2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

応用地質ジャーゴン集


ジャーゴンについて|ジャーゴンの例

◆ジャーゴンについて

 ジャーゴン(jargon)とは、よく言えば素人にはわからない専門語・業界用語のことです。有り体に言うと特殊な集団内でしか通用しない隠語のことで、やくざが場所代のことをショバ代というようなたぐいの言葉です。例えば、地質屋さんがよく使う言葉に「もめている」という語があります。断層破砕を示す言葉ですが、事細かに破砕状態を説明しなくても、「もめている」と一言で済み、大変便利な言葉です。しかし、これで満足していたのでは破砕の研究は進みません。まして、熱水変質でぐじゃぐじゃになったのも、地すべりやクリープで破砕されたのも、全部「もめている」と表現しては、他分野の人たちに誤解を与えます。
 一般に、ジャーゴンの多い世界ほど世間に広く受け入れられないところだと言われています。土木のジャーゴンをちょっと覚えて、いっぱしの土木地質屋気取りで連発している人がいますが、あまり感心しません。とは言え、現場の下請さんたちと話をするのに、難しい学術用語を振り回す衒学的な人も困り者です。やはり、知っていた上で、フォーマルなところでは使わない(もちろん、論文では厳禁)、そうしたけじめが大事なのでしょう。
 何はともあれ、大学を卒業して業界に入った人がまず最初に戸惑うのがこれですので、新卒者のために簡単に解説しておきます。何しろ本当の専門語ないし学術用語だったら、地学事典や土木用語辞典など専門分野の辞書に載っていますが、ジャーゴンはどの本にも載っていないのが普通ですから。

◆ジャーゴンの例

 卒業生から戸惑った例として聞かされたものを以下に列挙します。この他に戸惑った経験がおありでしたら、その言葉を教えてください。

★ 傾斜の呼称

 法面(のりめん)など斜面の勾配(傾斜角)は、一般社会では水平面から測った角度で表しますが、業界では左図のように高さと水平距離の比で示します。そして、1:0.8だと8分(ぶ)、1:1.5だと1割5分などと呼びます。普通の場合0.8は8割ですから、間違わないでください。なお、8分は約51度、1割5分は約34度に相当します。

★ 平米(へいべい)

 平方メートル(m2)のことです。

★ 立米(りゅうべい)

 立方メートル(m3)のことです。

★ 盛土(もりど)

 広辞苑など一般の辞書には「もりつち」と載っています。

★ ○エン○セン

 1メートル50センチのことを、1エン50センなどと言うことがあります。

★ さし目

 斜面の傾斜に対して、節理などの割れ目が逆方向に傾斜している時に使います。

★ 安全側・危険側

 工事に悪い影響を与える要素が少なければ安全だし、多ければ危険というのが普通の考え方です。しかし、工事現場では、そうした悪い要素が多いとして慎重な設計と過剰投資を行うことを安全側の判断といい、逆に悪い要素が少なく地質条件がよいとしてあまり投資しないことを危険側の判断といいます。こう書くと、なるほどと思われるかも知れませんが、断層破砕帯や軟弱層が多く露出していると考えて描かれた地質断面を安全側の断面図、破砕帯や軟弱層が少ないと考えた地質断面を危険側の断面図などと言われると戸惑います。
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更新日:1997年11月8日