2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

火山工学


火山工学|桜島爆発記念碑|桜島の土石流|旧石器時代の火山災害|霧島山火山防災マップ|岩手山火山防災ハンドブック|がまだす計画|火山工学討論会|火山工学セミナー

◆火山工学

 雲仙普賢岳の噴火はおさまったようですが、土石流災害は今後ずーっと続くだろうと言われています。伊豆大島で島民全員が避難したこと、有珠山の噴火で洞爺湖温泉街が被災したことなどまだ記憶に新しいところです。このように日本列島は環太平洋火山帯に属していますから、火山災害とは永久につき合っていかなければなりません。今まで火山現象そのものを研究する火山学はありましたが、そこに住む人間のほうを主体にした学問はありませんでした。そこでこの度、土木学会では火山工学という新しい分野を確立しようと研究委員会(陶野郁雄委員長)を発足させました。左は土木学会の発行した一般向け小冊子です。鹿児島は火山のメッカですから、わが講座でもこれに協力していくことにしました。

◆桜島爆発記念碑

 東桜島小学校校庭には櫻島爆發記念碑が建っています(写真の人物は村内必典先生)。裏面の碑文にはゆゆしいことが書いてあります。後段の「本島ノ爆発ハ古来歴史ニ照シ、後日復亦免レザルハ必然ノコトナルベシ。住民ハ理論ニ信頼セズ、異変ヲ認知スル時ハ、未然ニ避難ノ用意尤モ肝要トシ、…」のところが有名です。
 大正噴火(1914)の数日前から海岸に熱湯が沸いたり旧噴火口より白煙があがるなどの異変が続いたので、東桜島村長が測候所(現鹿児島地方気象台)に問い合わせたところ、「桜島ニハ噴火ナシ」との返事があったそうです。多くの村人は本能的に身の危険を感じて逃げたため事なきを得ましたが、知識階級は学問を信頼して避難しなかったため被災してしまいました。収入役のように殉職した人もいます。そこで、噴火10年後、村長が建てたものです。これは学問に対する不信と怨念の碑です。
 私たち学問に携わる者は、この碑文を肝に銘じなければなりません。住民にとって信頼に足る学問、火山工学を創造・発展させていくことが私たちの責務だと思います。
<注>
 なお、碑文はすり減って読みにくいので、溶岩公園にあるイミテーションの碑文ですが、全文を読みたい方はここをクリックしてください。
 また、詳しくは柳川喜郎著『桜島噴火記 住民ハ理論ニ信頼セズ…』(NHK出版)をご覧ください。著者は時の人岐阜県御嵩町長(元NHK解説委員)です。

◆桜島の土石流

建設省桜島砂防のマスコット・火山君
桜島総合土石流対策(建設省大隅工事事務所)  桜島では年間約70回の土石流が発生しています。中でも野尻川が一番多く、平均20回を超え、流出土砂は50~100万立方メートルとのことです。そのため、河口が毎年20mも前進し続けています。昔は国道がしばしば不通になりましたが、国道の橋を高くしてその下を土石流が通過するようにしたため、最近は大丈夫になりました。
昭和46年昭和62年
 建設省大隅工事事務所(1988)によれば、土石流発生時の降雨は、有効雨量Re=10~80mm、有効雨量強度Re/Te=5~10mm、ピーク10分雨量=5~10mm、有効雨量継続時間=1~2時間だそうです。

◆旧石器時代の火山災害?

(1996.1.27付南日本新聞)
 鹿児島県揖宿郡喜入町の帖地遺跡から旧石器時代の石器や礫器が出土しました。大隅降下軽石層(2.4万年前)の直下からの出土です。もしかすると、当時ここに住んでいた旧石器時代人は、シラスを噴き出した姶良カルデラの活動による火山災害で犠牲になったのかも知れません。
 薩摩降下軽石層(1.1万年前)の直下にも生活層がありますから、この時も桜島爆発の犠牲者が出たことでしょう。
<注1>
 大隅降下軽石は、鹿児島湾奥部にある姶良カルデラが入戸火砕流(いわゆるシラス)を噴き出す直前に降らせた先カルデラ噴出物です。
 薩摩降下軽石は、桜島火山誕生時に真っ先に降らせた軽石です。
<注2>
 1995年9月、指宿市考古博物館「時遊館COCCOはしむれ」に火山・災害考古学研究会が発足しました。そちらもご覧ください。

