2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

応用地質関係の資格


技術者固有情報データベース|技術士・技術士補|PE|RCCM|地質調査技士|測量士・測量士補|在学中に取れる資格|APECエンジニア

◆技術者固有情報データベース

 世は資格時代と言われています。地質コンサルタントの業界でも例外ではありません。1995年に建設省は調査設計業務実績情報サービス(TECRIS)という制度を導入しました。この中に左図(クリックすると拡大図が見られます)のような業務担当技術者固有情報データベースがあります。各自の氏名・学歴だけでなく、保有資格(技術士・RCCM・地質調査技士など)やその他評価項目(発表論文名や博士号・特許などの特筆事項)が登録されていますから、一人一人の業績が一目瞭然です。また、業務実績情報データベースでは、管理技術者と照査技術者の氏名が登録されるようになっており、技術士またはRCCM資格保有者と明記されています。これからは資格がないとこれら上級技術者にはなれなくなるでしょう。その上、データベースの活用事例として、発注機関側では配置予定技術者の評価に使うとあります。すなわち、資格がないと仕事も来なくなる時代になったのです。こうしたデータベースは、(財)日本建設情報総合センター(JACIC)からJACIC NETを通じて公開されています。
 以下、代表的な資格について解説します。なお、(株)富士和のホームページにも詳しい解説があります。

◆技術士・技術士補

 技術士法(1957年制定)に基づく国家資格です。科学技術庁所管ですが、(社)日本技術士会が試験を実施しています。技術士の資格がないと一人立ちした技術者と見なされませんから、有資格者を雇わない限り開業もできません。なかなか難関で業界の博士号と言ってもよいでしょう。理学部地学系の学科を卒業した人はまず応用理学部門の技術士を取るのが普通です。その他に建設部門や環境部門の技術士も併せ持っているすごい方もおられます。技術士(技術士第二次試験)の受験資格は7年の現場経験が必要です。技術士試験合格のコツは(有)太田ジオリサーチをご覧ください。
 技術士補(技術士第一次試験)は在学中に受けられます。4年制大学自然科学系学部卒業者なら共通科目(数・物・化・生・地から2科目選択のいわゆる一般教養試験)は免除されます。技術士補の資格があれば、技術士の受験資格が4年に短縮されます。
<連絡先>
〒105 東京都港区虎ノ門4丁目1-20 (社)日本技術士会 Tel. 03-3459-1333

◆PE

 Professional Engineerという国際的な資格で、アメリカの州でエンジニアリング業務を行うためのライセンスです。PEになるためには、4年の工学系大学教育を受けていなければなりません。つまり、工学士の称号が必要です。工学部4年生から受験できる第一次試験(FE試験:Fundamentals of Engineering Examination)にまず合格し、4年の実務経験(OJT)の後、PE試験(Principles and Practice of Engineering Examination)に合格してはじめて資格が取得できます。なお、試験は全て英語で出題されます。
 この資格はアメリカで仕事をするには必須ですが、「技術能力と責任能力が客観的に証明されている者」と見なされますから、世界的にも通用する資格です。最近は日本でも受験できるようになりました。
<連絡先>
〒102 東京都千代田区麹町4-2 (社)日本工業技術振興協会 Tel. 03-3238-5351

◆RCCM

 RCCM(Registered Civil Engineering Consulting Manager:シビルコンサルティングマネージャー)は(社)建設コンサルタンツ協会制定の民間資格です。1991年に制定されました。地質コンサルタント業務を直接管理・照査する責任者になれる資格です。
<連絡先>
〒102 東京都千代田区九段南2-2-4(新九段ビル) (社)建設コンサルタンツ協会 Tel. 03-3239-7992(代)

◆地質調査技士

 地質調査技士は(社)全国地質調査業協会連合会制定の民間資格です。1966年に創設されました。地質調査業務のうち、現場でボーリングや各種計測・試験を行う現場管理者になれる資格です。
<連絡先>
〒113 東京都文京区本郷2-27-18 (社)全国地質調査業協会連合会 Tel. 03-3818-7411

