖仙, 熊澤孝朗, 水村和枝:ラット脊髄後根神経節培養細胞における低pH反応に対する神経成長因子の効果、名古屋大学環境医学研究所年報48巻,1997年 62-65


ラット脊髄後根神経節培養細胞における低pH反応に対する神経成長因子添加培養の効果を調べ、神経成長因子が低pH反応を大きくすることを明らかにした。

 

【執筆】


1 Yashihiko Chiba, Chieko Shimizu and Masanori Kasai, Modification of female mosquito circadian activity by a series of reproductive behavior, Neurosecretion and the Biology of Neuropeptides (Kobayashi, et al.,eds),pp.497-503, Japan Sci. Soc. Press, Tokyo/Springer-Verlag, Berlin,  (1985)


蚊の一種であるチカイエカの飛翔行動は顕著な日内リズムを示すが、メスはこの飛翔行動パターンが、交尾、吸血、産卵により異なることを明らかにした。

2 痛みの概念の整理(分筆、編集:花岡一雄、田上 恵)。真興交易医書出版部
 「一次求心性線維」「温痛覚」「カプサイシン」「ポリモーダル受容器」


臨床医や医学生および痛み研究者に対して、痛み用語辞書として出版されたもので、「一次求心性線維」「温痛覚」「カプサイシン」「ポリモーダル受容器」の4項について分担執筆した。


【月刊誌】


1 笠井聖仙、慢性関節リウマチのモデル動物を用いた病態発症に対する黒糖摂取の効果について、砂糖類情報 97(2004)9-15


慢性関節リウマチのモデル動物を用いて、黒糖摂取による関節炎発症率および血中物質の濃度変化に対する効果を調べた。その結果、関節炎によって引 き起こされる血中亜鉛の低下および血糖値の低下が、黒糖摂取で抑えられことがわかった。


2 笠井聖仙、慢性関節リウマチに対する砂糖および黒糖摂取の効果:モデル動物を用いての研究、砂糖類情報 113(2006)12-18


慢性関節リウマチのモデル動物に砂糖および黒糖摂取させると関節炎発症の特徴である後肢の腫れと体重低下は抑えられることを見いだした。