2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

温泉地質学


鹿児島市内温泉湧出機構|鹿児島市は温泉天国|県内公営温泉施設|山川地熱発電所

◆鹿児島市内温泉の湧出機構

 上の図は鹿児島市内の温泉の賦存状況と地質との関係を示しています(露木,1992)。主として四万十層群中の割れ目・空隙に賦存する孔底温度60℃前後の高温温泉を採取しています。結果として、500m~800mの深井戸から採取している訳です。泉質は炭酸水素塩泉型の単純泉ないし重曹泉が一般的です。単純泉は無色透明無味無臭なので、タオルが汚れないため温泉ギャルに喜ばれます。海岸に近い浅井戸からは30~40℃と比較的低温の塩化物泉が出ます。この塩類の起源については、花倉層などに含まれていた化石海水に由来するという説と現在の海水がしみ込んできたとする説とがあります。
 なお、昔、温泉は地球創世期の水が地球深部から湧き出してきたとして処女水とか岩漿水(マグマ水)と呼ばれ、何にでも効く魔法の水のように思われていました。しかし、その後、温泉水と周辺地下水のD/H比が等しいこと、温泉水のトリチュウム年代が極めて新しいことなどがわかり、温泉は天水が暖められたものに過ぎないということになりました。そこで、故露木鹿大名誉教授(本応用地質学講座の創設者)は温泉を地域地下水という概念で捉え直そうと提唱されました。万病に効く魔法の水だと思っていたのに、それがただの地下水だったとは誠に夢のない話ですが、このため温泉探査方針が一変したのです。昔は桜島の古里温泉のように火山山麓のような特殊なところにしか出ないと考えられていたのに、地下水と熱源さえあればどこでも出るということを意味するからです。こうして鹿児島市内至るところで天然温泉の銭湯が出現したという訳です。

<参考文献>
黒川達爾雄(1997): 『いで湯の国・鹿児島』 春苑堂出版, 228pp. ドリコ(株)・特集 温泉開発

◆鹿児島市は温泉天国

 鹿児島市内の銭湯はほとんどすべて天然温泉です。何しろ原料はタダですから、ボイラーを焚く銭湯より安い(\300)のです。それに断水の心配がありませんので、1993年の大災害で断水した時も、鹿児島市民は飲料水には困ったものの清潔に過ごすことができました。また、単なる大浴槽があるだけでなく、超音波風呂・低周波風呂・気泡風呂・うたせ湯・赤外線サウナなどがそろっており、その上岩風呂・ジャングル風呂となかなか豪華でリゾートホテル顔負けです。大抵大きな駐車場も付いています。レストランやゲームセンターまで付いているところもあります。
 鹿児島に元気なお年寄りが多いのも、朝飯前にゲートボールをして朝風呂に入るからなのかも知れません。鹿児島に来たら、ホテルの狭いユニットバスはやめて、銭湯に行ってみましょう。かごっま(鹿児島)弁も聞かれ、人と人との裸のふれ合いがあります。
 なお、写真は鹿児島県発行のリーフレットから引用しました。決して女湯を盗み撮りした訳ではありません。

◆県内公営温泉施設

 元々鹿児島県は温泉の多い県ですが、ふるさと創生事業であちこちの町で温泉が掘られ、公営の温泉センターが作られました。公営ですから料金も安く設備も立派です。町民以外にも開放されています。写真は鹿児島県最北端の町東町の東泉望です。以下の資料は(社)鹿児島県観光連盟『かごしま観光オールガイド』(1998.3発行)に一部追加訂正しました。
市町村名名 称泉 質大人料金
高尾野町高尾野温泉センターもみじ弱アルカリ性単純泉\300
野田町野田町健康増進センター炭酸水素塩泉\280
東町太陽の里温泉センター「東泉望」塩化物泉\300
長島町長島温泉センター炭酸水素塩泉\300
東郷町町民センターわかあゆ荘炭酸水素塩泉\150
樋脇町上の湯公衆浴場アルカリ単純泉\100
樋脇町下の湯公衆浴場アルカリ単純泉\100
入来町柴垣湯炭酸水素塩泉\100
入来町アゼロ湯塩化物泉\100
祁答院町黒木温泉塩化物泉\100
祁答院町大村温泉硫酸塩泉\100
薩摩町観音滝温泉「滝の宿」単純泉\300
吉松町森の館「湯ったり館」単純泉\200
横川町横川町健康温泉センター単純泉\200
溝辺町溝辺町老人福祉センター単純泉\210
蒲生町くすの湯炭酸水素塩泉\240
加治木町龍門滝温泉ナトリウム塩化物泉\250
牧園町関平温泉単純泉\300
牧園町シンフォニースパ単純泉\200
里村里村交流センター甑島館塩化物泉\300
市来町市来ふれあい温泉センター硫酸塩泉\220
東市来町国民保養センター「江口浜荘」単純硫黄泉\200
桜島町さくらじま白浜温泉センターナトリウム塩化物泉\300
日吉町日吉町福祉センターアルカリ性単純泉\150
松元町松元町平野岡健康づくり公園単純アルカリ泉\280
鹿児島市かごしま温泉健康プラザ \300
吹上町吹上町公衆浴場単純硫黄泉\190
喜入町喜入八幡温泉保養館アルカリ性単純泉\280
開聞町レジャーセンターかいもん単純泉\500
頴娃町えい別府温泉センターナトリウム炭酸水素塩泉\280
頴娃町アグリ温泉―えい―単純泉 
知覧町知覧温泉センター単純泉\280
川辺町ふれあいセンターわくわく川辺弱硫黄泉\280
加世田市かせだ海浜温泉ゆうらく単純泉\280
山川町ヘルシーランド塩化物硫酸塩泉\300
財部町財部町温泉健康センター炭酸水素塩泉\300
末吉町メセナ住吉交流センターアルカリ性単純泉\300
大隅町弥五郎伝説の里弥五郎の湯トゴール泉\310
有明町蓬の郷単純泉\300
大崎町広域交流活性化センターあすぱる大崎炭酸水素塩泉\300
大根占町トロピカルガーデンかみかわハーブエキス\300
内之浦町内之浦温泉かなえの湯単純硫黄泉\300
根占町ねじめ温泉ネッピー館ナトリウム塩化物強塩泉\300
佐多町サタデイゆ弱アルカリ性低張泉\300
中種子町中種子町温泉保養センター単純泉\300
南種子町南種子町河内温泉センター単純泉\300
上屋久町横川温泉硫黄泉\300
屋久町国民宿舎ホテル屋久島温泉単純硫黄泉\200
十島村中之島西区温泉 無料
龍郷町保健福祉センター「どぅくさぁや館」 \500
宇検村やけうちの湯 \500
知名町フローラル館純天然温泉トゴール湯トゴール湯\800
★ 空欄の部分、ご存知でしたらご一報ください。

◆山川地熱発電所

 鹿児島は火山国ですから、温泉だけでなく地熱資源も豊富です。霧島や山川で地熱発電が行われています。霧島は活火山の熱を直接利用していますが、山川(写真)は地下にある高温貫入岩体を熱源としています。石油資源開発(株)が10数年前から詳細な地質調査と物理探査によって発見しました。石油も熱水も流体鉱床である点では同じですから、石油探査で培った技術が役立ったのです。


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更新日:1999年12月28日