◆測量士・測量士補

 測量は、測量専門の教育を受けた測量技師が担当しますから、地質系出身者が直接タッチすることはまずありません。しかし、国土地理院から認定を受けている地学系や地理系の学科では、在学中に測量学などを履修していれば、卒業と同時に測量士補の資格が取れます。
<連絡先>
〒112 東京都文京区小石川1-3-4 (社)日本測量協会 Tel. 03-3815-5751

◆在学中に取れる資格

 上述のように世は資格時代・実力主義時代ですし、経済の空洞化をひかえ大失業時代が到来するとも言われています。大いに在学中勉強して実力を身につけましょう。なお、在学中取れる資格は技術士補と測量士補です。これらの資格があれば正規の資格を取る年限が短縮される特典がありますので、なるべく在学中にチャレンジしてみましょう。
 技術士補の試験(技術士第一次試験)は例年申し込みが5月初旬で試験は10月中旬です。科技庁のホームページに4月中旬頃試験実施公告が出ますから、注意してください。
 1998年度は、申込受付5月7日~15日、試験10月11日(日)に決まりました。

◆APECエンジニアと大学教育

 冷戦終結後、あらゆる分野でグローバリゼーションが進行しています。貿易自由化はその端的な現れですが、モノだけでなくサービスにも自由化の波が押し寄せています。地質の場合で言えば、地質コンサルタント業務に関する相互参入です。そのために、技術者資格の相互承認や、技術者教育の同等性の認定が求められるようになったのです。APECでも1997年に「APECエンジニアの枠組み」が合意され、具体的な機構づくりが始まっています。APECエンジニアの満たすべき要件(下記参照)の第一が「認定または承認されたエンジニアリング課程を修了していること」となっています。技術士は個人が受験して資格を取得するのであって、大学は無関係でした。しかし、今度は大学のカリキュラムが先ず認定の対象となったのです。工学部はほぼ自動的に認定accreditされるでしょうが、理学部地学系学科のカリキュラムではまず無理でしょう。となると、日本人の地質屋さんは海外で仕事ができなくなります。日本がODAでせっせと援助して、他国の地質コンサルタントがそれで儲けるという時代になる恐れがあります。それどころか、相互承認が建前ですから、国内の仕事をするにも差し支えが出てきます。理学部地学系学科を卒業してもどこも採用してくれないという事態になるかも知れません。
 なお、こうした認定業務は、ISOと同じく民間の非営利団体が当たります。アメリカのABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)や英国のEC・カナダのCEABなどです。これらが理工学教育プログラムのアクレディテーション(Professional Accreditation)を行っています。わが国でも日本工学会・日本工学教育協会・日本品質管理学会などが中心になって日本技術者教育認定機構(JABEE: Japan Accreditation Board for Engineering Education)が設立されようとしています。

<APECエンジニアの要件>

  1. 認定(accredited)または承認(recognized)されたエンジニアリング課程の修了者
  2. 自己の判断で業務を遂行する能力があると各国の管轄機関から認定された者
  3. 上記課程修了後、少なくとも7年間の実務経験を有する者
  4. 少なくとも2年間、重要な業務の責任者としての経験を有する者
  5. 継続的な専門能力開発を満足すべきレベルで維持している者
<JABEEの考えている専門分野>

 上記の日本技術者教育認定機構(JABEE)は1999年6月に発足しました。そこで考えられている専門分野(案)は下記の4分野です。なお、APECが元々設定したフレームワークは下記の9分野でしたから、地質工学・環境・資源など地質関係が日本では落とされています。大いに不満なところです。

APECJABEE
Civil土木および土木関連分野
Structural 
Geotechnical 
Environmental 
Mechanical機械および機械関連分野
Electrical電気および電気関連分野
Industrial 
Mining 
Chemical化学および化学関連分野

<参照サイト>


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更新日:1999年12月28日