2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

環境地質学


共生の時代|屋久杉からみた大気汚染|屋久島環境文化財団|環境月間|推薦図書|環境認証講演会|1997年度集中講義

◆21世紀は共生の時代

 産業革命に端を発した工業化社会をとことん推し進めたのが20世紀でした。自然は征服の対象であり、そこから資源を収奪し、人類に都合のよいように改造してきたのです。万物の霊長とおごり高ぶり(この考え方は人間中心の天動説です)、自然環境を乱暴に破壊してきました。弱肉強食は人間社会でも実践され、資本主義と社会主義が互いに相手の打倒を目指してしのぎを削りました。宗教でも非妥協的な原理主義が台頭して他者の撲滅を誓って不毛のテロ活動が行われています。
 しかし、今やこの路線は破綻しました。資源制約と環境問題が人類の前に立ちはだかっています。人類の利益だけを追求するエゴは通用しなくなっています。人類もまた自然の一部にしか過ぎないとの認識が必要です。自然と人類との共生、宗教・イデオロギーの違いを乗り越えた平和共存が求められています。動物は決してオーバーキルはしませんし、たとえ天敵であってもそれなりに折り合いをつけて暮らしています。自然界の知恵に学ばなければなりません。21世紀は「共生」がキーワードになるでしょう。
 応用地質学も自然を人間本位に改造することに奉仕してきましたが、これからは自然環境を保全し、人間と動植物双方にとってよりよい環境を創造していくことに力を尽くさなければなりません。持続可能な開発sustainable developmentに地質学の立場から貢献するのが環境地質学です。

◆屋久杉からみた大気汚染

 上の図(岩松・室住,1992)を見てください! 200年ほど前から鉛やカドミウムの濃度が増え続け、50年前くらいから急速に高くなってきたことがわかります。銅・亜鉛・ニッケル・銀などでも同様です。また、鉛の同位体比を調べてみると、昔(赤白抜き:100年前以前)は岩石のそれと同じだったのが、最近(赤塗りつぶし:80年前以降)は都市浮遊塵のそれと同じになってきたことがわかります。世界遺産条約にも登録され、わが国で一番自然が残っていると言われる離島の屋久島でも、確実に大気汚染が忍び寄っているのです。
 このように地球環境の変化をとらえ解釈するだけでは環境地質学とは言えません。地域アメニティーの確立に実践的に貢献する姿勢が重要です。しかし、まだまだ未確立の分野で、人によってさまざまな考え方があります。

◆屋久島環境文化財団募金募集

縄文杉(樹齢7,200年とか)
 本財団は、屋久島の優れた自然を守り、自然と共生する地域づくりを進めることを目的とした財団で、井形前鹿大学長が理事長をしておられます。屋久島環境文化村構想を推進しています。
募 金:1口個人1万円、法人5万円       
振込先:鹿児島銀行県庁支店 普通預金口座 1050780

1996年7月20日屋久島環境文化村センターがオープン
◎国際シンポジウム「世界の常緑湿潤林生態系と人との共生―世界自然遺産屋久島から―」
日時:1996年10月19-25日
場所:鹿児島大学稲盛会館及び鹿児島県屋久島環境文化研修センター
1. 照葉樹林の生態と管理並びに住民との共生
2. スギ科の針葉樹林の生態と管理及び住民との共生
3. 各国におけるマブ活動の報告と生物圏保護区のネットワークに関する討論
4. 野外見学と討論
5. 屋久島生物圏保護区の評価と将来のアジア―太平洋域における相互協力活動

◆毎年6月は環境月間,6月5日は環境の日

環境庁の1997年環境月間ポスターより

テーマは「地球が発熱! あなたが止める温暖化」

◆推薦図書(絵本)

寮美千子訳・篠崎正喜画(1995): 父は空、母は大地―インディアンからの手紙―. パロル舎, 40pp. \1,700.
環境庁企画調整局調査企画室監修(1995): マンガで見る環境白書Ⅱ―豊かで美しい地球文明を―. 大蔵省印刷局, 50pp. \300.
ランドマクナリー社(原剛監訳)(1995): 子ども地球環境地図. 中央法規, 79pp. \2,678
バード・ベイラー著/北山耕平訳(1994): すべてのひとに石がひつよう. 河出書房新社, 36pp. \1,600.
松谷みよ子編(1992): 椿の湖―地球の創造・調和・破壊・再生を民話の視点から考える―. 童心社, 93pp. \1,800.
ハイ・ムーン(1990): 絵コロジー―地球にやさしく暮らすための絵本―. 中部リサイクル運動市民の会, 48pp. \800.

◆環境認証講演会

 最近は企業も環境問題に真剣に取り組むようになりました。環境に優しい工場に登録証を出す第三者機関に日本環境認証機構JACOがあります。いわば消防のマル適マークのようなものです。NHKテレビ等で報道されたのでご存じの方も多いと思います。この度、環境認証部主席の伊藤 勲氏が鹿児島のIC工場の査察にお出でになる機会に、特別講演をお願いしました。
日時:1997年6月16日(月)午後2時30分~午後4時
場所:鹿大理学部1号館211号教室
講師:伊藤 勲氏(日本環境認証機構)
演題:環境マネージメント(EMS)の第三者認証の実際

◆1997年度集中講義

 来年度(1997年度)から、本学科は地球環境科学科に改組される予定です。そこで、最初の非常勤講師として金沢大学の田崎和江教授をお招きし、「環境地質学」の集中講義をしていただくことになりました。看板だけ環境地質学で実態は地質学古生物学といった講座が多い中で、本腰を入れて環境に取り組んでおられる数少ない先生のお一人です。講義は7月初旬に予定されています。乞御期待。


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更新日:1998年5月26日