RIMS研究集会
「表現論と非可換調和解析における新しい視点」

Program (in Japanese)

Program (in English)

講演の要旨

9月16日(火)

西山享
半単純軌道の漸近錐と退化主系列表現

g = k + s をカルタン分解としたとき、s の半単純元の K_C 軌道の漸近錐は(対称対 の) Richardson 冪零軌道の和になっていると期待される。講演では偶冪零軌道に附 隨する Richardson 軌道がこのようにして得られることを述べ、退化主系列表現の隨 伴サイクルや K-type への分解、部分旗多様体上の K_C 軌道との関係について述べ る。(最後の部分は Peter Trapa, Dan Ciubotaru との共同研究である。)

阿部健
Level-rank duality of conformal blocks of affine symplectic Lie algebra and symplectic strange duality

代数群$G$のコンパクト化$X$で補集合が正規交差 になっているものの構造は、De Concini-ProcesiやBrion らによって研究されている。 Kauszは、代数曲線上のベクトル束のモジュライへの応用のために、 $GL(n)$のコンパクト化をgeneralized isomorphismというものの モジュライとして構成した。 この講演では、Kauszの仕事のsymplectic類似を紹介したい。

直井克之
Construction of extended affine Lie algebras from multiloop Lie algebras

affine Lie algebra の Kac-Moody Lie algebra とは異なる一般化として、 extended affine Lie algebra と呼ばれる Lie algebra の class を考える。 ほとんどの extended affine Lie algebra は、有限次元 simple Lie algebra と、 有限個の互いに可換な有限位数自己同型を用いて構成できることがすでに知られている。 この講演では、上の構成によって得られる extended affine Lie algebra が どのような場合に(適当な意味で)同型となるか、 という問題に関する結果をお話ししたい。

阿部紀行
On the existence of homomorphisms between principal series of complex semisimple Lie groups

主系列表現の間の準同型を分類するという問題意識は古くからあったようである が,未だほとんど解決されていない難問でもある.講演では,複素Lie群の場合 に非自明な準同型が存在するための必要十分条件を与える.

9月17日(水)

松本詔
プランシェレル測度のジャック版の極限定理

対称群のプランシェレル測度は,ヤング図形全体の上の確率測度である. ヤング図形の箱の個数$n$を大きくしていくときの,行の長さ$\lambda_i$の極限分布に興味がある. 本講演では,プランシェレル測度のジャックのパラメータ$\alpha>0$の入った拡張を扱う. ヤング図形の列の長さが制限されている際の,$\lambda_i$の極限分布が, G$\beta$Eランダム行列の固有値分布に一致することを見る.

奥田隆幸
不変式環におけるzeta多項式と微分作用素の関係について

MacWilliams変換と呼ばれる変換で不変な2変数斉次多項式を、 formally self-dualなformal weight enumerator(以下、self-dualなf.w.e.)と呼ぶ。 self-dualなf.w.e.に対して、zeta多項式と呼ばれる1変数多項式を定義する。

特定のself-dualなf.w.e.の無限列に対して, 対応する全てのzeta多項式の、全ての零点が、複素平面上で同一円周上に乗る であろうと予想されながら、まだ証明されていない例がいくつかある。

TypeIV extremal で length=0(mod 6) の場合には、 全ての零点が同一円周上に乗るという事が証明されている(Duursma 2003[4])が、 length = 2,4 (mod 6) の場合は未解決であった。 この講演では、TypeIV extremal で length = 4 (mod 6) の場合に、 zeta多項式の零点の振る舞いが、length = 0 (mod6) の場合と対応している事を 不変式に対する微分作用素を用いて示す。 特に、length = 4 (mod 6)の場合にも、 全てのzeta多項式の零点が、同一円周上に乗るということを紹介したい。

菊地克彦
階数4のmultiplicity-free作用に関する不変式

連結compact Lie群 K が有限次元複素vector空間 V に 線型に作用しているとする. 作用 (K, V) がmultiplicity-freeであるとは, V 上の多項式環に誘導される K の作用において K の既約表現が重複度1で現れることである. 今回の講演では, 階数4のmultiplicity-free作用 (K, V) について, K の各既約成分に自然に対応する K-不変式を具体的に記述する. また, 各規約成分には K-不変微分作用素も自然に対応するが, その K-不変微分作用素の具体的な形について 現在までの計算結果を報告する. さらに, multiplicity-free作用は強可視的であるが, その可視性を表すsliceとして 不変式や二項係数の対称性とも結びつき, かつより対称性が大きいものを与える.