◆霧島山火山防災マップ

 桜島に続いて霧島山火山防災マップがこのほど完成しました。霧島山火山噴火災害危険区域予測図作成検討委員会(委員長下鶴大輔先生)監修です。同委員会には本講座の井村先生と火山学講座の小林先生も入っておられます。住民向けと行政向けおよび学術用と3種類ありますが、上図は住民向けのものです。火砕流や土石流の予想範囲および火山灰・軽石の降下予想範囲(東風と西風の場合)などが記載され、噴火に対する心構えなど諸注意も書かれています。また、1997年には薩摩硫黄島・口永良部島・中之島・諏訪之瀬島の火山災害危険区域予測図も発行されました。

◆岩手山火山防災ハンドブック

 1998年1月頃から岩手山では火山性の地震が頻発し始めました。9月3日16時58分頃、岩手山の南西約10kmでM6.1の地震が発生、火山噴火が心配されています。そこで、10月に岩手山火山災害対策検討委員会では岩手山火山防災ハンドブック、岩手山火山防災マップ(1:50,000)などを公表、住民に注意を呼びかけました。

◆がまだす計画

 雲仙の溶岩ドームはこのほど正式に「平成新山」と名付けられ、国土地理院の地形図にも採用されました。これを機に島原では「島原地域再生行動計画」愛称「がまだす」計画が策定されようとしています。島原の方言で「がんばる」という意味だそうです。火山工学は、防災だけでなく、こうした復興・建設にもお役に立てるのではないかと考えています。
 なお、九州大学島原地震火山観測所の太田一也所長は、今回出来た溶岩ドームは普賢岳ドーム群の一つに過ぎないとして、「平成新山」と称するのには反対しておられるとのことです。

◆アジア活火山サミット併催討論会

日時:1998年11月3日(火)
場所:鹿大稲盛会館
主催:土木学会火山工学研究小委員会
テーマ:火山とくらしと防災―火山工学の展望―
第1部 火山と仲良く暮らすには
基調講演「環境に配慮した火山防災施設について」…和田健二(建設省桜島砂防出張所)
パネルディスカッション「火山と仲良く暮らすには」
第2部 防災アセスメントと地域防災計画
基調講演「活火山地域の防災計画と課題…廣井 脩(東大社会情報研究所)
パネルディスカッション「防災アセスメントを地域計画に生かすには」

◆火山工学セミナーin鹿児島'97

日時:1997年11月16日(日)~17日(月)
場所:鹿大稲盛会館
主催:土木学会火山工学研究小委員会
テーマ:火山工学とは?
火山工学の提唱…陶野郁雄(国立県境研究所)
火山の恵み…後藤恵之輔(長崎大学工学部)
活火山地域の防災対策…高橋和雄(長崎大学工学部)
火山噴火、地震時の避難行動…宮本邦明(鳥取大学地域共同研究センター)
テーマ:九州の自然と災害
雲仙普賢岳…磯 望(西南学院大学)
鹿児島県北西部地震…岩松 暉(鹿児島大学理学部)
出水土石流災害…下川悦郎(鹿児島大学農学部)
火山と健康…矢野栄二(帝京大学医学部)・東 博文(鹿屋体育大学)
テーマ:火山噴火時の防災に関する研究会
基調講演…高橋 保(京都大学防災研究所)
火砕流の流動機構と数値計算手法…辻本(京都大学防災研究所)
土石流・泥流ハザードマップの作成上の問題点…高濱(砂防・地すべりセンター)
避難システムについて…石橋晃睦(日本工営)
公開シンポジウム
火山の防災と利用…陶野郁雄(国立環境研究所)
火山情報伝達と避難…廣井 脩(東京大学社会情報研究所)
島原での対応…高橋和雄(長崎大学工学部)
火山活動と噴火予知…千葉達明(アジア航測)
火山と健康…矢野栄二(帝京大学医学部)

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更新日:1998年10月26日