冨山清升の卒業研究の概要


1980〜1982年(卒業研究)

卒業研究のテーマ「中・北部琉球列島における陸産貝類相の生物地理学的考察」

【要旨】 琉球列島は日本の西南部に位置し、台湾から九州にかけて弧状に配列している。トカラ列島は琉球列島北部に位置し、動物区界の東洋区と旧北区の境界をなすとされている点で生物地理学上興味深い。琉球列島の生物地理では、昆虫類においてファウナの数量的比較がなされている。しかし、トカラ列島を含む北部琉球列島については十分な研究はなされていなかった。

陸産貝類は、他の動物群にくらべ移動能力が劣るため分化が著しい。したがって島嶼の生物地理を論じる際、陸産貝類は有益な情報を提供することが期待される。しかし、琉球列島の陸産貝類について数量的な比較を行った研究例はなかった。本研究では、沖縄本島から大隅諸島までの中・北部琉球列島における島の面積と陸産貝類の種数間の関係を調べ、各島のファウナを数量的に比較した。 

トカラ列島を中心とした、未調査地域の島嶼の陸産貝類相の調査を行い、過去の文献も参考にして、各島の陸産貝類リストを作成した。各島のファウナを比較する手法として共通種数にもとづく野村-シンプソン指数および調和度指数を使用した。ファウナの類似性の認識を容易にするために、これらの指数をもとにしてクラスター分析を行い、デンドログラムを作成した。

島の面積と種数を両対数で座標上にプロットした結果、両者間には高い相関関係が認められ、Arrheniusのモデルによく一致した。陸産貝類の分布パターンから中・北部琉球列島を、宇治群島区、大隅諸島区、トカラ列島区、奄美群島区、沖縄諸島区の5つの区に分けた。トカラ列島は、大隅諸島から奄美群島にかけてのファウナの移行帯とみなすことができるが、悪石島以北のトカラ列島については、昆虫相にみられるような奄美群島との強い関係は認められなかった。悪石島以北のトカラ列島は、従来1度水没したか、もしくは1度も陸続きにならなかったとされてきたが、少なくとも陸産貝類相の比較からは、その仮説を支持する結果は得られなかった。この列島は過去に1つの陸かいとして存在し、大隅諸島と接続した時期もあり、完全に水没はしなかったことが示唆された。


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