笹木集夢
可視的な線型空間の分類

複素線型空間V上の一般線型群の連結な複素簡約閉部分群をGとして, VにおけるGの線型作用を考える. このとき,V上の多項式環上にGの表現が自然に定義されるが, この表現が無重複に既約分解されることと, 複素線型空間VにおけるGのコンパクトな実型の線型作用が強可視的であることは同値である. この講演では,線型な強可視的作用をもつ複素線型空間Vを スライスの構成の観点から分類することを中心にお話したい.

吉野太郎
Lipsman予想の反例と代数多様体の特異点について

リー群$G$が多様体$M$に作用しているとき, その商空間 $G\backspace M$のハウスドルフ性は, 不連続群論の研究において 重要である. 特に, ベキ零リー群が線型空間にアファインかつ 自由に作用するとき, 商位相は常にハウスドルフであるとLipsmanは予想した. しかし, この予想には反例があり, 商位相は必ずしもハウスドルフでない. この講演では, この非ハウスドルフ性を`可視化'したい. より正確には, $M$への$G$作用から, 自然に代数多様体$V$が定義され, $V$の特異点が 商位相の非ハウスドルフ性に対応することを見る.

9月18日(木)

宮崎直
$SL(3,R)$の一般主系列表現のWhittaker関数の明示公式

Whittaker 関数の明示公式はその保型形式への応用において特に重要である. $SL(3,R)$の主系列表現に関するWhittaker関数の明示公式はクラス1の場合は Bumpによって 得られており,クラス1でない場合については眞鍋,石井,織田によって得られ ている. ここでは$SL(3,R)$の一般主系列表現に関するWhittaker関数について類似の結果 を紹介する.

長谷川泰子
Principal series Whittaker functions on the real symplectic group of rank 2

2次シンプレクティック群のSiegel極大放物型部分群 から誘導された一般型主系列表現に対するWhittaker 関数の級数表示と積分表示を与えることを目的とし, 極小放物型部分群から誘導された一般型主系列表現に 対するWhittaker関数の明示公式を与える.

廣惠一希
GL(4,\mathbb{R})の退化主系列表現の一般Whittaker関数

GL(n,\mathbb{R})の退化球主系列表現の一般Whittaker模型の空間は, 対称空間GL(n,\mathbb{R})/O(n)上のC^{\infty}級関数空間の中で, ある微分作用素達のkernelとして特徴付けられる. この微分作用素達は,大島利雄氏によって得られた退化主系列表現に対する Poisson変換の像を特徴付ける微分作用素達となり, その明示的な表示が氏によって得られている. また,こうしたkernel定理はユニタリ最低ウエイト加群の 一般Whittaker模型に対し,山下博氏によって得られており, これはその類似にあたる. こうした背景の下,比較的ランクの低い群を対象に、 いくつかの具体例を考えたい.そこでは一般Whittaker関数達は 一変数変形Bessel関数、二変数Hornの合流型超幾何関数によって表される.

示野信一
Heckman-Opdam hypergeometric functions and their specializations I
大島利雄
Heckman-Opdam hypergeometric functions and their specializations II

Heckman-Opdam の超幾何函数について得た3つの結果について概説する。
1. Heckman-Opdam の超幾何函数の合流(極限移行)で得られるWhittaker 函数などの超幾何函数の性質と特徴づけ
2. Heckman-Opdam の超幾何函数のWeyl群の1次元の壁への制限が満たす 常微分方程式の導出とその応用
3. Heckman-Opdam の超幾何微分方程式系の異なる実形における解析解の 記述(半単純対称空間 $G/K_\epsilon$ に対する大島-関口の結果の拡張)

9月19日(金)

山盛厚伺
古典領域上のgeneralized Laplacianについて

本講演では2006年に今村、岡本、塚本、山盛によって 導入された古典領域上のgeneralized Laplacianとその固有値について 述べる。

伊師英之
連続ウェーブレット変換と非可換フーリエ解析

連続ウェーブレット変換の理論は位相群の2乗可積分表現と密接な関係がある ことが知られており、とくにベクトル空間上のアファイン変換群に対応する ウェーブレットは盛んに研究されている。我々はベクトル空間の代わりに ユニモジュラー群を考えた場合に、プランシュレルの公式を道具として 既存の結果を大きく拡張できることを示す。

Last update: September 6, 2008