2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

岩石力学


岩石三軸試験|岩石の破壊過程|応力ひずみ曲線と変形|断層の変位速度
 上の写真は鹿大型高圧岩石三軸試験機(岩松・中其,1980)にボアスコープを取り付けたところです。この試験機は二軸同圧型で、軸圧50ton,封圧・間隙水圧400MPa,温度200℃の性能があり、電気油圧サーボで駆動します。供試体は19.5mmΦx39.0mmの小さなものです。マイコン自動制御を組み込んだ最初の機械でしたが、今では古くなりました。岩石力学ではこのような圧縮試験機がしばしば用いられます。

◆岩石の破壊過程を目で見る

 地震は地下深くで岩石が破壊したとき、つまり断層が形成されたときに発生します。地下深くで岩石が破壊する様子を見たいものです。そこで三軸試験機に胃カメラを呑ませることを考えましたが、耐圧の問題でメーカーの抵抗に会い、やむなく棒状のレンズ(ロッドレンズ)からなるボアスコープを高圧容器の脇腹に設置しました(岩松・山田,1988)。

 あまり鮮明ではありませんが、このように確かに見えます。右上から左下にかけての割れ目(1次割れ目:主断層)が先ず形成され、しばらく変位が進行した後、左中ほどから右下へ2次割れ目がちょうど出来たときの写真です。

 一連の変形過程をビデオに撮って見ていると、上図のようなことがわかりました。先ず、降伏点を過ぎた頃から、軸方向の微小割れ目があちこちにパラパラと出来ます。しかし、最大強度点に達する頃にはもう閉じて見えなくなってしまいます。最初の応力降下で1次破壊が発生しますが、変位が顕在化して肉眼で見えるようになるのは、もう少し歪みが進行してからです。1次割れ目は、先の微小割れ目のうち都合のいい方向の割れ目がつながって形成されるのでしょう。
 その後、封圧が低い場合には、1次割れ目に沿ってずるずる滑り、真っ二つになってしまいますが、高圧の場合には1次割れ目に沿う摩擦が大きいためでしょうか、上図のようにやがて供試体がビヤ樽型に膨らんできます。次の応力降下で2次割れ目が形成されます。最初の割れ目は一点から始まって順次伝播していく剪断破壊ですが、2次破壊は膨らみが進行した後、瞬時に形成される引張破壊のようです。一見同じように見える割れ目も破壊様式が違うようなのです。
 さらにおもしろいことには、2次割れ目は1次割れ目のところでストップしてしまいます。切りつ切られつの関係から、切られたほうが古いと判断するのが常識でしたが、実は逆の場合もあるのです。従来のように高圧容器から取り出して観察していたのでは、全く正反対の結論を出すところでした。

 次に、割れ目に沿って平行に測った変位量と歪みの関係を見てみましょう。1次割れ目だけしかない間は、当然歪みはこの1次割れ目に沿う変位で解消しますが、2次割れ目が形成された瞬間から、1次割れ目に沿う変位量が減少します。2次割れ目に沿う変位が一部歪みを受け持ってくれるからです。3次割れ目発生のときも同様です。つまり、新しい割れ目が発生すると、平均変位速度が減少するのです。活断層の平均変位速度から地震の再来周期を論ずることがありますが、個々の断層ごとに再来周期を論ずるのは問題がありそうです。その地域の断層系全体が歪みを解消していると考えるほうが妥当なのではないでしょうか(岩松・山田,1989)。


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更新日:1995年10月1日