2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

土木地質学


土木地質学の定義|普通の地質図と土木地質図

土木地質学の定義と内容

 人間が快適な生活を営んでいくためには、さまざまな社会資本の充実が必要です。建物・道路・鉄道・トンネル・橋梁・ダムなどの土木建設に地質学の立場から貢献するのが土木地質学です。地すべり・土石流・震災などについては、災害地質学と土木地質学の両方に含められますが、前者は現象の解明に重点を置き、後者は対策面を強調する場合に用いられるようです。
 ちなみに、横田修一郎島根大学総合理工学部教授(元本講座助教授)の著書『理学部学生と理学部出身者のための土木地質学』の構成は次のようになっています。
 第1章 土木地質学の立場
 第2章 岩石の物理的性質と力学的性質
 第3章 岩盤の力学的性質
 第4章 岩盤の調査と予測
 第5章 土の力学的性質
 第6章 様々な地質調査方法と評価
 第7章 斜面の安定性―評価と対策
 第8章 岩石、岩盤、土の性質と土木構造物
 第9章 土木地質学と環境地質問題
 第10章 土木地質調査と地質情報処理
[注]出版社:斯文堂(株)鹿児島市南栄3-1 Tel. 0992-68-8211 Fax 0992-69-5198

普通の地質図と土木地質図

岡本・他(1984)『新体系土木工学14 土木地質』より

 普通の地質図は、岩相と地質時代に基づいて塗色されます。例えば、どんなに風化していても、同じ岩体なら同一として扱われます。しかし、そこに何か構造物を作るとなると、それでは困ります。中生代の砂岩層地域で地質調査をする場合を考えてみましょう。堆積学的研究が目的なら、砂岩の鉱物組成や堆積構造、古流向などはきちんと記載しなければなりません。化石なども注意深く探して、ジュラ系か白亜系か地質時代を決める必要もあります。一方、そこにトンネルを掘るための調査でしたら、上記の事項はほとんど意味を持ちません。それよりも、砂岩の強度、風化の程度、風化殻の厚さ、節理や断層など割れ目の密度と方向、湧水の有無などが問題になります。トンネル掘削の難易や掘削時の落盤事故などに直結する大事な情報なのです。地質時代も、中生層と新第三紀層とでは物性が異なりますから問題になりますが、中生層同士では物性にほとんど差がなく、ジュラ系でも白亜系でもどちらだって構いません。
 また、崖錐堆積物や斜面堆積物なども、一般の地質図では省かれるのが普通です。しかし、地すべりやがけ崩れの素因になることがありますので、土木地質図では詳細に記入することが必要です。断層も、単なる地層のずれを示す境界ではなく、破砕帯の幅や破砕様式(ガウジか断層角礫か)も詳しく観察する必要があります。断層が水みちになったり、逆に地下水を遮断したりすることもあり、どちらの役割を果たすのか的確な判断が求められます。トンネルの出水事故の原因や地すべりの素因になることあるからです。もしもその断層が活断層なら一大事、地震災害の心配もあります。
 いずれにせよ、土木地質学的な地質調査では、構造地質学的岩石力学的な見方が大変重要になります。


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更新日:1996年9月21日