2000年3月24日、鹿児島大学理学部地学科最後の卒業生を送り出しましたので、このホームページはこの日をもってフリーズしました。もう更新しません。悪しからず。
 なお、「かだいおうち」は日本における大学研究室ホームページの第1号です。歴史的遺産としてここにアーカイブしておきます。

災害地名


災害と地名|鹿児島の災害地名

◆災害と地名

 古くからある地名には、その地域の自然条件を反映したものがあります。例えば、鹿児島で迫(さこ)というと谷底平野のことを言います。房総半島でいう谷津です。犬迫という地名が鹿児島市にありますし、大迫さんという人名もあります。恐らくご先祖がどこか開けた谷底平野のご出身なのでしょう。中には、災害と密接に関わる地名もあります。こうした地名のところに住む人は災害に対して備えを欠かしてはなりません。
 ただ、地名に関してはアイヌ語や朝鮮語あるいは伝説にこじつけたりする解釈がしばしば行われますので、単純にはいきません。詳しくは小川 豊氏の『災害と地名』や『崩壊地名』などをご覧ください。以下の字義についてはこれらの本から引用しました。

◆鹿児島の災害地名

 それでは鹿児島に見られる災害地名を探してみましょう。

あれだし

 土石流扇状地を洗出(あれだし)と言います。これは鹿児島市田上の洗出(現在では標準語風に「あらいだし」と発音します)というバス停ですが、武岡方面からの沢が田上川に合流するところです。田上川と平行に走る旧街道(中園線)はこの部分だけ少し盛り上がっていますから、下に扇状地堆積物があるのでしょう。

くさ

 「くさ」は枯れ草などが腐って異臭を放つ意味から湿地を意味するそうです。1993年の台風13号により、川辺郡川辺町小野字草場で土石流が発生、9名の犠牲者が出ました。

くえ・くずれ

 「くえ」は崩と書きます。文字通り崩壊地のことです。姶良郡姶良町の赤崩は安山岩の切り立ったがけですから、昔崩壊があったことでしょう。

けくら

 「け」はけ(異)やけ(消)に通じ、異常な現象が起きて土地が消え去るという意味だそうです。また「くら」は「抉る」の変訛した語だそうです。1993年8月6日の有名な鹿児島豪雨災害では鹿児島市花倉の花倉病院が土石流の直撃を受け、15名の犠牲者が出ました。

びしゃもん

 「びしゃご」は鶚(みさご)のことで、魚を捕らえるとき急降下するさまから、山腹が滑落するさまを連想したものだそうです。毘沙門信仰と合わさって、地鎮も含めての命名なだろうと小川氏は述べられています。日置郡日吉町毘沙門では、1993年9月20日、わずか6mmの雨で花崗岩の山が地すべりを起こし、2名が犠牲になりました。

ひら

 「ひら」というと平らを意味すると思われがちですが、古事記に「黄泉比良坂(よもつひらさか)」とあるように「ひら」は傾斜地・急傾斜地・がけの意味だそうです。1976年7月10日鹿児島市平之町では城山のがけが崩れて犠牲者が出ました。

りゅう

 土石流や洪水がのたうつさまを竜に喩えることがしばしばあります。また、水の吐き出し口に竜の置物を置くように、水の出るところも意味します。鹿児島市の竜ヶ水は、1977年、1993年としばしば土石流災害に見舞われています。左の写真は1993年の災害ですが、左上の緑が薄い草地の部分が1977年の崩壊地です。

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更新日:1997年2月22日